・ユーロ圏危機は決して、対岸の火事ではない!

・三条 健です。  ユーロ圏危機のポイントは以下。
・銀行の預金と貸し出しの比率を示す預貸比率を見ると、
イタリアで126%、フランスで112%と、100%を超えた「オーバーレンディング(貸し出し超過)」になっている。  ちなみに日本は52%、米国は71%だ。   これは信用収縮の危険性や程度が、ユーロ圏の方が日米よりもずっと高いことを示している。
インターバンク(銀行間取引)市場からの資金取り入れは、イタリアで19%、フランスで24%と、こちらも高い。   日本は3%でしかなく、ユーロ圏では1つの銀行のバランスシートの毀損が波及する危険性は、日本よりもかなり高い。
・ユーロ圏全体のオーバーレンディングは1兆5千億ユーロ規模といわれ、実にユーロ加盟国全体のGDPの17%に相当する。
・ユーロ圏危機は決して、対岸の火事ではない!


〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
【世界鳥瞰】
国際協力銀行・経営企画部長 前田匡史  2012.5.5 03:33
■欧州 潜む信用収縮リスク:
 日本国内では税と社会保障の一体改革をめぐり、論戦の場が国会に移りつつある。  焦点となる消費税率引き上げのタイミングを見極めるには、ユーロ圏危機に代表される外的要因も考慮に入れるべきだ。  そう思い、3月半ばにパリに足を運んだ。
 リーマン・ショック以降の世界的な金融危機に対し、各国が公共事業で景気浮揚を図るケインジアン流の財政拡大に活路を求めたことから、2010年以降、先進諸国は深刻な財政問題を抱えるようになった。
 中でもギリシャに端を発したユーロ圏危機は、アイルランドポルトガル、イタリア、スペインに波及した。  もしこれがフランスにまで飛び火すれば、大変な事態になる。  ドイツとともにユーロ圏を支えてきたフランスの国家財政が破綻し、連鎖すれば、欧州全土で急激なインフレと金融機関の信用収縮が同時に起きることが想定される。
 ユーロ圏の銀行部門は、バランスシートが毀損(きそん)すると信用収縮が波及しやすい。  
 銀行の預金と貸し出しの比率を示す預貸比率を見ると、イタリアで126%、フランスで112%と、100%を超えた「オーバーレンディング(貸し出し超過)」になっている。  ちなみに日本は52%、米国は71%だ。 これは信用収縮の危険性や程度が、ユーロ圏の方が日米よりもずっと高いことを示している。
 さらに預金以外の貸し出し原資として、インターバンク(銀行間取引)市場からの資金取り入れは、イタリアで19%、フランスで24%と、こちらも高い。 日本は3%でしかなく、ユーロ圏では1つの銀行のバランスシートの毀損が波及する危険性は、日本よりもかなり高い。 ユーロ圏全体のオーバーレンディングは1兆5千億ユーロ規模といわれ、実にユーロ加盟国全体のGDPの17%に相当する。  加盟国の財政破綻を引き金に、欧州で大幅な信用収縮が起きるリスクは、かなり高いと考えるべきだ。

 欧州中央銀行(ECB)が思い切って2度、3年物オペを行い、計1兆ユーロを市場に供給した背景には、こうした流動性懸念がある。  ECBから資金供給を受けた商業銀行が、自国の国債を買い支え、ECBのバランスシートは3兆ドル超に膨らんだ。  一方でEU閣僚理事会は欧州金融安定化ファシリティ(EFSF)の拡大・強化で合意、EFSFの貸出枠が4400億ユーロに拡大された。   より恒久的な欧州安定化メカニズム(ESM)の前倒し導入も決まった。
 パリで面談したフランス経済財務省のラファエル・ベロ対外関係総局局長も、一連の措置・決定で流動性不安を払拭した成果を強調していたが、一方で、フランス商業銀行の自己資本強化が重要課題であることも認めていた。  また、ESMが実施された場合、国際通貨基金IMF)とどう連携していくのか、詰め切れてはいないという印象を持った。
 ユーロ圏は一時的に小康を保ってはいるが、急激な信用収縮の連鎖が起きる可能性は否定できない。
 その場合、金融システムが欧州より安定しているとはいえ、わが国が無傷で済むはずがない。
 財政は伸びきっており、日本の財政健全化が難しいと判断した市場が、欧州危機の外的ショックを契機に日本からの資金引き揚げに舵(かじ)を切る可能性は否定できない。
 ユーロ圏危機は決して、対岸の火事ではない。(まえだ ただし)