北方領土問題は、スターリン下の旧ソ連が日ソ中立条約を侵犯し、四島を武力占拠した。 スターリンにより犯された日本人のシベリア抑留と同根の国際法違反である。 シベリア抑留同様、ロシア側が謝罪し速やかに返還に応ずべき不法行為だ!

・三条 健です。
・ロシアは中国に対し「二重戦略」で臨んでいる。 北京の機嫌を損ねてはならないと細心の注意も払う。
・中国を本気で怒らせた場合、その被害を最も深刻に受けるのは、日米でなくロシアに他ならない。
・北京は、かつて帝政ロシアに奪われた150万平方キロの領土の返還要求を再燃させる恐れすらなきにしもあらずだ。
北方領土問題は、スターリン下の旧ソ連が日ソ中立条約を侵犯し、四島を武力占拠した。 スターリンにより犯された日本人のシベリア抑留と同根の国際法違反である。 シベリア抑留同様、ロシア側が謝罪し速やかに返還に応ずべき不法行為だ!

  





〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
北方領土を徘徊する2匹の妖怪
北海道大学名誉教授・木村汎   2013.2.26 03:09 [正論]
 2匹の妖怪が北方領土を徘徊(はいかい)している。1匹は中国の脅威を警戒する余りの日露提携論だ。
 ≪日露の対中提携論の脆弱性
  中国の台頭は、確かな事実である。  国内総生産(GDP)で日本を抜いた中国は、2060年頃には米国をも凌駕(りょうが)するとの予想もある。  問題は、中国が伸長する経済力を惜しみなく軍事力増強に投じていることだ。   とりわけ尖閣諸島沖やその上空での軍事的威嚇は、わが国が真剣に対処せねばならない焦眉の急になっている。
  だからといって、慌ててはいけない。   わが国にとっての中国の経済・軍事面での膨張を正しく評価すること、対策を間違えてならないことだ。  それを過小にも過大にも受け取ってはならない。
  例えば、過大評価する余り、ロシアと組んで中国に当たるように勧める戦略は、短絡思考の最たるものといえよう。    ましてや、そのためにロシアに対し、北方領土返還の要求を緩めるべきだなどと説くのは、大間違いである。
 第1に、そのような戦略は、中露関係を単純に捉える過ちを犯している。
 ロシアは中国に対し「二重戦略」で臨んでいるからだ。  確かに本心では、地続きの中国を恐れ嫌っている。   だが、いやだからこそ、北京の機嫌を損ねてはならないと細心の注意も払う。
  この二重性ゆえに、ロシアは米国や日本とともに対中包囲網を形成することに、ある程度までは熱心になるだろうが、それには限度がある。
  というのも、中国を本気で怒らせた場合、その被害を最も深刻に受けるのは、日米でなくロシアに他ならないからだ。
  ロシアの極東地方は、軍事力によらずとも、地続きの隣国、中国の圧倒的な人口、経済の浸透圧によって席巻され、事実上、中国の植民地支配下に置かれてしまうだろう。  また、北京は、かつて帝政ロシアに奪われた領土の返還要求を再燃させる恐れすらなきにしもあらずだ。
  そうした地域は少なくとも150万平方キロにも及ぶ、とロシア側は懸念している。  そうだとすれば、到底、5000平方キロの北方四島の比ではない。
 ≪領土で誤った印象与えては≫
  第2に、日露が対中提携作戦を組む場合、誤ったメッセージを全世界に発信することになりかねない。  日本人は外交便宜上、領土要求の旗も容易に降ろしてしまう国民だという印象である。   さらに、北方領土に関する日本の譲歩が対中戦略絡みでなされたとは、必ずしも中国は受け取らないかもしれない。   それどころか、日本の領土要求は本気ではなく、次は尖閣諸島についても譲歩する余地ありと解釈される恐れすらある。
  第3に、百歩譲って、中国に対抗すべく日露協力関係を組む戦略一般が日本にとり適当なものであると仮定しよう。   その場合でも、そのようなデリケートかつマキャベリスティックな戦略を展開し得る力量の政治家が、果たして今の日本に存在するだろうか。
  ロシア側トップと会談する前に「三島返還」案を公然と示すような元首相、そうした人物を特使として送り込む前首相や現首相−。このような現状に鑑みる限り、残念ながら、その問いに対して「イエス」とは答えられない。
 ≪「現実主義」の美名の下に≫
  2匹目は、「現実主義」と称する妖怪である。   日露関係は、その核心を成す北方領土問題に関して「現実主義」的な立場に立たなければ、問題解決へ向けて、一歩も先へ進まない。 このように述べる人々が増えつつある。  だが、彼らの考え方は果たして本当に、「現実主義」の名に値するものだろうか。 疑問という他ない。
  北方領土問題は、そもそもスターリン下の旧ソ連が日ソ中立条約を侵犯し、四島を武力占拠したことに端を発している。  やはりスターリンにより犯された日本人のシベリア抑留と同根の国際法違反である。
  本来、シベリア抑留同様、ロシア側が謝罪し速やかに返還に応ずべき不法行為である。
  それにもかかわらず、ロシアは「戦争結果不動論」(ラブロフ外相)を唱え、当然至極の日本側主張を頑(かたく)なに拒否し続けている。  理不尽なロシア側の姿勢に屈し、その状態を認める。  揚げ句の果てに四島返還の旗印を降ろす。  これが「現実主義」にふさわしいアプローチ−そのように、したり顔で説く人々が多くなりつつある。
  だが、果たして、そうした主張を「現実主義」的な立場と認めてよいのか。  それは私見では、国際法の基本原則から逸脱した、便宜主義的な主張を正当化しようとする試みのように思われる。  「現実主義」の美名の陰に隠れた単なる現状追随論に他ならない。
  それは、「法」より「力」でつくられた現実を重んじようとするロシアのごり押し戦略に乗せられた人々の主張である。  そして、それは、国際紛争を毅然(きぜん)として粘り強く解決する日本のあるべき姿をないがしろにし、世界に軽んじられる結果を招いてしまう。
  プーチン大統領が「引き分け」を口にした森喜朗元首相との21日の会談を見るにつけ、妖怪たちの動きが案じられてならぬ。(きむら ひろし)