・食い逃げをさせないためには、まず最初に、官の無駄を洗いざらい整理せよ。 次に社会保障政策について合意後、増税と一体化させて、法案を成立させよ!

・ここに至った原因は、政治家が官僚、なかんずく財務官僚の言いなりの路線を歩まされてきたからだ!
民主党が掲げた公約は給与の2割削減だったのに、やったのは7・8%カットして東日本大震災にカンパしただけだ。  仕組みの変更とカンパでは全く意味が違う。
天下り法人は4500とされ、民主党は「天下り根絶」を高々と掲げた。しかし、民主党政権が誕生して、小沢一郎幹事長が最初にやったことは、日本郵政の社長に斎藤次郎元大蔵事務次官天下りさせたことだ。これで「天下り根絶」は消し飛んだ!
橋下徹大阪府知事(現大阪市長)は就任数カ月で28の天下り法人を潰している。
・年金などの社会保障体制の構築は、時間がかかるから先延ばしする、ということになりかねない。要するに、財務官僚による増税の食い逃げだ!
・食い逃げをさせないためには、まず最初に、官の無駄を洗いざらい整理せよ。 次に社会保障政策について合意後、増税と一体化させて、法案を成立させよ!



〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
消費税増税の「食い逃げ」許すな
評論家・屋山太郎    2012.6.5 03:16 [正論]
 民主党野田佳彦首相は、「政治生命をかけた」という「税と社会保障の一体改革」を推し進めるため、与野党協議の支障となる5閣僚を代える改造を断行した。 首相はこれで、自民党との協調路線へ突っ走り、会期を延長しても今国会中に「一体改革」法案を成立させたい意向のようだ。
≪小沢氏との会談で踏ん切り≫ :
 輿石東党幹事長を交えた、野田首相小沢一郎元党代表との2度にわたる三者会談で、小沢氏が消費税増税案に賛成する見込みがないことがはっきりした。  首相としては、自民党との協議に邁進(まいしん)する踏ん切りがついたろう。
 だが、自民党谷垣禎一総裁は早期解散の確約がない限り、「一体改革の協議にはおいそれと乗れない」と腰を引いている。  野田首相が解散の言質を与えないのは、党の分裂を避けたい輿石幹事長が採決で反対したら除名するとの切り札を小沢グループに使いそうもないからだ。  使えば、同グループは選挙惨敗を恐れて採決に公然とは反対できないはずだ。
 野田氏の「一体改革」の考え方が正しいのなら、それに盾突く小沢氏も輿石氏も不届きなのだが、そうとは決めつけられないところに問題の本質がある。 局部だけを見れば、三者三様に正しいことを言っている。  しかし、ここに至った原因は、政治家が官僚、なかんずく財務官僚の言いなりの路線を歩まされてきたからだ。
 野田氏が「一体改革」に前のめりになってから、岡田克也副総理が「官僚も身を切る」政策を曲がりなりにも打ち出している。 官僚の年金が民間よりも月に2、3万円高く、地方公務員はさらに高いという官民の年金格差は、2015年度には修正して平等にするという。  公務員給与2割削減の旗は降ろしたが、2年間に限って7・8%引き下げるという。
≪財務官僚に丸め込まれた首相≫ :
 だが、民主党が掲げた公約は給与の2割削減だったのに、やったのは7・8%カットして東日本大震災にカンパしただけだ。仕組みの変更とカンパでは全く意味が違う。  公務員の退職金について、人事院は「民間と差がない」と主張していたが、民間より400万円高いと判明した。  これも、減額する方針を出したが、一挙にやるのか分割してやるのか。  かけ声倒れに終わる可能性がある。
 天下り法人は4500とされ、民主党は「天下り根絶」を高々と掲げた。しかし、民主党政権が誕生して、小沢一郎幹事長が最初にやったことは、日本郵政の社長に斎藤次郎元大蔵事務次官天下りさせたことだ。これで「天下り根絶」は消し飛んだ。
 天下り退治が至難の業なのかと思えば、橋下徹大阪府知事(現大阪市長)は就任数カ月で28の天下り法人を潰している。  民主党スローガンはほとんど実行ゼロ。  責任の一端を負う小沢氏が今になって「約束を守れ」と言うのは恥知らずだ。
 官民格差是正や公務員給与削減の問題がなぜ前面に出てきたか。 格差を放置したままでは「消費税増税が難しくなる」と財務省が判断するに至ったからだろう。  安倍晋三政権以来、行革や官民格差是正が叫ばれてきたが、官僚の抵抗で政治家の指示は常に無視されてきた。  今回も、財務官僚は行革を無視して野田氏を丸め込み、増税の必要性を擦り込んだ。
 財務省は官益を死守して増税に頼るというパターンを、自民党時代から長らく押し付けてきた。 自民党は、増税をやれば選挙で負けるとあって、常に逃げる。  そうなると、歳入不足分は国債によって賄うしかない。 こうして、1千兆円もの借金が積み上がった。 さすがに、自民党の中にも、できた借金のほとんどは自らの責任だと思う政治家がいて、「この際、野田に一体改革をやらせた方が得策」という空気が出てきた。
社会保障政策での合意が先だ≫ :
 両党とも、官益を増大させる組織肥大メカニズムが変わらないことを知るべきだ。  官民格差の是正は今のところ、“約束”だけで、実現したのは何もない。
 野田首相の一体改革に、自民党が注文を付けすぎると、消費税増税法案は成立する一方で、年金などの社会保障体制の構築は、時間がかかるから先延ばしする、ということになりかねない。
 要するに、財務官僚による増税の食い逃げである。 公共事業などはほとんど官僚機構を維持し拡大する道具だ。 民主党は「コンクリートから人へ」の大政策転換を行い、国土交通相となった前原誠司氏が八ツ場(やんば)ダム建設の中止を宣言した。  ところが、野田首相はあろうことか、後任に前田武志氏を充てた。  前田氏は典型的な建設官僚で、果たせるかな、八ツ場ダムの再開、新幹線3線の着工、高速道路の4車線化を復活させた。  社会保障体制を切り離して増税先行となれば、それはまたぞろトンカチ行政に使われるだろう。
 まず、官の無駄を洗いざらい整理せよ。次に社会保障政策について民主・自民が合意した後、増税と一体化させて、法案を成立させよ。今の状況は食い逃げ路線を走っているようにみえる。(ややま たろう)