2000年以降、この10年で台湾で発覚した中国スパイ事件は16件にのぼり、初の将軍スパイまで出現した!

馬英九政権の3年でうわべの中台関係は大きく改善し、交流は飛躍的に拡大した。台湾の退役将軍の訪中団がひきもきらず、中国軍とのゴルフや酒宴をまじえた親密な交流ぶりがメディアの話題になっている。
・中台の諜報戦では1990年代まで台湾が優勢だったが、今世紀には完全に逆転した。 2000年以降、この10年で台湾で発覚した中国スパイ事件は16件にのぼり、初の将軍スパイまで出現した!
・中国軍に流れた疑いのある機密情報も超弩級(ちょうどきゅう)だ。
(1)陸海空3軍の合同同時作戦を遂行するために約500億台湾元(約1400億円)をかけて米国から導入した高度な指揮通信システム(通称「博勝案」)
(2)陸軍が台湾全土に配備した地下光ファイバー網の見取り図
(3)陸軍の戦術区域通信管理システム
−などが含まれる。

・台湾国防部が8日発表した羅賢哲・陸軍少将による中国スパイ事件は前代未聞だった。軍中枢の現役少将という位の高さ、漏洩(ろうえい)したとみられる軍事機密の重大性、米台関係への影響など、そのダメージは計り知れない。
・羅少将は(大佐時代の)03年ごろからタイ駐在の中国武官やオーストラリア・パスポートを保有する中国系女性スパイとタイや米国で密会を重ねた。羅少将は機密文書提供の見返りに毎回10万〜20万ドルを受領、総額は100万ドルを超えたとされる。


〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
台北支局長・山本勲 
将軍まで中国スパイの衝撃
2011.2.22 02:54

 台湾国防部が8日発表した羅賢哲・陸軍少将による中国スパイ事件は前代未聞だった。軍中枢の現役少将という位の高さ、漏洩(ろうえい)したとみられる軍事機密の重大性、米台関係への影響など、そのダメージは計り知れない。ところが事件発覚から1週間で地元メディアの報道合戦もほぼ収まり、相次ぐ中国スパイ事件に馬英九政権がどう対処しようとしているかもはっきりしない。 中国の統一攻勢にさらされている台湾のこの現状に不安を覚えるのは、筆者だけだろうか。

 国防部が発表した事件の概要は「陸軍司令部(通信電子資訊処)の羅賢哲処長(少将)が、2002年から05年までのタイ駐在期間に中国軍の諜報機関に加わり、軍事機密を漏洩した疑いが重大なため、1月25日に逮捕した」というもの。

 台湾各紙誌がその後、国防部筋の情報として報じた詳細を総合すると羅少将は(大佐時代の)03年ごろからタイ駐在の中国武官やオーストラリア・パスポートを保有する中国系女性スパイとタイや米国で密会を重ねた。羅少将は機密文書提供の見返りに毎回10万〜20万ドルを受領、総額は100万ドルを超えたとされる。
 羅氏は帰台後もスパイ活動を続けながら、国防部中枢の諜報・通信関係部門を経て08年に現職に就き、少将に昇進している。国防部は彼のスパイ活動を「昨年掌握した」としているから、10年近くも野放しだったことになる。
 しかも同部は「昨年6月、米連邦捜査局FBI)の通報で事実を知った」(台湾誌「壱週刊」)とされるから、内部管理の甘さを批判されても仕方がない。

 中国軍に流れた疑いのある機密情報も超弩級(ちょうどきゅう)だ。(1)陸海空3軍の合同同時作戦を遂行するために約500億台湾元(約1400億円)をかけて米国から導入した高度な指揮通信システム(通称「博勝案」)(2)陸軍が台湾全土に配備した地下光ファイバー網の見取り図(3)陸軍の戦術区域通信管理システム−などが含まれる。

 台湾軍のハイテク戦の中枢が丸裸にされかねないうえ、「博勝案」は米台合同作戦も想定したシステムなだけに、米軍への影響も大きい。同案は「まだ一部配備の段階で、米軍のシステムとも接続しておらず、被害は限定的」(立法委員=国会議員の帥化民・元中将)という。
 しかし台湾軍の情報管理体制が今のようでは、米国もハイテク戦通信システムの接続や兵器売却に慎重にならざるをえまい。

 中台の諜報戦では1990年代まで台湾が優勢だったが、今世紀には完全に逆転した。この10年で台湾で発覚した中国スパイ事件は16件にのぼり、初の将軍スパイまで出現した。

 今回の事件は中台緊張が続いた陳水扁・前政権時代に発生している。馬英九政権の3年でうわべの中台関係は大きく改善し、交流は飛躍的に拡大した。台湾の退役将軍の訪中団がひきもきらず、中国軍とのゴルフや酒宴をまじえた親密な交流ぶりがメディアの話題になっている。

 中国は彼らの不動産投資に便宜をはかり、北京や上海などに「将軍村」と称される地域まで出現しているそうだ。現在の台湾軍幹部を登用した彼らがこの有様では、軍の緊張感がゆるんでも不思議はあるまい。

 今回の事件は「氷山の一角」との指摘も多い。馬英九政権がこうした現状の打開にどういう抜本策を講じるか、注視したい。