・圧倒的に低い国民負担で、圧倒的に高い高齢化比率を支える社会保障制度を運営しようとすると、どんなに経済成長しても追いつかない。

・消費税増税が無理らしいとなると格下げになる可能性は十分ある。
・輸出なくして製造業を維持することは困難で、TPP(環太平洋経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)を結ぶ必要がある。
・元気な高齢者が働ける場を作り、女性の就業を促進して高齢化に対応した社会システムを作ることが大事。
・圧倒的に低い国民負担で、圧倒的に高い高齢化比率を支える社会保障制度を運営しようとすると、どんなに経済成長しても追いつかない。



〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
 「製造業維持へTPP必要」
 「読売ビジネス・フォーラム2012」の第6回講演会が3日、札幌市内のホテルで開かれ、大和総研理事長の武藤敏郎氏が「日本経済の課題」をテーマに語った。
 約210人を前に武藤氏は、国内の金融機関が約76%を保有していることなどを根拠に挙げ、日本国債の暴落する可能性について「近々、リスクが顕在化するとは思っていない」と述べた。
 ただ、「消費税増税がどうも無理らしいとなると格下げになる可能性は十分ある」とも指摘した。
 武藤氏はさらに、世界で進むグローバル化の流れに言及し「輸出なくして(日本の)製造業を維持することは困難」と述べ「TPP(環太平洋経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)を結ぶ必要がある」とした。
 大胆な金融緩和の実施に意欲を示す自民党・安倍総裁の発言で、円高が緩和されて1ドル=80円台になったとの指摘については「長期的な基調の変化を見ることが正しい姿」と述べた。

持続できる社会保障
 元気な高齢者が働ける場を作り、女性の就業を促進して高齢化に対応した社会システムを作ることが大事だ――。札幌市内で3日に開かれた「読売ビジネス・フォーラム2012」の第6回講演会で、大和総研理事長で元日本銀行副総裁の武藤敏郎氏は、持続可能な社会保障の必要性を説いた。
 武藤氏は日本の社会保障の負担率が主要国の中で低いことを指摘した。その上で「圧倒的に低い国民負担で、圧倒的に高い高齢化比率を支える社会保障制度を運営しようとすると、どんなに経済成長しても追いつかない」と強調した。景気が良くなれば税収が増え、国の借金もなくなるとする主張に異を唱え、将来的な年金の引き下げなど、社会保障の給付水準を下げる検討が必要とした。






武藤敏郎大和総研理事長の講演を聞く参加者たち(3日午後、札幌市中央区の京王プラザホテルで)=三浦邦彦撮影


 日本経済の課題として強調したのはグローバル化の必要性だった。武藤氏はバナナの関税引き下げの際、「高級バナナが国内に出回ると困る」と国内のリンゴ農家は反対したが、今やバナナはダイエット食として流通し、国産リンゴは高級品として輸出されているとした。アメリカンチェリーが輸入されても国産サクランボ「佐藤錦」は高値で取引されていると話し「農業もイノベーション(革新)が起こる。国産農産物が競争力がないと決めてかかるのは間違い」と述べた。その上で日本は貿易立国で、TPP(環太平洋経済連携協定)の推進は欠かせないとした。

 日本がデフレから脱却できないのは日銀の金融緩和が不十分だからだとする見解が出ている点については「(デフレ脱却という)結果が出ていない以上『まだやることがある』という指摘に開き直れない」とした。ただ、さらなる金融緩和の必要性についての質問には「金融サイドだけで物価が上がるとは思えない」と述べ、日本の製造業の競争力が弱まっている点にも要因があるとの認識を示した。

 武藤氏は「電力料金が上がると製造業に『頑張れ』といっても難しい。いったん原子力発電から撤退すると専門家がいなくなる」と述べ、代替電源の手当てを付けない「原発ゼロ」の主張を疑問視した。

 次回は来年3月8日、日露外交セミナーとして元駐露大使の丹波実氏が「最近のロシアの内外情勢と日露関係」をテーマに講演する。