・日本人拉致問題に対し、政府は何をやっているんだ?

・「政府のほうは担当がコロコロ代わって、実は明日、中野大臣と会うことになっているのですけれども、中野大臣がどれだけ知識を持ち、考え方を持ち、どう取り組んでいくか?」
・「担当だからやるということと、必ず「誠心誠意」とか「全力を尽くして」とか「一生懸命」とかという文言が入ってくるのですけれども、具体的に何を以って全力を尽くすのか?」
・日本人拉致問題に対し、政府は何をやっているんだ?

〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
日本人拉致問題はいま
古森義久
2011.02.04 Friday

 北朝鮮政府に拉致された不運な日本人男女はいまどうなっているのでしょうか。  残酷な運命にあった日本人男女の家族たちはどうしているのでしょうか。  こんな問いに答えるため、「救う会」からの報告を転載します。

<<★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2011.02.03)全員救出:今年にかける家族の思い?1/27連続集会報告>>
 以下は、平成23年1月27日に文京区民センターで実施された、「東京連続集会57」の記録です。テーマは、「全員救出:今年にかける家族の思い」で、新年に当り、飯塚繁雄さん(家族会代表、田口八重子さん兄)、有本明弘さん(副代表、有本恵子さん父)、横田滋さん(前代表、横田めぐみさん父)、増元照明さん(事務局長、増元るみ子さん弟)、本間勝さん(田口八重子さん兄)に、「今年にかける家族の思い」を語っていただきました。
 後半で、西岡会長から、菅総理が被害者救出に自衛隊を使うと言及したこと、救出戦略、朝鮮学校への国庫補助問題等に関する報告があり、島田洋一副会長が各テーマでコメントしました。
 また、帰国中の、海老原智治氏(北朝鮮に拉致されている人々を救援する会・チェンマイ代表)が参加され、タイでの救出運動報告がありました。   最後に、西岡会長から、2月16日に実施する「金正日の悪行を糾弾し北朝鮮人民に真実を伝える2.16日韓連帯集会」の案内を行いました。

◆いつまで頑張ればいいのか
飯塚 
皆さん今晩は。この連続集会がいつまで続くのかというのが実感です。もちろん、いい形で終了するということが我々が期待し望むところですけれども、また今年もという感じもします。皆さんも同じでしょうけれども、いろいろな活動をやっていながら結果が見えないというのが苛立つところです。家族が帰ってくるまでは絶対に諦められないというのは当然ですけれども、然らばいつまで頑張ればいいのかということがいつも頭にあります。そういったことで、期待はしつつも、確たる情報もないまま、また今年も頑張らなくてはいけない。
 皆さん方に相当なご支援、応援を頂いているわけですから、我々が諦めたり、あるいはやけくそになったりは絶対にできないという気持ちはあります。 家族会結成から13年以上経っていますが、経過を振り返ってみても、我々のこの運動に対する考え方、方針、あるいは具体的な活動についてはその都度皆さんと相談しながら決めてきていますが、これといった秘策はないわけですから地道に活動するしかないと思っています。

◆ダルスマン特別報告者と面会
 今日は、国連人権理事会のダルスマン特別報告者(北朝鮮人権状況担当)にお会いしました。前はムンタポーンさんという方に非常に一生懸命やって頂きましたけれども、任期がきたということで交代しました。この方は1945年生まれで、印象的にはこの問題に国連として具体的に何ができるかという見方で考えておられて、今までの報告プラスアルファとして新しい取り組みをしていきたいとおっしゃっていました。  そういうことでは、国連としての立場からどういう解決策があるのかということも見出しながら、ある意味見直していきたいと言っておられました。   我々は対外的に、国連との関係、あるいはアメリカとの関係、韓国との関係と、国際的にいろいろご支援を頂くお付き合いがあるのですけれども、それはそれで我々の願いをいつも託していきたいと考えています。

 3月頃には(国連に提出する)報告書が出来上がるということなのですが、拉致の実態を正確に知りたいという強い意向があるようです。  政府認定の被害者は明らかですけれども、その他に特定失踪者の方々が本当に何人いるのか、そういったことを、はっきりとした情報を取りながらその人数については何人ぐらいというのではなくて、もっとインパクトが与えられるように、これだけいるということをはっきりと国際社会に訴えていきたいということを言っていました。

◆新たな拉致問題担当大臣
 今年もということになりますけれども、政府のほうは担当がコロコロ代わって、実は明日、中野大臣と会うことになっているのですけれども、中野大臣がどれだけ知識を持ち、考え方を持ち、どう取り組んでいくかということは実際に会って話をしてみなければわからないんですけれども、手紙を頂いた中では、「拉致被害者の一日も早い帰国がかなうように努力しなければならないと痛感しております」、「歴代大臣が取り組んできたことを引き継がせていただき、拉致問題対策本部の総力をあげて、誠心誠意取り組む所存です」とありましたが、いつも感じることは、担当だからやるということと、必ず「誠心誠意」とか「全力を尽くして」とか「一生懸命」とかという文言が入ってくるのですけれども、具体的に何を以って全力を尽くすのか、どなたも見えない。したがって、一生懸命やっています、やっていますということでまた流れてしまうのかという懸念もあります。
 そして、担当大臣だけがこういった気持ちでいたとしても政権全体が、あるいは総理が旗を振って具体的に指示をしていかないと、一応やっていますという形だけに終わるという懸念が感じられます。

