・国民皆保険制度が崩れることもない。 各国とも公的医療制度を交渉対象にする用意はない。 混合診療も同様だ。「食の安全」も変わらない。
・TPP交渉に参加しなければ、太平洋を取り巻く国々の間で、日本抜きで貿易ルールが作られる。 したがって、TPP成立後は、日本の輸出品だけが関税を課せられる。 日本の投資や知的財産権だけが弱い保護の下におかれる。
・TPPの先には、「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」が構想されている。
・中国主導の「ASEANプラス方式」がFTAAPに至る道になるとは考えられない。
・関税にしても、「例外なき撤廃」ならば、そもそも交渉など必要ない。TPP交渉というものは、各国が抱える自由化困難な品目や制度について例外を作るための作業だ!
・ISDS(国家と投資家の紛争解決手続き)条項は、それが適用されるのは、加盟国がTPP協定に違反した場合だけだ!
・国民皆保険制度が崩れることもない。 各国とも公的医療制度を交渉対象にする用意はない。 混合診療も同様だ。「食の安全」も変わらない。
・日本の貿易開放度は高い。 各国が関税を原則的に撤廃すれば、もともと保護水準の低かった日本は大きく得をする。
・「サービス」を中心とするその他の交渉分野こそ日本経済再生のカギを握っている。
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TPP交渉参加は怖くない
MITシニアフェロー・岡本行夫 2013.3.1 03:32
日米首脳会談で、日本は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加に大きく踏み出した。 安倍晋三首相のリーダーシップに敬意を表したい。
そもそも外国との交渉は、憲法に明記された行政府の判断事項である。 立法府のメンバーが反対したいのなら、政府が交渉してきた結果を国会で否決すればよい。
これまでの国際交渉で、国会議員たちが最初から政府を羽交い締めして交渉参加を阻もうとしたケースなどなかった。 交渉に参加しなければ、太平洋を取り巻く国々の間で、日本抜きで貿易ルールが作られる。 TPP成立後は、日本の輸出品だけが関税を課せられる。 日本の投資や知的財産権だけが弱い保護の下におかれる。 日本人ビジネスマンの移動だけが差別される。
しかもTPPの先には、より大きな枠組みである「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」が構想されていて、日本はこれに加盟することを既に宣言している。
だからTPPにはいずれかの時点で加盟しなければならない(中国の言い分が中心になる「ASEANプラス方式」がFTAAPに至る道になるとは信じられない)。
いったん作られた組織にあとから入る国は大変だ。
遅れてガットに加盟した日本は、欧州諸国からは長らく締約国としての権利を認められなかった。 WTO加盟に際して、中国とロシアは屈辱的な条件交渉を強いられた。 新しい枠組みが作られようとしている今、交渉に参加して自国に少しでも有利なルールを作るのは、政府の責務である。
最大問題となっている農業は、既に従事者の平均年齢が66歳。 放置すれば日本農業は滅亡する。 TPP交渉を機会に、むしろ思い切った農業保護策を関税以外の手段で講じるべきだ。 補助金による保護はいくらでも認められている。 関税にしても、「例外なき撤廃」ならば、そもそも交渉など必要ない。 だからTPP交渉というものは、極端に言えば、各国が抱える自由化困難な品目や制度について例外を作るための作業でもある。
日米首脳会談の共同宣言は、改めてこれを確認したものだ。 しかし、各国が合意したあとのTPPに加盟しても、例外はまず認められないだろう。
TPPへの反対論には誤解が多い。
問題とされるISDS(国家と投資家の紛争解決手続き)条項も、それが適用されるのは、加盟国がTPP協定に違反した場合だけだ。この条項を盾に、協定義務以上のことを投資家が加盟国政府に要求できるわけではない。
国民皆保険制度が崩れることもない。 各国とも公的医療制度を交渉対象にする用意はない。 混合診療も同様だ。「食の安全」も変わらない。
不思議なのは、TPPが日本にもたらす利益についての議論が少ないことだ。
日本の貿易開放度は高い。 各国が関税を原則的に撤廃すれば、もともと保護水準の低かった日本は大きく得をする。
重要なのは、TPP21交渉分野のうち「モノ」の貿易は工業、農業、繊維を扱う一分野だけ、ということだ。
「サービス」を中心とするその他の交渉分野こそ日本経済再生のカギを握っている。 政府は交渉参加への利益をわかりやすく国民に説明すべきである。(おかもと ゆきお)