国家の安全保障、外交は「国家の目線」で行動をせよ!の主張は正しい。

・三条 健です。
参院選挙結果による沖縄の基地問題の民意は何か?を西原氏は
普天間基地の県外・国外移設や無条件撤去を掲げた社民党共産党はいずれも1人議席を減らした。しかも沖縄県では両党の推した2人の候補者は落選し、現職の自民党推薦候補が再選された。ということは、有権者の多くが5月末の鳩山政権下で米側と再確認された辺野古案を容認したと見てよい。」と結論つけた。  これは正解だ。

・「朝鮮半島の緊張、中国軍事力膨張などの現実を直視し、厳しい環境に対応する方策を「国家の目線」で検討してもらいたい」との主張は最もだ。

・国家の安全保障、外交は「国家の目線」で行動をせよ!の主張は正しい。


〜〜〜メディア報道の一部<参考>〜〜〜

【正論】平和・安全保障研究所理事長 西原正 
安保は「国家の目線」で行動を
2010.7.26 04:54

 民主党が政権獲得後に初めて迎えた選挙で大敗したため、マスコミや野党はおろか民主党内の一部にまで、就任したての菅直人首相を批判し、退陣の可能性を論じる声がある。日本の政権の短命さが世界から嘲笑(ちょうしょう)されていることにまったく無神経である。

≪党内抗争に明け暮れるな≫

 向こう3年間は衆参両院とも選挙がないのだから、このまま政権運営に取り組めばよい。小沢一郎氏のグループなど党内の反菅勢力は首相の足を引っ張るのに汲々(きゅうきゅう)としており、いま日本が直面している外交、安全保障、経済などの諸難題を党の団結のもとに乗り切る気構えをもっていない。

 8月末までの辺野古基地建設工法に関する日米間の合意、9月の国連総会への首相出席、11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議の日本主催とオバマ大統領の訪日、11月末の沖縄県知事選挙など、重要な政治日程を抱えていることを思えば、党内抗争に明け暮れしている余裕はないはずである。

 前にもこの欄で書いた(6月15日付)が、国会が指名した首相を推薦党が勝手に差し替えるのは国会を軽視するものだ。国会が菅首相への不信任決議案を可決し、菅内閣が総辞職をするか、衆議院を解散するかしたときに初めて、民主党は党代表選を開催して後任代表を選ぶのが筋である。

≪名護市議選前に辺野古決着を≫

 参院選挙では沖縄の基地問題が意外に争点にならなかった。普天間基地の県外・国外移設や無条件撤去を掲げた社民党共産党はいずれも1人議席を減らした。しかも沖縄県では両党の推した2人の候補者は落選し、現職の自民党推薦候補が再選された。ということは、有権者の多くが5月末の鳩山政権下で米側と再確認された辺野古案を容認したと見てよい。

 普天間基地辺野古移設作業を急がず、9月12日の名護市議会選挙の結果を待つべきだという意見があるが、おかしい。同市のわずか約4万5千人の有権者が日米同盟の重要事項を決定するという悪い先例を残すこととなる。市議選で辺野古移設が争点とならぬように、政府は日米合意を8月末までに達成しておくべきである。

 鳩山首相普天間問題を「県民の目線」で考えるとし、県外、国外移設を模索した。しかし最後には、沖縄の地政学的重要性と米海兵隊の「抑止力」を認識し、日米同盟という「国家の目線」で辺野古案に回帰した。

 消費税引き上げ問題も同様である。鳩山首相は「国民の目線」で向こう4年間は消費税の引き上げはしないと言っていた。国民には聞こえのいい方策であったが、国の財政が急速に逼迫(ひっぱく)の度を加えていることを認識した菅首相は就任後、10%の消費税引き上げを表明した。これが「国家の目線」だろうが、支持率が低下すると、またまた「国民の目線」が気になり、「近い将来に引き上げるわけではない」とブレてしまった。

 選挙前に消費税引き上げの話をすれば、支持率が下がることは政治家として十分予測しているべきであった。しかし菅首相がそれを承知で国民に注意を喚起する意図を込めて表明したのであれば、これは政治的勇気であり、指導力である。にもかかわらず、支持率が下がり党内批判が出ると、「国家の目線」で行動することをやめてしまったのである。これではリーダーシップにならない。

≪中国軍膨張など現実を直視≫

 菅首相岸信介首相が50年前多くの反対を押し切って日米安保条約改定を断行したことを模範とすべきだ。菅首相が消費税10%引き上げを一貫して主張していたならば、いまごろはIMF国際通貨基金)の消費税増税の要請などを追い風にして、もっと実行しやすい立場に立っていたであろう。

 外交や安全保障政策は「国民の目線」に配慮しつつも、「国家の目線」で立案し推進していかなければならない。菅首相の6月11日の所信表明演説や、民主党マニフェストに掲げたいくつかの項目を見る限り、自民党路線に近づいていて、将来の超党派外交の可能性を示唆している。

 菅首相は国会演説で、「現実主義」を基調とした外交に言及し、「国際的な安全保障環境に対応する観点から、防衛力の在り方に見直しを加え、防衛大綱の見直しと中期防衛力の整備計画を年内に発表する」と表明した。

 これは日本の安全保障にとって心強い所信表明であった。菅政権にはぜひ朝鮮半島の緊張、中国軍事力膨張などの現実を直視し、厳しい環境に対応する方策を「国家の目線」で検討してもらいたい。それは当然、防衛費の増加、海空の自衛力の増強となることを期待する。そのことが周辺国への日本の発言権を強める道でもある。

 また同政権が、防衛生産技術基盤の維持、装備の民間転用をマニフェストで掲げたことも歓迎したい。日本の防衛産業の疲弊を直視し、防衛産業に国際競争力を持たせるために武器輸出三原則を見直すことは、ここでも「国家の目線」から見て肝要である。(にしはら まさし)