・欧州の若者が右派勢力を支持する理由は『失業』である。

・EU議会751議席のうち、12%が移民政策やイスラムに批判的な主張をする保守政党である。 次の選挙では最低でも16%、最大25%をしめる勢力に躍進すると予測されている。
・議会制民主主義尊重をいう共通の普遍的価値観を基盤として移民規制、中央政府官僚主義離脱、失業対策強化などを訴えて、中央政界を脅かす。
・ 既成政党の右であれ左であれ、エリート官僚の優柔不断、国際主義、過度な人権擁護による外国人労働者流入放置など、失業が拡がって反中央政府感情と膨らませている汎欧州の若者たちに受ける。
・反中央感情とは、エリートの集まりであるブラッセル本部が福祉人権などといって借財を重ね、大幅に外国人労働者を受け入れ、イスラム圏からの移民を増やし、経済政策に失敗し、銀行だけを肥らせて、若者を失業に追いやったとする分析に深く共鳴する。
・欧州の若者が右派勢力を支持する理由は『失業』である。









〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
欧州政治の刷新、地殻変動が近いかも知れない   
宮崎正弘   2014.01.09
■各国の保守勢力が急進中、次のEU議会選挙では四分の一の議席を獲得か
「欧州版ティーパーティ」と英誌『エコノミスト』が大特集を組んでいる(2014年1月4日号)。
 イタリアの北部同盟、フランスの国民戦線にくわえて、オランダで、ポーランドで、ハンガアリーで、右派連合の伸張ぶりは瞠目するに値する。 かれらは民族主義とはいえず、国際感覚をあわせもつ新型の保守である。
 もともとイタリアの「北部同盟」はミラノを中心にローマ政治に対抗した地域性が強く、移民排斥を強く掲げた。
 フランスはルペンが主導した「国民戦線」がユーロ離脱、移民反対、イスラム融和政策反対を掲げて躍進を遂げてきたことは日本でも報じられた。 ルペンの国民戦線は娘が党首を引き継ぎ、以前より更に勢力を伸ばした。
 EU議会(欧州連合)は2014年1月現在、21の共和国、6つの王国、1つの大公国で構成されている。 スイス、アイスランドノルウェイならびにクロアチアをのぞいた旧ユーゴスラビアの五カ国(イスラム圏)は未加盟だが、本部をブラッセルにおき、欧州政治の中枢である。
 しかし「ブラッセル」と抽象的に比喩されるようにエリート官僚のたまり場として評価が低いきらいがあった。
  EU議会は人口比によって各国への議席配分システムで、最大はドイツの99議席、最小はマルタが五議席。 合計751議席で、各国が直接選挙、比例代表で選ぶ。  選挙民は政党名を投票用紙に書き込む。
  現在、この751議席のうち、12%が移民政策やイスラムに批判的な主張をする保守政党である。 そして次の選挙では最低でも16%、最大25%をしめる勢力に躍進すると予測されている。選挙は五月に行われる。
▼欧州政治に吹く新しい風
  英国に誕生したUKIP(英国独立党)はEU議会に十人を送り込んでいる。
 イタリアの北部同盟は七名。オランダは自由党が四名、改革党が一名の合計五名。そしてポーランドでも「統一ポーランド党」が四名、フランス国民戦線が三名。
 以下、EU議会に議席を占める各国の保守勢力、政党を一瞥すると、オーストリア、ベルギー、ブルガリアクロアチアデンマークフィンランドギリシアリトアニアルーマニア、スロバニアが、それぞれ勢力を伸ばした。
  EUに議席こそないが、ブルガリアキプロス、ドイツ、ノルウェイ、スェーデンに躍進中の右派政党が存在する。  日本にも自民党保守本流に飽き足らない維新の会、議席はないが一台政治勢力として「新風」「頑張れ日本! 行動委員会」などがあるように。
 これらに共通するのは拝外主義的な民族主義ではなく、しかもヒトラー礼賛者は不在で、旧来の右翼のイメージからは遠い。
 みなが議会制民主主義尊重をいう共通の普遍的価値観を基盤として移民規制、中央政府官僚主義離脱、失業対策強化などを訴えて、中央政界を脅かすのである。「小さな政府」である。
 米国のティーパーティと異なるのは、米国では二大政党の内部で、つまり共和党内部で一大派閥を形成し、共和党政治、党の方針を左右するスタイルである実勢とは異なり、独自の政党を組織して、あくまでの選挙で民意を問うところにある。
 フランスではモンテルマ県で、地方事務所もない国民戦線が21%の得票を得るという番狂わせが生じた。 国民戦線が訴える反中央(ブラッセルのEUエリートどもをやっつけろ)、移民排斥、イスラム化はフランスの独自文化を損なうなどという主張が受け入れられたのだ。
 『日本列島は日本人だけのものではありません』という宇宙人宰相が聞いたら驚くだろう。
  既成政党の右であれ左であれ、エリート官僚の優柔不断、国際主義、過度な人権擁護による外国人労働者流入放置など、失業が拡がって反中央政府感情と膨らませている汎欧州の若者たちに受ける。 旧世代より若者の支持が多いのも英国、イタリア、フランス、オランダで特徴的である。
  反中央感情とは、エリートの集まりであるブラッセル本部が福祉人権などといって借財を重ね、大幅に外国人労働者を受け入れ、イスラム圏からの移民を増やし、経済政策に失敗し、銀行だけを肥らせて、若者を失業に追いやったとする分析に深く共鳴するのである。
▼外国人移民が、自分たちの職を奪っている
 対照的にギリシアハンガリーでは民族主義的色彩が濃い、右翼的主張をもつ政党が目立ち、「イスラム全体主義国家群だ」「コルランはファシストの本だ」、「ユダヤ人排斥」などアナクロなスローガンを掲げている国もあるが、他方で、イタリアやベルギーの右派政党は『地域性重視』を謳い、EUからの離脱は主張していない。
 しかしEUの理想に期待するとこたえた人たちは、2007年調査で52%だったが、最近は30%に急落し、さきに述べたように若者が右派勢力を支持する理由は『失業』である。
  外国人移民が、自分たちの職を奪っているという危機感が、かれらをして既存政党離れを起こさせているのだ。 フランスでは実に55%の学生らが、次の選挙では国民戦線に入れると答えている。
 日本はどうかといえば、中国の脅威、韓国の対日侮蔑などによって日本は国民精神を復活させようという動きが顕在化し、安倍首相の靖国参拝は82%が支持した(直後のヤフークィック・リサーチ)。
 都知事選挙には『日本は良い国である』と訴え続ける田母神俊雄候補に既成政治に飽きたらず、対中弱腰外交に反発する広い国民の支持が拡がっている。