東シナ海を「争いの海」でなく「平和の海」にする有効な要件の一つだ!

・1年間、平均して中国海警局の公船による接続水域進入は週7日のうち5日、領海侵入は6日に1日に上る。
・日本固有の領土、尖閣諸島の領有権を中国が主張しだしたのは、1968年、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)が海洋調査の結果、周辺の海底にイラクの埋蔵量に匹敵する大量の石油資源が埋蔵されている可能性を報告してからだ!
・中国の核戦略は相手からの核攻撃の第一撃に生き残り、最小限の核報復を行うという戦略であるから、第一撃に対する残存性が鍵となる。
実際には、核攻撃の第一撃で攻撃拠点は全滅させられ、勝ち目は無いが?
・核弾道ミサイル搭載原潜のみで、勝てるのか? 疑問だ!
東シナ海は本当に「領域拒否」(AD)の海域なのか?   尖閣諸島周辺には十分に深い海域があり、周辺海域は格好の条件を兼ね備えているのは事実だ!
・核戦力の均衡維持こそが核を使わないですむことを担保する確実な要件だ! 東シナ海を「争いの海」でなく「平和の海」にする有効な要件の一つだ!








〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
尖閣を「中国聖域の海」にするな
帝京大学教授・志方俊之  2013.10.30 03:23 [正論]
 昨年9月にわが国が尖閣諸島3島の国有化を発表して以来、尖閣周辺での中国公船の活動は常態化している。 その後の1年間、平均して海警局の公船による接続水域進入は週7日のうち5日、領海侵入は6日に1日に上る。
≪公船、軍艦、爆撃機も登場≫
 中国海軍艦艇の活動も挑発的になっている。 5月には、潜水艦が奄美大島付近と久米島周辺の接続水域を潜没したまま通過する大胆な行動に出た。 7月には、ロシア海軍ウラジオストク沖で合同演習をした帰路、中国艦艇は宗谷海峡を通過して太平洋に出て、わが国を周回する形で航行し、その外洋能力を誇示している。
 9月には、爆撃機2機が初めて沖縄本島宮古島の間を通過して往復飛行をし、無人機も出没し始めた。 
 有人の航空機の領空侵犯に対しては部隊行動基準(ROE)がある。無人機への平時の対応は決めていなかったので、防衛省はこれを決定し公表した。
 わが国の固有の領土、尖閣諸島の領有権を中国が主張しだしたのは、1968年、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)が海洋調査の結果、周辺の海底にイラクの埋蔵量に匹敵する大量の石油資源が埋蔵されている可能性を報告してからのことである。
 当時の中国は、経済発展のための石油エネルギー資源の確保が最大の関心事で、米国からわが国に返還されたままになっていた尖閣に目を付けたのである。
 一方、中国は核開発を進め、冷戦が激化した64年、核実験に成功し核弾頭を持つに至った。 87年に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪1号」(JL−1)、2008年に「巨浪2号(JL−2)」(射程8千キロで米本土へ到達可能)を開発し、04年には12基の巨浪2号を搭載して水中から発射する「晋型原子力潜水艦(SSBN)」(1万2千トン)の一番艦を進水させ15年ごろまでには就役させるとみられている。
≪資源から「核」心的利益へ≫
 中国の核戦略は、最低でも米国のいくつかの大都市を破壊できる核弾頭数とその運搬手段を保有すればよいとする「最小限核抑止」と呼ばれるものである。
 相手からの核攻撃の第一撃に生き残り、最小限の核報復を行うという戦略であるから、第一撃に対する残存性が鍵となる。
 地上配備型の核弾道ミサイル偵察衛星によって探知され、攻撃・破壊される可能性が高く、残存性が低い。 その点、核弾道ミサイル搭載原潜は海中を遊弋(ゆうよく)して狙われる確率が低く、つまり残存性が高いから核抑止力として機能する。
 問題は、原潜を遊弋させておくのに必要な「聖域化した海域」である。冷戦期、旧ソ連は数隻の核弾道ミサイル搭載原潜をオホーツク海に遊弋させて、対米核反撃力を確実に保持した。
 ソ連が「太平洋艦隊」と呼んでいた極東配備艦隊の実体は、「オホーツク艦隊」だったといってもいい。
 中国にとっての聖域化した海域は、まさに第1列島線の内側(西側)の海域である。 米海軍艦艇が容易に入り込めず米空軍の攻撃も避けることができる海域、すなわち「領域拒否」(AD)の海域こそ東シナ海なのである。
 原潜には、潜没航行できる一定以上の深さが不可欠だ。  東シナ海には、潜水艦の行動が困難な浅い部分もあるが、尖閣諸島周辺には十分に深い海域があり、周辺海域は格好の条件を兼ね備えている。
 中国が同海域を必要とする理由はまさにそこにこそある。
 1970年代、中国が尖閣諸島の領有権を公然と唱えだしたのは「資源」ゆえであった。 半世紀たった今、尖閣は、中国にとって対米核抑止力を保持するという「核心的利益」の海となったと考えておかなければならない。
≪南西諸島防衛一段と重要に≫
 この第1列島線の内側海域は、本土から中国空軍の防護を受けられる距離にある。 原潜を秘密裏に地下基地で整備して補給を行えるという利点もあるのだ。
 さらにいえば、第1列島線内の「領域拒否」を確実にするには、第2列島線と第1列島線の間の海域を「接近阻止」(A2)の海域として保持することが必要だ。
 そのためには、中国本土から米国の艦艇を確実に狙い撃ちできる「対艦弾道ミサイル」を開発して配備する必要がある。
 中国がこれを配備すれば、米空母戦闘群が第2と第1列島線間の海域でプレゼンスを保つのは難しくなる。
 尖閣諸島周辺の海域が、中国にとっていかに軍事的に重要か、容易に理解できよう。 裏返していえば、わが国にとっては、尖閣諸島を含む南西諸島を守ることの軍事的重要性も自明である。
 筆者は米中両国が将来、核戦争をすると言っているのではない。
 核戦力の均衡維持こそが核を使わないですむことを担保する確実な要件であり、東シナ海を「争いの海」でなく「平和の海」にする有効な要件の一つだと考えている。
 中国の主要機関紙各紙が28日、原潜部隊を初紹介して誇示する記事を1面で掲載したことで、その思いを一層深くしている。(しかた としゆき)