・開発権益をほしいままにする1党独裁中国共産党幹部やその一族、子弟を中心に富める者はますます富む。

・住宅もモノの価格も値上がりが激しくなった。所得の格差は開き、出稼ぎ農民など利殖のチャンスに恵まれない層に不満がたまる。
・開発権益をほしいままにする1党独裁中国共産党幹部やその一族、子弟を中心に富める者はますます富む。2軒目、3軒目のマンションに投資する都市部中間層も値上がり益を懐に、喜々として新車ショールームに足を運ぶ。
・貿易黒字と、その黒字に匹敵する規模の「熱銭」(投機資金)が流入し、当局は年間で40兆円分前後の外貨を買い取っては人民元を金融機関に流し込んでいる。
人民元を膨張させているのはドルである。
・中国の現預金の総量は昨年11月末時点で日本を102兆円分、米国を154兆円分も上回っている。 
国有商業銀行はこの資金を不動産開発業者などに融資し、不動産価格をつり上げてきた。

〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
【経済が告げる】
編集委員・田村秀男 
ドルの洪水に溺れる中国
2011.1.20 03:15
 「職業乞(しょくぎょうごい)に施しをしないように」。中国の古都、杭州にある禅の名刹(めいさつ)、霊隠寺の大門の脇に立てられている警告板である。華やかなハイテク都市、蘇州の路上では破服、無精ひげの中年男が寒風の中、ほっぺの赤い幼子を借りてきて片手で背負い、残る手で通行人にせがむ。こうした「職業乞」が「貧困大陸、中国」の象徴だったのは今や昔、最近では荒稼ぎして豪邸を建てたやり手も続出する始末で公安当局も捨てておけなくなった。気前のよい富裕層が急増したせいなのだが、経済学流に解釈すればカネ余りの副産物である。
 何しろ中国・人民元の総量は想像を絶する。中国の国内総生産(GDP)は日本を抜いたようだが、それでも米国の36%程度である。なのに、現預金の総量は昨年11月末時点で日本を102兆円分、米国を154兆円分も上回っている。人民元を膨張させているのはドルである。貿易黒字と、その黒字に匹敵する規模の「熱銭」(投機資金)が流入し、当局は年間で40兆円分前後の外貨を買い取っては人民元を金融機関に流し込んでいる。国有商業銀行はこの資金を不動産開発業者などに融資し、不動産価格をつり上げてきた。開発権益をほしいままにする共産党幹部やその一族、子弟を中心に富める者はますます富む。2軒目、3軒目のマンションに投資する都市部中間層も値上がり益を懐に、喜々として新車ショールームに足を運ぶ。
 だが、住宅もモノの価格も値上がりが激しくなった。所得の格差は開き、出稼ぎ農民など利殖のチャンスに恵まれない層に不満がたまる。先に挙げた「職業乞」は各地で頻発する農民や市民の暴動と同じ地平にある。米連邦準備制度理事会FRB)が不況脱出のために大量発行するドルは中国をマネー大国に押し上げた一方で、「平等」を旨とする共産主義体制に亀裂を生んでいる。

 胡錦濤党総書記・国家主席は訪米前、米紙との書面インタビューの中で、「ドル資金供給は適切で安定した水準にすべきだ」と強調した。総書記はこれ以上ドルの洪水を起こさないでくれ、と言っているのだ。他方で「現行の国際通貨体制は過去の産物」と言ってみせたのは、中国式の陽動作戦である。中国の高度成長モデルは基軸通貨ドルをてこにして成り立つ。その現実を無視するかのように振る舞い、人民元大幅切り上げで米国の圧力には屈しないぞ、と虚勢を張る。そのくせ、「人民元の国際通貨化にはまだまだ長い道のりが必要」としおらしく、米国の警戒心をあおるような冒険はしない。

 対する米国は金融バブル崩壊後、日本型デフレ病を恐れ、FRBが年間で8千億ドル以上の資金を長期国債に振り向け、金融市場に流し込む。資金の一部は意をくんだ投資銀行の手で株式市場に回り、株価を押し上げる。米国の財政赤字は年間1兆4千億ドルに上る。その6割前後がドル印刷機でまかなわれる計算になるが、まだ足りない。
 残りは世界最大の米国債スポンサー中国の協調なくして補えない。そんな弱みから、ヒラリー米国務長官は中国を「銀行家」と呼んで、人権問題を素通りし北京にへつらったこともある。だが中国が拒否するなら、米国はさっさとドル増刷に踏み切るだろう。中国は熱銭、バブル、インフレに見舞われる。ドルの垂れ流しは、図らずも胡錦濤政権を溺れかけさせている。中国は米国債を買うしかなさそうだ。