・2014年の香港は1989年の天安門広場とは違う。しかし中国政治の現実が1989年以降、根本的に変化したわけでない。

・習主席に最も影響を与えるのは、香港の金融関係者ではなく、軍部など中国国内の支持者たちだ。
・彼は、国内の経済改革を推進し、反腐敗キャンペーンに対する抵抗に打ち勝つためには、彼らの支援を必要としている。
・中国政府にとって、天安門型の弾圧に踏み切るとすれば、一大決心になるだろう。
・2014年の香港は1989年の天安門広場とは違う。しかし中国政治の現実が1989年以降、根本的に変化したわけでない。









〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
天安門事件から考える香港のデモの結末     
古澤襄  2014.10.04
【香港・米ウォール・ストリート・ジャーナル】2014年の香港は1989年の天安門広場とは違う。
 だが、中国政府が香港のデモ隊に武力を行使するのをためらっているとの見方は、その違いを強調し過ぎである可能性がある。
 25年前に中国軍が天安門広場でのデモ隊を弾圧した直後には、中国の経済発展は少なくとも10年は遅れるとの見方が一般的だった。
 西側政府は対中経済制裁を科し、外国企業は中国から一斉に逃げ出した。
 しかし外国企業は程なくしてどっと中国に戻った。 天安門広場での流血の惨事に対する衝撃の波は世界中に広がり、その後中国経済が史上最大級の離陸を果たすことになるなどと予想した人はほとんどいなかっただろう。 だが平和的デモの弾圧のシナリオを書いたトウ小平氏は、市場経済主導の中国再生を主導した。
  香港でデモ隊が当局と対峙(たいじ)している今、この想像を超えた歴史の転換は心にとどめておくだけの価値がある。
 それは、天安門型の弾圧はあり得るからではなく、中国政府が騒動を鎮圧するリスクをどう判断しようとするのかヒントを与えてくれるからだ。
 はっきりさせておこう。 香港当局も、中国政府も暴力は望んでいない、だが香港のデモが中国本土に波及するなど中国を脅威にさらすと中国共産党が判断すれば、どのような手段を使ってもちゅうちょせずデモを鎮圧するだろう。
  最も重要なのは体制の維持だ。 中国政府は1989年の場合と同様に、弾圧に伴う経済的な打撃はおそらく一時的なもので管理可能と判断するだろう。
 もちろん、今と25年前とは状況が大きく異なる。
 天安門共産主義国家の聖地であり、そこでデモを行っていた学生たちは共産党にとって重大な脅威だった。
 これに対し、香港は中国の南の端にあり、北京から遠く離れている。さらに香港では、党はおおっぴらには活動しておらず、学生たちは中国全土の政治変革ではなく、香港の民主化を要求している。
 しかも、香港は今も「一国二制度」下にあり、中国とは法制度もそれを適用するやり方も違う。
 したがって、中国のほかの地域のように、党が自制したとしても、それは必ずしも弱さを示すことにはならない。

■香港民主化要求デモ、世界各地で賛同の動き
 中国政府は、弾圧に踏み切った場合の深刻な結果も分かっている。
 即座に香港に対する投資家の信頼は失われ、人材や民間資金は香港から逃げ出すだろう。
 米中関係も打撃を受けよう。米中はすでに相互不信に陥っており、香港政府が弾圧に踏み切れば、世界的な流行病や著作権侵害の問題などに関する米中協議のほとんどが中断となるだろう。
 だが結局のところ、習主席に最も影響を与えるのは、香港の金融関係者ではなく、軍部など中国国内の支持者たちだ。
 彼は、国内の経済改革を推進し、反腐敗キャンペーンに対する抵抗に打ち勝つためには、彼らの支援を必要としている。

中国政府にとって、天安門型の弾圧に踏み切るとすれば、一大決心になるだろう。しかし中国政治の現実が1989年以降、根本的に変化したわけでない。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)