・「第3の矢の成功には、政権を担う人が本気で官僚や関連業界などの抵抗勢力に打ち勝つ覚悟を持つことが重要だ」

浜田宏一は、今後のアベノミクスは供給力の強化に向けて「第3の矢」である成長戦略に注力すべき局面にあるとの認識を示した。
・国際競争力を高め、国内に投資を呼び込むための大胆な法人実効税率の引き下げを主張。税率を25%程度まで引き下げるべきと語った。
・「根本的に法人税制を改革し、租税特別措置中心の税制から国際競争力がつく法人税制に変える必要がある」
・金融政策運営について、供給制約が意識されつつある中で、一段の緩和がインフレを生じさせる可能性に言及し、日銀が目標に掲げる物価2%の2年程度での達成にこだわる必要はないと語った。
・2015年10月に予定されている消費税率2%の引き上げについては、1%ずつ段階的に引き上げることも選択肢との認識を示した。
・「第3の矢の成功には、政権を担う人が本気で官僚や関連業界などの抵抗勢力に打ち勝つ覚悟を持つことが重要だ」
・消費増税による反動減の影響という「ショックが発生している時に、金融政策の先行きを足元の数字で決めることは適切ではない」











〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
浜田宏一参与 アベノミクスは成長戦略に注力を    
古澤襄  2014.08.27
■「第3の矢」に軸足を 2年・2%こだわらず
 [東京 27日 ロイター]安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は27日、ロイターのインタビューに応じ、日銀による「量的・質的金融緩和」(QQE)などの効果で国内需給がひっ迫する中、今後のアベノミクスは供給力の強化に向けて「第3の矢」である成長戦略に注力すべき局面にあるとの認識を示した。 特に国際競争力を高め、国内に投資を呼び込むための大胆な法人実効税率の引き下げを主張。税率を25%程度まで引き下げるべきと語った。
 2015年10月に予定されている消費税率2%の引き上げについては、1%ずつ段階的に引き上げることも選択肢との認識を示した。
 金融政策運営について、供給制約が意識されつつある中で、一段の緩和がインフレを生じさせる可能性に言及し、日銀が目標に掲げる物価2%の2年程度での達成にこだわる必要はないと語った。

法人税25%程度へ引き下げ必要、消費税は段階的上げも選択肢>
  安倍首相は9月3日に内閣改造を行う方針を表明しているが、浜田氏は、今後のアベノミクスの展開について「第1、2の矢から第3の矢に軸足を移し、第3の矢を真面目に追求すべき局面」とし、成長戦略に注力すべきとの認識を示した。
  第1の矢である金融政策によって「需要に働きかける政策が成功した」と評価しつつ、需要の高まりに伴う供給制約が意識される中で「経済の生産余力が少なくなっている。 今後はサプライサイドを増やさなければない」と指摘。 法人税率引き下げのほか、規制緩和や女性の労働参加、環太平洋連携協定(TPP)の推進などの重要性を挙げた。
  中でも「軸となるのが、法人税のドラスティックな引き下げだ」と強調した。
 政府は現行の35%台の法人実効税率を数年間で20%台に引き下げる方針を示しているが、浜田氏は「根本的に法人税制を改革し、租税特別措置中心の税制から国際競争力がつく法人税制に変える必要がある」とし、「世界的に法人税の引き下げ競争が起きている中で、微少の引き下げでは効果がない。少なくとも25%程度への引き下げが必要だ」と提唱。
  財源問題についても、租税特別措置の見直しのほか、「日本に投資を呼び込むことで日本経済に活気が出れば、課税ベースを増やす方向になる」との見解を示した。
 その上で、成長戦略の実現に向けて「第3の矢の成功には、政権を担う人が本気で官僚や関連業界などの抵抗勢力に打ち勝つ覚悟を持つことが重要だ」とし、「幸いにも安倍首相も(菅義偉官房長官抵抗勢力を抑え込む姿勢が見える。しっかり応えようとしている」と期待感を表明した。
安倍首相は2回目の消費税率引き上げの是非を年末までに判断する意向を示しているが、浜田氏は大胆な法人税引き下げ実現を前提に「強く反対するわけではない」と述べつつ、1%ずつ段階的に引き上げることも選択肢との見解を示した。

<さらなる需要刺激はインフレ発生も、2年で物価2%にこだわらず>
  消費増税による駆け込み需要の反動減の影響で、4─6月期の実質経済成長率は前期比年率6.8%減と大きく落ち込んだが、1─3月、4─6月の国内総生産(GDP)の変動は消費増税の影響という特殊要因もあり、先行きは「それほど悲観していない」と指摘。
 4月の消費増税は「消費者にとって打撃だった」としながらも、「他の政策をうまくやれば、以前のように悲観的な状況に陥るとは思えない」と述べた。
GDPや個人消費など足元のさえない指標を受け、市場では日銀による追加緩和観測も再燃しつつあるが、消費増税による反動減の影響という「ショックが発生している時に、金融政策の先行きを足元の数字で決めることは適切ではない」と語った。
 その上で、供給制約が意識されている中で「それを無視して需要を付ければ、(供給の)天井にぶつかり、金融緩和を続けていくこと自体ができなくなってしまう」と主張。 一段の緩和によってインフレが生じる可能性にも言及し、「私はインフレが欲しいわけではない。(日銀が目標に掲げる)2年で物価2%にこだわる必要はない」との見解も示した。

 もっとも、今後、日本経済が底割れするような懸念が高まったり、労働市場を中心に需給が大きく緩むようなことがあれば「日銀によるサポートが必要」とし、7─9月以降の経済状況を注意深く見ていく必要があると強調。
 2回目の消費増税の影響を緩和するために政策対応が必要との判断になった場合には、補正予算など財政措置よりも「金融政策で対応するべき」との認識を示した。(ロイター)