 今年は、前に約束した月1回の家族会、救う会、調査会との意見交換会の場が継続されると聞いていますので、そういった所で、我々は我々の考え方というものをはっきり申し上げて、その後どうなったかということを毎月毎月フォローしていきたいと考えています。

 総理の施政方針演説の中でも、拉致に対する言及が若干ありました。これも先ほど言ったように、内容としては「日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決を図るとともに、不幸な過去を清算し、国交正常化を追求します」、「拉致問題については、国の責任において、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現するため、全力を尽くします」とここでも言っています。
 前原外務大臣についても同じことを言っています。先日のちょっとした発言の中で、北朝鮮と直接交渉を考えているという話もありましたけれども、これについては、単に北朝鮮に交渉を申し込んで、交渉のための交渉という形にならないように、しっかりとした戦略を持って、あるいは交渉する前の段取り、状況をきちっと作り上げて、それをカードにして交渉するという形が望ましいわけですが、うっかりすると北朝鮮のしたたかな戦略に乗ってしまうという恐れもあります。
 突破口が何か開けないかというのが我々の偽らざる思いですが、これについても単に一人の大臣が考えたことをそのまま進めるというのではなくて、国としてこうする、あるいは総理としてこうしたいんだということを含めて戦略的な形として進めて頂きたいと思います。

◆被害者情報は家族だけに
 最近のニュースの中で、(妹の)田口八重子の消息についてもいろいろニュースが出ています。この記事によれば、平壌の万景台という所のアパートに住んでいるところを目撃した人から聞いたというニュースです。  この信憑性はいろいろ問題がありますが、私は、今までの流れからすると、それは合っているのではないかと感じています。  半々の気持ちですけれども。  我々被害者は、皆生きているという確信を持っていますので、それが少しずつ実証されてきている傾向にあるなと感じます。    当然マスコミはニュースの出所は話してくれません。  政府にも問いただしたところ、それは全くないと、公表も何もしていない、見解も話していないということです。  私たちは最終的には政府からの情報が信用される情報だと考えています。

 情報がある程度分かったとして、これを公開していいかどうかという判断も必要なのではないか。 政府の対策本部に対して我々は、個人的な情報があれば、その家族だけに経過なり結果を知らせてほしいという申し入れをしております。  はっきりと政府が公開した場合どうなるかという心配もあります。 被害者は完全に北朝鮮当局に管理されていると我々は考えております。   完全に管理されている被害者が街の中をうろうろしたり、人目につくような所にいられる訳がないということを考えれば、情報の信憑性も若干疑われることもあります。  ですが、流れからすれば、最近は、八重子は生きていると確信を持っています。    こういうニュースに大騒ぎすると、北朝鮮が、そんなに騒ぐのだったら違う所に移して絶対にわからないようにしてしまおうとかいうことにつながってくる恐れがあるとも考えています。   そういうことで、一応ニュースはニュースとして聞いておきますけれども、家族としてはあまり騒がないでほしいというのが実感です。  もしはっきりとした情報があれば家族にだけはきちっとした話をして頂く。それでいいんです。

 ですけれども、これは条件であって、生きているだけでは解決になりません。生きている被害者をどうやって早く取り返すのか、助け出すのか、そこまで考えて、結果的には無事帰国ができたという所まで行かなくてはいけない話です。  こういったことに対して一喜一憂するわけではないですが、こういった個人情報がいろいろ固まって集まってきて全体の情報としてどうなっていくのか。   そういう全体像を見ながら解決に向けての対応をしていただきたいと、明日の大臣面会でもお願いしたいと考えています。

◆二の次になってしまう拉致問題
 国民の皆様の拉致問題に対する世論の高まりというのは感じています。世論が高まったということは一つの現象であって、当然それが次の対策につながるということは分かっています。しかしながらそれだけではないと思います。最近皆さんからよく聞かれるのは、「協力をしたいけれども実際に私は何をすればいいのですか」という質問が多くなっています。非常にありがたい気持ちですけれども、よく聞いてみると、結論的には、政府は何をやっているんだと、残念ながらそこにつながってきます。   政府は一生懸命やっていますというのはいいことなんですけれども、これが毎年毎年同じパターンで過ぎてしまうのは困るわけです。    今回また新しく大臣が変わりましたけれども、その大臣がある力を持っていないといけないと思います。   単に事務的に何事も済ましてしまうようでは困るわけですから、しっかりした考え方を強く現して頂いて、それを政府に強く反映して頂いて全体が動くように持って行って頂きたいというのが私の気持ちです。

 もちろん、これがまだ解決しなければ、速く解決せよという国民の集会や署名活動やいろいろな取り組みがあります。これは私たちにとって非常にありがたいことですので、そういうことがあれば出来るだけ皆さんと一緒に考え行動し世論を高めていく。これは根底にある絶対不可欠な状況であって、保持していかなければならないことです。前に何回も言いましたが、世論がなければ政府もこんな程度でいいかという形に終わるかもしれません。世論が強ければ、何やってんだ、もっとやれ、早くしろ、という意見が非常に強ければこの問題をおろそかにできないということになります。どんな問題でもそうですけれども特に拉致問題は政府の一番の重要課題であるわけです。と言っていながらも、いろんな場面を見ますと、最重要課題としての姿勢とか動きとかが見えないんですね。  どうしても陰に隠れてしまう、二の次になってしまうと感じられてなりません。したがって、そうならないようにするにはどうすればいいかということを皆様とも相談しながら今年もいろいろ対応していきたいと考えています(拍手)。(つづく)