官邸のドタバタは稚拙で泥縄的な危機管理と民間事故調は報告

菅首相の要請がベントの早期実現に役立ったと認められる点はない。
・官邸の中断要請に従っていれば、作業が遅延していた可能性がある危険な状況であった。
・「爆発しているじゃないですか。 爆発しないって言ったじゃないですか」。 驚く菅首相に、そばにいた原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長は「あー」と頭を抱えるしかなかった。
・班目氏に対して核分裂が連鎖的に起きる「再臨界」の可能性を問いただすと、返答は「ゼロではない」。   菅首相は「大変じゃないか」と再臨界防止方法の検討も指示した。
・官邸のドタバタは稚拙で泥縄的な危機管理と民間事故調は報告


〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
「稚拙で泥縄的な危機管理」 報告書で浮かびあがった官邸のドタバタ
2012.2.28 00:47
 ひたすら続く菅直人首相(当時)の怒声、困惑する官邸スタッフら…。東京電力福島第1原発事故をめぐり、民間の有識者による「福島原発事故独立検証委員会民間事故調)」が27日に公表した事故報告書。  政府の対応を「稚拙で泥縄的な危機管理」と指弾した内容からは事故直後の緊迫した状況の中、政府首脳が右往左往する当時の様子が克明に浮かび上がった。
原子力取材班)
報告書評価《首相の要請がベントの早期実現に役立ったと認められる点はない》
 混乱が際立ったのは昨年3月11日午後9時ごろだ。 原子炉の冷却ができなくなったことから圧力が上昇。 官邸と東電は炉内のガスを放出する「ベント」の準備を始めた。 しかし、12日午前5時になってもベントが実施されないことを知った菅首相は、自衛隊ヘリで福島第1原発に向かう。
 枝野幸男官房長官(同)は「絶対に後から政治的な批判をされる」と反対したが、菅首相は「政治的に後から非難されるかどうかと、この局面でちゃんと原発をコントロールできるのとどっちが大事なんだ」と反論。  枝野氏は「分かっているならどうぞ」と送り出した。
 この頃、福島第1原発では、菅首相の突然の訪問について、吉田昌郎所長(同)が東電本店に難色を示した。  「私が総理の対応をしてどうなるんですか」
 午前7時すぎ、菅首相が現地に着くと、いきなり武藤栄副社長(同)に詰問調で迫った。  「なぜベントをやらないのか」。  電力がないことを説明した武藤副社長に菅首相は「そんな言い訳を聞くために来たんじゃない」と怒鳴り散らした。
 菅首相を鎮めたのは吉田所長の一言だった。  「決死隊をつくってでもやります」。  納得し、官邸へ引き揚げる菅首相。   「吉田という所長はできる。あそこを軸にしてやるしかない」
 しかし実際にベントが行われたのは午前9時を過ぎてから。  東電は10キロ圏内の住民避難完了後にベントをすることにしていたが、枝野官房長官がこの事実を知ったのは数カ月後だった。
報告書評価《官邸の中断要請に従っていれば、作業が遅延していた可能性がある危険な状況であった》
 同12日午後3時36分、1号機原子炉建屋が水素爆発する。約1時間後、首相執務室に寺田学首相補佐官が駆け込んできた。  テレビのチャンネルを変えると、建屋が爆発、白煙が上がる映像が流れた。
 「爆発しているじゃないですか。 爆発しないって言ったじゃないですか」。 驚く菅首相に、そばにいた原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長は「あー」と頭を抱えるしかなかった。
同午後5時55分に海江田万里経済産業相(同)は原子炉冷却のために海水注入を指示し官邸の会議で報告。  ところが菅首相は「分かっているのか、塩が入っているんだぞ。 影響を考えたのか」と議論を引き戻した。
 さらに班目氏に対して核分裂が連鎖的に起きる「再臨界」の可能性を問いただすと、返答は「ゼロではない」。   菅首相は「大変じゃないか」と再臨界防止方法の検討も指示した。
 会議参加者の間では既に、早急な海水注入が必要との認識で一致していた。「今度失敗したら大変なことになる」。  菅首相に疑念を抱かせないように、次の会議に向け、各自の発言内容の確認と入念なリハーサルが行われる“茶番”も繰り広げられた。
 このとき、既に福島第1原発では海水注入が開始されていた。  東電本店は電話で吉田所長に「首相の了解がまだ取れていない」と、中断を要請したが、吉田所長は独断で海水注入を継続した。