・「完全なる設立の自由」と「独占禁止法の適用除外の廃止」だけで、農業界は蘇る!

・TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉は、コメ、麦、砂糖には手をつけず、牛・豚肉と乳製品の関税・従量税を引き下げる線に収斂しつつある。
・半世紀で酪農家は40万戸からわずか2万戸に激減したが、生乳生産は200万トンから850万トンへと4倍半も激増した。
・全中にとり、組織維持の上で、2万戸より250万人コメ農家の方がはるかに重要なのだ。
・内地の場合は、農家で食べていけない人が兼業化するのはたやすい。
北海道で農家の大規模化が急速に進んだ理由は、食べていけずに兼業したくても、周辺に職場がないので、食べられない人は出て行って、残された農地を近隣の人たちが買うからだ。
・コメの生産額は1・8兆円であるのに対し、税金などが1・1兆円も投じられている。
・JA全中がひたすら零細農家を守るために働いたと。 本来なら農家を集約しコメの生産コストを下げるのが経済団体としての発想だが、全中は組織維持、農業の現状維持が目的の政治団体にほかならない。
・農協は、販売、購買、金融(信用)、保険(共済)を一手に引き受けている。 総合農協は日本だけの姿で、他国の農協は全部専門農協だ。不得意な分野ができれば、そこには直ちに新規参入してくるし、農家はどの専門農協とも自在に契約できる。
・農協は生活協同組合と同様の組織だが、生協は組合員の利益を図るために必死になる。だが、農協は組合員を離さない独特の手段をいくつも持っているから、客である組合員に頭を下げる必要がない。
・政府の規制改革会議の作業部会が、単位農協−県中央会−全中と続く「中央会制度」を廃止せよと提案した。
・2010年に政府の行政刷新会議が農協設立の自由化を打ち出したところ、農水省は「都道府県のJA農協中央会の承認」を条件に立法化した。農水省厚労省の旧社保庁と同様にバカなことをやっている省庁だ!
・「完全なる設立の自由」と「独占禁止法の適用除外の廃止」だけで、農業界は蘇る!














〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
農協は農業活性化の阻害要因だ 
評論家・屋山太郎  2014.5.28 03:12 [正論]
 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉が始まる前の全国農業協同組合中央会(JA全中)の「交渉参加反対」運動はすさまじかった。
 交渉は、主要国たる日米が交渉項目を絞って、先が見えてきた。
 他の交渉参加国の意思がそろったところで決定するという段階に入っているらしい。
≪全中の雄たけび何故やんだ≫
 JA全中が声を大にして求め、自民党参院選で公約した、「5項目には手をつけない」という路線は若干、崩れる様相を呈している。にもかかわらず全中の雄たけびがやんだのはなぜか。
 報道を総合すると、コメ、麦、砂糖には手をつけず、牛・豚肉と乳製品の関税・従量税を引き下げる線に収斂(しゅうれん)しつつある。
 この半世紀で酪農家は40万戸からわずか2万戸に激減したが、生乳生産は200万トンから850万トンへと4倍半も激増した。これだけの変革を果たした酪農家に、関税や従量税の引き下げというハンディを与え、コメ農家はお構いなしというのは全く解せない。だが、全中にとり、組織維持の上で、2万戸より250万人コメ農家の方がはるかに重要なのだ。
 大ざっぱにいうと、内地の農家の平均耕作面積は1〜1・5ヘクタール、北海道では21ヘクタール。2025年には33ヘクタールになると予想(中央農業試験場)されている。
 北海道で農家の大規模化が急速に進んだ理由は、食べていけずに兼業したくても、周辺に職場がないせいだ。  食べられない人は出て行って、残された農地を近隣の人たちが買う。 内地の場合は、食べていけない人が兼業化するのはたやすい。
 コメ農家の所得は平均450万円程度だが、コメで稼げるのは50万円程度で、兼業所得と年金収入が各200万円だ。 といっても、コメの50万円には、生産調整(減反)奨励金やら戸別所得補償やらさまざまな税金が使われている。 コメの生産額は1・8兆円であるのに対し、税金などが1・1兆円も投じられているのだ。
≪零細コメ農家を守ったJA≫
 ここではっきりしてきたのは、JA全中がひたすら零細農家を守るために働いたということだ。 本来なら10戸の農家を1戸に集約しコメの生産コストを下げるのが経済団体としての発想だが、全中は組織維持、農業の現状維持が目的の政治団体にほかならない。  その全中は全国700農協から年間80億円の負担金を集めて“活動”することになっているが、農業面での活動実績はないに等しい。
 農協の仕事は、組合員である農家を相手に、コメを集荷したり、肥料を売ったり、“便宜”を図ったりすることだ。 しかし、機材などはホームセンターで買った方が安いというのが定評だ。
 農協のシェアはコメ50%、野菜54%、牛肉63%、資材のうち肥料77%、農薬60%、機械55%。農協がシェアの50%以上を握ると価格支配力を持つ。
 輸入も含めて肥料会社から直接買えば、価格は3分の1、高くても半分だが、農協は信用事業も行っているから農家の通帳を調べれば、どこから肥料を買ったか、すぐバレる。農家に圧力をかける一方、売った肥料会社にも「お宅の肥料は今後、扱わない」とやればすぐ引っ込む。
 農協は、販売、購買、金融(信用)、保険(共済)を一手に引き受けている。 こうした総合農協は日本だけの姿で、他国の農協は全部専門農協だ。不得意な分野ができれば、そこには直ちに新規参入してくるし、農家はどの専門農協とも自在に契約できる。
≪農協法の1つの条項改正を≫
 日本の農協組織は全業種を独占的に扱い、隣町の農協が良いからといって契約はできない。 こういう独占企業体が率先して組合員の利益を図るわけがない。 農協は生活協同組合と同様の組織だが、生協は組合員の利益を図るために必死になる。だが、農協は組合員を離さない独特の手段をいくつも持っているから、客である組合員に頭を下げる必要がない。
 農林水産省が農協について調査したところでは、農協に加入している組合員の44%が「満足していない」とし、うち70%が「資材が高い」と答えている。
 政府の規制改革会議の作業部会が、単位農協−県中央会−全中と続く「中央会制度」を廃止せよと提案した。 これができれば簡単なのだが、いくら安倍晋三氏でも号令だけに終わるだろう。
 「JA越前たけふ」は、農業関連事業を子会社化した。資材を農協系統から仕入れる必要がなくなったために、農家が購入する価格は2〜3割安くなった。
 農協の組織を存続したまま、だめなところは破綻させて、「たけふ」のようなところを生き残らせる決め手がひとつある。
 農協組織は、農協法の1つの条項を変えることで必ず活性化する。2010年に政府の行政刷新会議が農協設立の自由化を打ち出したところ、農水省は「都道府県のJA農協中央会の承認」を条件に立法化した。こんなバカな話はない。
 「完全なる設立の自由」と「独占禁止法の適用除外の廃止」だけで、農業界は蘇(よみがえ)るはずだ。(ややま たろう)