・中国による第2列島線設定は、本土を米空母戦闘群の直接攻撃に曝(さら)されないようにするためだ!

・香港紙、明報は「東海防空識別圏設定の主目的は対米挑戦で、米国が定めた現状を打ち破るため探りを入れることだ」と伝えた。
・中国は10年までに沿岸から1千キロ離れた第1列島線(沖縄−台湾−フィリピン)に、さらに20年までには、3千キロ離れた第2列島線(小笠原諸島マリアナ諸島)に、40年には西太平洋に防衛線を築こうとしている。
・中国による第2列島線設定は、本土を米空母戦闘群の直接攻撃に曝(さら)されないようにするためだ!
・中国は「中華民族の偉大な復興」という「中国の夢」を掲げて太平洋に進出しつつある。
・中国が西太平洋で米国に挑戦するのであれば、「太平洋戦争の教訓」を学ぶべき国は、「現状維持国家」日本ではなく、「現状変更国家」中国だ!




〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
「大戦の教訓」学ぶべきは中国だ 
防衛大学校教授・村井友秀  2013.12.30 03:23 [正論]
 中国が尖閣諸島上空を含む「東海防空識別圏」の設定と、圏内を飛ぶ全航空機に飛行計画の事前提出を求める航空機識別規則を発表して1カ月余。 一方的な措置への非難は日米にとどまらず、韓国、台湾、東南アジア、オーストラリア、欧州にまで広がった。
≪防空圏も軍事摩擦に今は遠く≫
 中国国防部の楊宇軍報道官は「関連の準備作業が終われば、その他の防空識別圏を適時に設定していく」と南シナ海などへの防空識別圏設定も示唆した。 日米などの抗議には「とやかく言うな」と反論している。
 中国中央テレビは「中国の防空識別圏について問題にする者もいるが、われわれは構わずやるべきことをやるのみだ。 中国が権益を擁護することを気に入らない者もいるようだが、それでも最終的に慣れざるを得なくなるだろう」と報じている。
 この防空圏に彭佳嶼(台湾北東の島)が含まれていないことについて、台湾の立法委員、丁守中氏(中国国民党)は「台湾に対する善意の表れだ」と評価し、黄介正台湾淡江大学教授は「大陸は20年前まで飛行機による逃亡を恐れ、軍用機が沿岸から遠く離れることを許さなかったが、今では台湾に対して一定の自信を持っていることを示している」と言う。
 ただし、中国共産党の中央党校機関紙、学習時報の副編集長を解任されたトウ聿文氏は防空圏設定の目的について、
(1)厳しい周辺情勢と国際情勢の緊張は国内矛盾から人々の目をそらすことができる  (2)新しい指導者は早急に権威を確立する必要があり、そのためにこれまでの政策を変える必要がある  (3)中日、中米関係の緊張は最高指導部が党内の異論を抑える上で役立つ−
と指摘し、「国内問題のすり替え」だと主張している。
 党機関紙、人民日報系の国際情報紙、環球時報は「直接的な軍事摩擦からまだ相当の距離がある。 現在、双方が競っているのは外交レベルの意思。 衝突があっても『戦争』は問題外で、『面子(めんつ)を攻撃する』ものだ。 行動の大半は世論に見せるものだ」と述べる。
≪「絶対国防圏」を目指す?≫
 2012年11月の第18回党大会が「海洋強国の建設」を打ち出してから、中国は海洋進出を加速させている。 習近平国家主席は「中日の争いが資源争いから戦略的争いに変化している」と語った。 香港紙、明報は「東海防空識別圏設定の主目的は対米挑戦で、米国が定めた現状を打ち破るため探りを入れることだ」と伝えた。
 中国は経済発展を支える沿海地域を守るため、海岸線からできるだけ遠い海域に多層の防衛線を張ろうとしている。 10年までに沿岸から1千キロ離れた第1列島線(沖縄−台湾−フィリピン)に、さらに20年までには、3千キロ離れた第2列島線(小笠原諸島マリアナ諸島)に、40年には西太平洋に防衛線を築こうとしている。
 中国にとって沿岸部は、経済的繁栄を支える重要地域である。また、エネルギー資源の純輸入国になった中国は輸送をシーレーンに依存している。 こうした中国の産業地帯と海上交通路は、海からの攻撃に対して脆弱(ぜいじゃく)である。
 冷戦時代にソ連の太平洋艦隊は米空母戦闘群の接近を阻止するために、日本列島の沿岸線から千キロ以上離れた地点で、米軍を迎撃することになっていた。 70年前、日本軍は太平洋を越えて来攻する米空母戦闘群と戦いを繰り広げた。 太平洋戦争中に日本軍が立案した「捷号(しょうごう)作戦」と「絶対国防圏」の防衛線は、現在中国が考えている防衛線である前述の第1、第2列島線とほぼ一致している。
大東亜共栄圏と中国の夢と≫
 絶対国防圏とは、太平洋戦争後期に日本が本土防衛及び戦争遂行のために絶対確保すべき地域として設定した防衛線である。 千島−マリアナ諸島−トラック環礁−西部ニューギニア−スンダ列島−ビルマ(現ミャンマー)などを結んだ防衛線で、1943年9月の御前会議で決定された。
 しかし、強力な米空母戦闘群により破られ、マリアナ諸島を発進したB29爆撃機による本土空襲によって日本は急速に弱体化していった。
 絶対国防圏を突破された日本が本土を防衛する新たな作戦が「捷号作戦」だった。 作戦は「九州、沖縄、台湾と相俟(あいま)って東支那海に強力な支●を構成し、聯合艦隊は来攻する敵を迎撃撃滅して不敗の戦略態勢を確保す」というものだったが、制空権・制海権を失った日本に勝ち目はなかった。
 絶対国防圏策定時に最も重視されたのが本土を米爆撃機の行動半径外に置くことであった。 
 中国による第2列島線設定は、本土を米空母戦闘群の直接攻撃に曝(さら)されないようにするためであろう。
 現在、中国は「中華民族の偉大な復興」という「中国の夢」を掲げて太平洋に進出しつつある。
 70年前、大日本帝国は「大東亜共栄圏」という夢を掲げて太平洋で米軍と戦い敗北した。
 もし、中国が西太平洋で米国に挑戦しようとしているのであれば、「太平洋戦争の教訓」を学ぶべき国は、「現状維持国家」日本ではなく、「現状変更国家」中国であろう。(むらい ともひで)

●=手へんに堂の土が芽のくさかんむりを取る