・炉心溶融対策が完了したとしても、これで対策が十分だと言い切れるか、となると、テロ対策、核燃料の最終処分など、まだまだ問題点は大きい!

炉心溶融対策が完了したとしても、これで対策が十分だと言い切れるか、となると、テロ対策、核燃料の最終処分など、まだまだ問題点は大きい!
・第一の問題点が、テロ対策。米国の原発の例では、自動小銃を構えたガードがいる。日本のような丸腰国家であっても、原発のテロ対策は数倍に強化すべきではないか。現在、事故調査の報告や、ストレステストなどによって情報公開が進んでしまったため、テロに関するリスクは過去になく高い状況になっている。特に、日本海側に多くの原発があることを考えると、リスクは高い。
・第二の問題点が、長期的な課題である使用済み核燃料の最終処分。これは大変に厄介な問題で、しかも、簡単な解決法はない。もっとも完璧に近いと思われる処理方法は、太平洋の海底のプレートに埋め込んで、最終的には地球の中心部まで地球自身に運んでもらうことだと思いますが、実現は不可能に近い。これ以外の方法は、何をやっても、相当な問題点が残る。1000年以上のスパンでものを考える必要があるが、人間の寿命がたかだか100年程度であることが、最大の限界だ!



〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
 大飯再稼働のリスク論   06.17.2012 市民のための環境学ガイド
 しばらく前に飯田哲也さんとFBで議論をしたとき、彼は、安全性だけで原発再稼働の判断が行われることはあり得ず、なぜ「政治的決断」が行われるかを理解していなかったように思います。 政治的決断とは以下のようなことを言うのです。 どうやら山口県知事を狙うようですが、大丈夫でしょうか。
 それはそれとして、もしも私自身が野田首相の立場にあったらと無理矢理に仮定したとき、やはり大飯再稼働を政治的に決断したと思います。
 政治的な決断には、自分だったら、どんな判断材料を用意しただろうか。その想像をしてみたいと思います。
 今回の政治決断の選択肢は二つ。「再稼働する」、「再稼働しない」の二つですが、これらを検討し、それぞれについて「最悪のケース」を想定します。 そして、それが起きた場合に、自分がどのような政治的なダメージを受けるかを考え、このダメージ量に「最悪のケース」が自分の任期内に起きる確率を掛けます。 これが政治的リスクと定義できるものになります。
 選択肢1「再稼働する」:最悪のケースとは、当然のことながら、未曽有の地震などによって、炉心溶融が起き、放射性物質の放出をせざるを得ない状況です。 要するに福島の再現です。
 これが起きる確率はどのぐらいか。  一次ストレステストの結果、1000年に1度程度の地震の規模を想定しても、電源を完全に喪失する可能性は、かなり低減しているという評価のようです。
 例えば、非常用電源は33mの高さに設置され、水源も標高70m以上の場所に設置されたようです。
 それに、福島の第一世代の原発と違い、型式もBWR(沸騰水型)とは違うPWR(加圧水型)ですので、電源を完全に喪失した場合にも、冷却が続く可能性が高い型式です。
 大飯のPWR(加圧水型)は、格納容器の中に、蒸気発生器(熱交換器)があって、津波などによる直接の被害を受けにくいからです。
 使用済み核燃料のピットの場所も、福島第一とは違うようで、格納容器の山側の隣に設置してあるようです。
 二次ストレステストは、炉心溶融が起きた後の対策の有効性を判定するもので、当然未完了です。 それが要求するものと思われる免震棟やフィルター付きのベントは未完成で、まだ2〜3年ぐらいは掛かるのでしょう。
 しかし、その着工はすでに宣言しています。となれば、未曾有の地震が起きて困るのは、2〜3年間以内の場合。  そのような地震がこの地域に1000年に1度起きるとして、起きる確率は2/1000ぐらいですが、日本列島が地震活動期に入っていると考えれば、これよりも高いでしょう。
 震災があっても電源が確保されて、なんとか停止する確率が80%あれば、最終的な確率は4/10000か、その数倍になるでしょうか。これが、事態の最悪度に掛かる確率です。最悪事態の度合は1(最大)と、仮定する以外にないでしょう。
 選択肢2「再稼働しない」:再稼働をしない決断をした場合。最悪なケースは、いくつもいくつもありえます。
 まず確率的にかなり高いのが、関西電力以外の地域からの協力が得られず、実際に電力不足になって、大阪の町工場などの操業がままならず、誰かが経済的理由で自殺に追い込まれるといったケース。これは相当高い確率で起きるのではと考えます。
 もっと悪いケースが、火力発電所が突然故障して、ブラックアウトが起き、24時間以上停電すること。  病院の自家発電ではカバーしきれず、死者多数。 このような事態の発生確率は1/1000ぐらいでしょうか。
 死亡リスクが高まる人、なかでも人工心肺を付けている人々は意外と多いので、実数は分かりませんが、関西電力圏内でも1000人のオーダーは居るのでは。
 そこまで行かなくても、複数の火力発電所の故障が同時に起きれば、絶対的な電力不足になる確率は1/100ぐらいあるのでは。これは、最初のケースをさらに悪化した結果に繋がるかもしれません。
 いずれのケースでも、もしも死者が出れば、日本人のメンタリティーにとって許しがたいケースですので、野田首相は、相当な政治的ダメージを受けるでしょう。 これ以外のケースを含めて、再稼働をしなかった場合に、野田首相にとって政治的に致命的な大きな事件が今年の夏に起きる確率は、下手をすると1/5ぐらいではと推測します。
 この場合の最悪度の度合ですが、政治的に見れば、0.1程度と言えるのではないでしょうか。起きる確率を掛けて、2/100ぐらいになってしまうのではないでしょうか。
 以上が、仮想野田首相の政治的リスクの考え方です。

