・予測される未曾有の事態は、政治暴動、権力闘争もさりながら金融危機というリスクの方が大きい。

中国経済の破綻が秒読みに入ったことを警告する。大局的な国際政治の枠組みを明確化し、アメリカは中国の提示した「新しい大国関係」を拒否した。
・中国の不動産投資が逆ざやになった。 シャドーバンキングの命脈がいよいよ尽きてきた。
・予測される未曾有の事態は、政治暴動、権力闘争もさりながら金融危機というリスクの方が大きい。
アメリカはIEEPA法に基づく制裁=「安全保障、外交、経済に対して異例かつ重大な脅威に対して、非常事態宣言後、金融制裁によって、その脅威に対処する」法律に基づき、イランやスーダンなどに融資していたパリバ銀行の不正取引を暴き、巨額の制裁金をかけた。
・BNPパリバ銀行への制裁手口をウクライナ問題にからめて、アメリカはロシアに適用した。 プーチン側近の資産は凍結され、権力中枢の資金調達が麻痺した。
アメリカは中国に対して、もし尖閣諸島強奪などの武力侵攻に出た場合、このIEEPA法を適用させる可能性が高い。







〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
書評 渡邊哲也『ヤバイ中国』    
宮崎正弘  2014.08.10
■逆ザヤが致命的となる中国不動産バブルの崩壊、アメリカが発動した経済制裁が、もし中国に適用されると?
<渡邊哲也『ヤバイ中国』(徳間書店)>

  国際金融の舞台裏分析が専門の渡邊氏が初めて中国経済に挑んだ。本書に拠れば、これまで中国経済を論じなかったのはデータ、とりわけ中国の公的統計が出鱈目であるため評論分析の仕様がなかったからだという。
 さもありなん。 中国共産党の大幹部自身が、国家統計局の数字をまったく信用していないのだから。
  本書に一貫するのは論理的歯切れの良さである。
 これは筆者・渡邊氏の特質なのかも知れない。  基礎的な原理原則を明確に提示しつつ、詳細を論じてゆく方法は、ときおりテレビ番組でご一緒する機会がある評者(宮崎正弘)にとっても分かりやすい。
 いつだったか酒席で、田村秀男氏が指摘していたが「われわれにとって議論の前提となる説明は省くけれど、渡邊さんは、基礎データを提示するところから始めるので改めて聞き直している」。
  本書は、じつに分かりやすいグラフを多用して、中国経済の破綻が秒読みに入ったことを警告する。大局的な国際政治の枠組みを明確化し、アメリカは中国の提示した「新しい大国関係」を拒否したとする。
  筆者が重視するのは利回りという視点からの、つまり投資家としての視点から、中国の不動産投資が逆ざやになったことを証明し、シャドーバンキングの命脈がいよいよ尽きてきた現在の状況を詳しく分析し、同時に人口ボーナスが終わり、人口オーナスに入る段階になると次に予測される未曾有の事態は、政治暴動、権力闘争もさりながら金融危機というリスクの方が大きいとする。
 さて評者(宮崎正弘)が、本書でもっとも新鮮に感じたのは、フランスのパリバ銀行の不正に対してのアメリカの司法制裁が、今後の中国経済にいかなる意味を持つかと指摘された箇所である。
「BNPパリバ銀行は海外向けのインフラの整備に金融支援を行い、その裏側で」、大企業を傘下に置くというフランスにとって重要な銀行である。
 そしてアメリカにはIEEPA法があり、この法に基づく制裁とは「安全保障、外交、経済に対して異例かつ重大な脅威に対して、非常事態宣言後、金融制裁によって、その脅威に対処する」法律だが、これに基づき、イランやスーダンなどに融資していたパリバ銀行の不正取引を暴き、巨額の制裁金をかけた。
  同行は経営がふらつくほどの打撃を受けた。
  同様に、このBNPパリバ銀行への制裁手口をウクライナ問題にからめて、アメリカはロシアに適用した。 プーチン側近の資産は凍結され、権力中枢の資金調達が麻痺した。
同様にアメリカは中国に対して、もし尖閣諸島強奪などの武力侵攻に出た場合、このIEEPA法を適用させる可能性が高いというのである。