・米政府にとってイランこそが最重要課題だ!

・米政府にとってイランこそが最重要課題だ!
核武装したイランは地域を不安定化させ、原油相場に衝撃を与えるほか、米国の同盟諸国を脅かすことになる存在だ!
・米政府が中東で懸念する最大の安全保障問題は、核兵器製造の可能性を秘めたイランである。
・核の力を手に入れたイランは中東諸国にドミノ効果を引き起こしかねない。
・イランが核兵器開発に着実に近づいていることを示唆するIAEAの最近の報告は、イランとの協議の緊急性をこれまでになく高めている。



〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
米国の「真のレッドライン」、シリアにあらず  
古澤襄  2013.09.11
  英ロイターは国際政治学者イアン・ブレマー氏のコラム「米国の”真のレッドライン”、シリアにあらず」との論評を掲げた。 この中で
①米政府が中東で懸念する最大の安全保障問題は、核兵器製造の可能性を秘めたイランである
核武装したイランは地域を不安定化させ、原油相場に衝撃を与えるほか、米国の同盟諸国を脅かすことになる存在だ
③シリアへの不介入は、イランの核問題に関するレッドラインをより曖昧にさせる・・    ・としている。

<シリアの化学兵器使用疑惑をめぐり、米国による軍事介入の可能性に世界の注目が集まるなか、中東における米国のレッドライン(越えてはならない一線)と信頼に深刻な影響を与えかねないもう1つの深刻な問題が見過ごされている。
  国際原子力機関IAEA)の報告によると、イランは高度ウラン濃縮のための遠心分離機約1000基を設置し終え、試験を行う予定だという。 イランの濃縮能力が高まるに伴い、核兵器製造のための高濃縮ウラン備蓄に必要とする時間は大幅に縮小している。  向こう1─2年で、イランが兵器転用可能なウランの備蓄に必要な期間は約10日にまで減る可能性がある。  米国が確実に対処するにはあまりに短い時間だ。
  米国が講じるシリアへの次なる一手は、イラン情勢と表裏一体だ。
 米政府が中東で懸念する最大の安全保障問題は、核兵器製造の可能性を秘めたイランである。
  核武装したイランは地域を不安定化させ、原油相場に衝撃を与えるほか、米国の同盟諸国を脅かすことになる存在だ。
 長期的な見通しほど予測困難であり、決してそれは明るいものではない。  核の力を手に入れたイランは中東諸国にドミノ効果を引き起こしかねない。  新たに「アラブの春」が起きた場合、核兵器保有する破綻国家は脅威以外の何ものでもない。
  シリアへの不介入は、イランの核問題に関するレッドラインをより曖昧にさせる。
 実際、軍事介入の決断を議会に委ね、さらにレッドラインを踏み越えたことと罰を与えることの因果関係を複雑化することで、オバマ米大統領はすでに問題を曖昧にしてしまったかもしれない。
 そもそもオバマ大統領がこうした立場を取るとは思いがけないことだった。 2012年8月に大統領がレッドラインに初めに言及したとき、側近たちは不意打ちを食らったという。   ニューヨーク・タイムズ紙は5月、大統領が会見で質問に答える中でレッドラインという言葉を使ったとき、側近らの一部は驚き、取り消せないかと思ったと報じている。
  もしオバマ大統領が自身のスタッフとも相談なしにレッドラインを設定したとすれば、シリアの化学兵器使用に対する他国の行動を確認しなかったことは明らかだろう。
  英議会がシリアへの軍事行動案を否決したことは、オバマ氏にとって最も手痛い教訓となっただろう。  つまり、もし米国例外論を持ち出す必要にかられたとしても、そこにレッドラインを持ち込まないこと。
  もし独自にレッドラインを設けたなら、自国でそれを守ることを心せよ、ということだ。

  対イラン政策においても同じことが言える。 イランが核兵器開発に着実に近づいていることを示唆するIAEAの最近の報告は、イランとの協議の緊急性をこれまでになく高めている。  そして、協議を楽観視できる説得力のある理由もいくつかある。  双方がそれぞれ相手が欲するものを持っており、イランでは新しい大統領が誕生したからだ。
  今年の6月に行われたイラン大統領選では、西側との関係修復を掲げた穏健派のハサン・ロウハニ氏が圧勝した。  
  強硬派のアハマディネジャド氏が表舞台から去ったことは大きな意味を持つだろう。   最高指導者ハメネイ師が依然として強い影響力を持つとはいえ、大統領選でロウハニ氏が勝利したことにより、交渉のリセットだけでなく、経済制裁の緩和と引き換えに、査察の受け入れやウラン濃縮作業の縮小といった成果をもたらす可能性がある。
  米国はこのチャンスをつかむ必要がある。  もし交渉が失敗に終われば、2つの理由から、米国が現在の制裁圧力の水準を維持するのが難しいと証明することになるだろう。
 第1に、嫌われ者で反イスラエルを声高に唱えたアハマディネジャド前大統領とは違い、イランの新大統領はカリスマ性を備えていること。
  第2に、ロウハニ氏がイラン経済の透明性と効率性の向上を促進していることだ。 同氏のこうした取り組みは中国やインド、ロシアといった国を引きつけ、たとえ制裁のルールを曲げることになろうとも、イランとの取り引きを望むようになるだろう。
 米国がシリア情勢で目にしてきたように、国際社会に厳密なレッドラインを守らせるのは困難だ。  経済的なインセンティブがある場合にはなおさらだ。

 では、シリア問題は今後どう展開するだろうか。どちらかと言えば恐らく、米議会が限定的な軍事攻撃を承認し、介入も限定的になる可能性が高い。
  議会がもし承認しなければ、米国のレッドラインにとって危険な前例となり、今後の協議に先立ち、米国の信頼を弱めることになる。
 もし軍事攻撃が実現すれば、オバマ政権はイランによる非対称的報復攻撃のリスクに備える必要がある。
 そして、シリア問題の副産物によって、イランとの核協議を台無しにしてはならないのだ。

 今からの数カ月の間に、米国は十中八九、シリア問題で再び傍観者となり、終わりの見えない暴力を言葉では非難しても、行動はほとんど起こさなくなるだろう。
 メディアの注目も大きな利害関係のあるイラン問題へと移っていく。
 結局、米政府にとってイランこそが最重要課題なのだ。(ロイター)>