・中国の共産党一党独裁政治は対外的には前時代的な帝国主義・覇権主義を、対内的には社会分裂の不安を増殖させずに置かないのだ!

・ 中国は「ビジネス利権」が主導する対外膨張主義に走っている
・ 中国の共産党幹部の子弟は対北朝鮮援助案を聞きつけると、北朝鮮に駆けつけ、担当高官にコネのある中国企業に落札させるよう働きかける。この間、多額のカネが手から手へと渡る。
・ 金融制裁合意のために欧米の投資ファンドは出られない。中国企業はそんな弱みにつけ込んで進出してくる。利権には中国の党幹部が直接、間接にからんでいる。
・中国の政策決定プロセスや党幹部人事が、経済利権を軸に展開される。
・中国の共産党一党独裁政治は対外的には前時代的な帝国主義覇権主義を、対内的には社会分裂の不安を増殖させずに置かないのだ!

〜〜〜関連報道<参考>〜〜〜
【日曜経済講座】 編集委員・ 田村秀男 
  利権主導の対外膨張主義に走る中国
2010.12.19 00:40
 2008年9月の「リーマン・ショック」後、めざましい中国の経済・金融パワーの台頭はどのような衝撃を及ぼすのか。内部告発サイト「ウィキリークス」が流している米国在外公館の中国・北朝鮮関連機密公電を読みながら考えてみた。結論を言うと、
中国は「ビジネス利権」が主導する対外膨張主義に走っている。一方で、跋扈(ばっこ)する既得権益集団は政策効果を損ない、内部分裂の芽を助長する。

■中国投資呼び込む「北」
 米中央情報局(CIA)の定義によれば、「インテリジェンス」とは政治指導者の決断と実行の前奏曲になる知見だという。2010年1月11日付、「中朝貿易の一層の洞察」と題する公電は好例だ。発信元は中国東北部瀋陽総領事館。宛先(あてさき)には国務省国防総省のほかCIA、国家安全保障局(NSC)などインテリジェンス機関が含まれる。この漏洩(ろうえい)機密は冒頭部分で「朝鮮半島統一後の10年」報告シリーズと銘打っている。米政府はとっくに統一後を見据えた情報収集・分析に腐心している。要点は以下の通り。
脳卒中を経た金正日労働党総書記の決断力が衰える中、北朝鮮政府高官は総書記の注意を引こうと中国企業への希少金属鉱山利権の譲渡の見返りに中国企業からの投資を呼び込もうと競い合っている。例えば北朝鮮の前瀋陽総領事は平壌でのアパート10万戸の建設と引き換えに、鉱山利権と漁業権益を中国の投資家に渡すつもりだ。担当高官は過大な投資契約額を報告し、対中利権譲渡反対派を納得させようとする。2012年に「強盛大国」にするという金正日総書記の目標達成は不可能だが、巨大なアパートで人々に印象づける作戦だ。

・ 中国国有企業は対北投資を制限されているが、党幹部が主要株主である私営企業が殺到している。  山東省の「国大ゴールド社」と浙江省の「万向集団」は北朝鮮との国境に近い恵山の利権獲得で互いに譲らない。  恵山は金、銀など貴金属資源が豊富な北朝鮮最大の銅鉱山である。   万向集団は温家宝首相と緊密なコネがあり、温首相の支持を得ようと1万ドル単位の工作資金が使われた公算が大きいという。  国大はカネを受け取り静かに引き下がりそうだ。
・ 中国の共産党幹部の子弟は対北朝鮮援助案を聞きつけると、北朝鮮に駆けつけ、担当高官にコネのある中国企業に落札させるよう働きかける。この間、多額のカネが手から手へと渡る。
 北朝鮮の経済体制は金総書記を頂点にする「首領企業集団」が支配しており、その権益を分散させる改革開放政策は嫌だが外貨は欲しい。ところが金融制裁合意のために欧米の投資ファンドは出られない。中国企業はそんな弱みにつけ込んで進出してくる。利権には中国の党幹部が直接、間接にからんでいる。本欄5日付ですでに指摘したが、その中国政府に北朝鮮問題で調停を期待する日本政府の考えはいかにも甘い。

■ 既得権守る党政治局
 中国利権分析は、2009年7月23日付、在北京の政治担当公使の公電、「コンセンサス(合意)が動かす党指導部の力学」でも詳しい。その情報源は、胡錦涛国家主席筆頭の党政治局が既得権グループの集団だとみなすべきであり、「改革勢力はいない」と断じている。
 党指導部は経済利権を切り分け、固定する。  党幹部と、しばしば党幹部自身でもある不動産開発業者や企業首脳部の緊密な結びつきは北京の党中央に限らず地方レベルでも当てはまる。   多くの地方党幹部は地位を買収し、投資の配当を求める。  従ってこれら幹部は高度成長最優先政策を支持し、改革に反対する。

 党指導部は政治局を離れたあとの自分や身内の利権を守ることに腐心する。こうして現指導部は既得権益を守れる者を後継者に据えようとする。     習近平氏のように控えめで敵を作らないタイプが上海閥江沢民氏と曾慶紅元国家副主席により引き上げられた。
 中国の政策決定プロセスや党幹部人事が、経済利権を軸に展開されることは拙論も指摘してきた。
 今、インフレや不動産バブル高騰に際し、温首相を責任者とする政府当局が金融引き締めを指示したかのように報じられている。だが、党中央という絶対的な権力中枢部が権益の拡大をめざして暗闘を演じながらも、利権防衛で共闘する政治力学のもとでは、市場原理に沿った経済や金融政策が実行されるはずもない。
 政治要因で不動産や株価は上昇圧力を受け続け、物価騰貴はおさまらない。いずれその反動がくる。 不動に見える中国の一党独裁政治は対外的には前時代的な帝国主義を、対内的には社会分裂の不安を増殖させずに置かない。