・哀れなるかな 北朝鮮の一般国民よ! 崩壊しそうで、崩壊しないとは!

北朝鮮では 労働党員、治安機関要員、人民軍幹部らの政権に対する金正日への忠誠心は、長年にわたって政権から優遇されてきたことなどによって、なお、かなり強い。
・計画経済の悪化と市場経済の広がりによって、北朝鮮の国家はいつ崩壊してもおかしくない状況である。
・実際に崩壊の引きがねを引く主役や准主役になると見られる勢力は、最高指導者の金正日への忠誠心を強く保持しているというので、北朝鮮の内部崩壊も爆発も「起きやすくて、起きにくい」という。
・哀れなるかな 北朝鮮の一般国民よ! 崩壊しそうで、崩壊しないとは! 


〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
北朝鮮が崩壊しそうでしない理由
古森義久
2011.02.11 Friday

 北朝鮮では闇市的なマーケットの広がりが金政権の基盤を侵食しているという報告の紹介を続けます。  ワシントンの「ピーターソン国際経済研究所」の調査報告を私が日本ビジネスプレスの連載コラム「国際激流と日本」に書いた記事の転載です。 今回分が3回の転載の最終分となります。

・政府は市場を「違法」と断じ、「市場経済の犯罪化の拡大」と見なしているが、その一方で、許容することを続けている。   そのため、行政、司法、軍部などのあらゆるレベルで腐敗を招き、一般住民の当局に対する反発と嫌悪は激しくなる一方である。
・市場の拡大は、政権の共産主義的中央集権のイデオロギーの空洞化や矛盾を明白にし、一般国民の政権不信を強めることになる。  その結果、国家体制の内部破裂の危険性が増す。
金正日総書記の健康悪化と後継問題が、北朝鮮の政治を不安定にした。  首脳部はその経験から、2008年以降は現状維持志向を強くし、経済改革への意欲も大幅に失った。
・市場が広がると、経済活動を通じて住民のつながりが多様かつ多極になる。それは、労働党の独裁体制自体を侵食することにつながる。

 以上、要するに北朝鮮の違法の市場の広がりは、政権の求心力に逆行する動きであり、その動きがまだまだ活発であることが政権の基盤を侵食し、不安定にしている、というのである。
 さらに、政権にとって最悪な場合、この市場の動きが「内部破裂(インプロージョン)」までを起こしかねない可能性を指摘していた。「内部崩壊」と呼んでもよいシナリオである。

失われていない金正日への忠誠心:

 では、北朝鮮ではまもなく、この種の政権崩壊が起きるのだろうか。報告はこの点について重要な注釈を付けていた。以下の趣旨の記述である。

・しかし、金正日政権を直接支える労働党員、治安機関要員、人民軍幹部らの政権に対する忠誠心は、長年にわたって政権から優遇されてきたことなどによって、なお、かなり強いと見られる。

これこそが北朝鮮情勢の読み方の難しさだと言える。

 計画経済の悪化と市場経済の広がりによって、北朝鮮の国家はいつ崩壊してもおかしくない状況である。まさに崖っぷちのぎりぎりまで来ているのだ。
 それでもなお、実際に崩壊の引きがねを引く主役や准主役になると見られる勢力は、最高指導者の金正日への忠誠心を強く保持しているというのである。
 だから、北朝鮮の内部の崩壊も爆発も「起きやすくて、起きにくい」というわけなのだ。