ついにロシアは大型ミストラル級強襲揚陸艦という銃口を日本のコメカミにつき突けた! 帝国主義時代の砲艦外交だ!

・ロシアのメドべージェフ大統領は、北方領土と千島列島を戦略的地域だとし、最新装備で島々の安保を確保する考えを明らかにした。
・具体的には、フランスから購入を予定している2万トン級の大型ミストラル強襲揚陸艦を太平洋艦隊に組み入れて北方領土に配備、択捉島に「軍用空港の設置」を計画する。
・軍事力を背景に四島は一島も返還せずに解決しようというのがロシアの意思だと考えるのが常識だ!  ついにロシアは大型ミストラル強襲揚陸艦という銃口を日本のコメカミにつき突けた! 帝国主義時代の砲艦外交だ!
べージェフ大統領の国後島訪問を皮切りにシュワロフ第1副首相、バサルギン地域発展相、セルジュコフ国防相の相次ぐ北方領土入りだ。国際法尊重を口にし、「法と正義」をこの間、両国で確認し合った事実などは念頭にもないらしい。 ロシアは無法国家の典型だ!

〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
杏林大学名誉教授・ 田久保忠衛 
揚陸艦配備の陰でロシア高笑い
2011.2.16 02:50

≪見切られた日本の一大弱点≫:

 政略と戦略の関係について透徹した理論を持っていたドイツのハンス・フォン・ゼークト将軍の言葉に、「たとえある国の政治家が如何(いか)に平和的な追求をするとしても、政治家はその計画を遂行するに当たって最後の手段を強力な軍に俟(ま)つのである。政治家が如何なる程度までその要求を貫徹しうるか、或(ある)いは他国からの要求を甘んじて受け入れなければならないかということは、軍の威力の如何によって決定されるであろう」(角田順「政治と軍事」)がある。

 戦後体制の中でその軍事を蔑(ないがし)ろにしてきた日本は、ユーラシア大陸の軍事大国である中国、次いでロシアの軍事力の前で無残にも立ち往生している。

 中国の漁船が領海を侵犯し、咎(とが)めに入った海上保安庁の巡視船に衝突してきた事件の顛末(てんまつ)に腹を立てない日本人は少なかろう。が、仮に先方が日本国憲法第9条と同じ条項に基づいて軍事力を専守防衛の枠に縛りつけ、軍事費を削減するなど「平和志向」の国であったら、菅直人首相や仙谷由人官房長官(当時)らお偉方の対応は随分、変わっていただろうと思う。外交面でいくら追い詰められても、結局は国際世論を頼りにするほかない日本の一大弱点を、ロシアと中国は見極めたと思う。

 前原誠司外相のモスクワ訪問に狙いを定めていたとみていい。ロシアのメドべージェフ大統領は、北方領土と千島列島を戦略的地域だとし、最新装備で島々の安保を確保する考えを明らかにした。具体的には、フランスから購入を予定しているミストラル強襲揚陸艦を太平洋艦隊に組み入れて北方領土に配備、択捉島に軍用空港の設置を計画するという。2月11日の前原外相とラブロフ外相との会談で、領土問題はお互いに平行線を辿(たど)ったなどという報道があったが、認識は甘いと思う。軍事力を背景に四島は一島も返還せずに解決しようというのが先方の意思だと考えなければならない。

ミストラル級の意味考えよ≫:

 同強襲揚陸艦4隻をフランスとロシアで共同建造する計画はすでに報じられていたが、うち2隻は千島列島かカムチャツカ半島に至る長い連絡補給路線の防衛を、任務の一部にするそうだ。強襲揚陸を目的とするこの軍艦は2万トン級の大型で、攻撃用ヘリコプター中・大型を含め16機ほどが収容できるし、主力戦車ルクレールだけで12両、他の戦闘車両なら60両程度の搭載が可能だ。ミストラル配備の持つ政治的意味が分からないか、とのクレムリンの高笑いを、菅政権の誰が理解しているか。

 ロシアの意思が那辺(なへん)にあるかは時系列的に事実を辿ればはっきりする。プーチン政権は2期目に入って対日強硬姿勢をとる。北方四島は自国領だと主張し始め、日本漁船に暴力を振るい、9月2日を対日戦勝記念日と決めた。この日は、日本がミズーリ号上で降伏文書に署名した日だ。冗談ではない。大東亜戦争の中で日ソ関係に関する限り、ソ連は一方的加害者で日本は完全な被害者だ。昨年6月〜7月にロシアは択捉島を含むシベリアで陸海空2万の兵を動員、軍事演習「ボストーク2010」を実施した。見え透いたバックグラウンド・ミュージックを背景に、9月27日に北京で中露首脳会談が開かれ、対日戦勝65周年を記念する共同声明が出された。

 以後、メドべージェフ大統領の国後島訪問を皮切りにシュワロフ第1副首相、バサルギン地域発展相、セルジュコフ国防相の相次ぐ北方領土入りだ。国際法尊重を口にし、「法と正義」をこの間、両国で確認し合った事実などは念頭にもないらしい。無法国家の典型だ。北方領土の日の今月7日に菅首相は「許し難い暴挙だ」と珍しく日本人の感情を代弁した。この後、モスクワから発信された北方領土でのロシア軍増強方針に精神が萎えてしまったのだろうか。民主党の外交顧問を自称する外交官出身の某氏がいかにも訳知り顔に、首相発言は外交的配慮に欠けるとテレビで得々としゃべっていた。

≪軍事軽視で潰える戦後日本?≫:
 欧州と異なり、中露を含むアジア地域には帝国主義時代の砲艦外交が幅を利かす事実に、目を背けるわけにはいかなくなった。

 戦後体制そのものの日本国憲法を絶対に変えない前提で、意味のないマスコミ用語「いい知恵をしぼってはどうか」、ロシア通の一部にある解釈「大統領選を控えたロシアには政治的事情があるらしい」、7、8年前にハーバード大のナイ教授が唱えた「ソフトパワーの時代が来た」といった数々の遁辞(とんじ)はミストラル揚陸艦、いや1隻の中国漁船の前に何らかの役を果たすのか。 軽武装・経済大国を目指す「吉田ドクトリン」も、資金面で国際貢献を果たそうという「ハンディキャップ国家論」も偽善と欺瞞(ぎまん)の代名詞として幻のように歴史の彼方(かなた)に去っていく。

 戦前の日本は軍事力の過信で滅びたが、戦後の日本は軍事力の軽視で潰(つい)えるか。強大な軍事力の存在はわれわれに仮借のない選択を迫っている。(たくぼ ただえ)