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 ということで、今年の夏さえ乗り切れば良い野田首相にとっては、大飯を再稼働した方が、政治的なリスクは圧倒的に低いだろう。これが結論です。
 この考え方を突き詰めたとき、到達できる結論が、現在、政治家ではない人間が、「再稼働せよ」、あるいは、「再稼働するな」、と主張する場合、その人は、「なんらかの政治的な意図を抱えている」ということを意味するのです。 飯田さんが政治家を目指していたのも、恐らく、これでしょう。

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 さて、ここから普通人に戻って、野田首相への注文です。
 今回の決断は、それなりに理解できますが、炉心溶融対策が完了したとしても、これで対策が十分だと言い切れるか、となると、まだまだ問題点はあります。
 第一の問題点が、テロ対策です。米国の原発の例では、自動小銃を構えたガードがいました。他の国の実態を知りませんが、日本のような丸腰主義の国家であっても、原発のテロ対策は数倍に強化すべきではないでしょうか。現在、事故調査の報告や、ストレステストなどによって情報公開が進んでしまったため、テロに関するリスクは過去になく高い状況になっています。特に、日本海側に多くの原発があることを考えると、そのように思います。

 第二の問題点が、長期的な課題である使用済み核燃料の最終処分です。これは大変に厄介な問題です。しかも、簡単な解決法はないように思えます。もっとも完璧に近いと思われる処理方法は、太平洋の海底のプレートに埋め込んで、最終的には地球の中心部まで地球自身に運んでもらうことだと思いますが、実現は不可能に近いですね。これ以外の方法には、何をやっても、相当な問題点が残ります。1000年以上のスパンでものを考える必要がありますが、人間の寿命がたかだか100年程度であることが、最大の限界です。

 これ以外にも様々な問題点が残っているように思います。原子力村の体質が変わらない話や、安全面での直接的なリスクをゼロにすることだけを考え、ブラックアウトのような間接的なリスクとの比較を考えない国民感覚も、問題点でしょう。エネルギー環境会議による選択肢の決定の後に行われる予定になっている、「国民的議論」に期待したいと思います。さて、どうやったら、本当の意味で、国民的議論になるとお考えなのでしょうか。