・登山届の提出すら徹底されないのは何故なのか? 噴火しない神話か?

・日本にある火山の多くが湯治客や登山者を集める観光地だが、噴火対策は進んでいない。
・富士山でも山頂付近に退避施設なし…・噴火は想定外なのか?
・47の火山(関連する市町村は130)の防災対策によると、このうちハザードマップこそ37火山で作成されていたが、具体的な避難計画を定めていた自治体は20にとどまった。
ハザードマップを作って終わりと考えているのか? 具体策が大事だ!
・被害を防ぐための強固なシェルター(退避施設)も整備は進んでいない。
・監視対象となっている九重(くじゅう)山でも、何も具体策は無い?
ニュージーランドの国立公園内にある火山「ルアペフ山」では、火山であることを前面に出している。
・ハワイの火山「キラウエア山」のビジターセンターでも、色合いで噴火の危険度を示す掲示板が設置されるなど、最新の火山状況を知ることができる。
・「山岳国家の日本で山と共生していくためには、一定の怖さや畏れを抱きながら接し続けることが大切ではないか」
・登山届の提出すら徹底されないのは何故なのか? 噴火しない神話か?








〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
御嶽山噴火、「火山列島日本」で何をなすべきなのか     
古澤襄  2014.10.09
 長野、岐阜両県にまたがる御嶽山の噴火から10日余が過ぎたが、今回の噴火は日本が「火山列島」である現実を改めて突きつけた。日本にある火山の多くが湯治客や登山者を集める観光地だが、噴火対策は進んでいない。 古くから山岳信仰を持ち、山とつきあってきた日本人だが、山とどう向き合うべきか。 専門家はインフラ整備を担う自治体だけではなく、観光客らの山に対する「畏(おそ)れ」の意識の必要性も訴える。

■富士山でも山頂付近に退避施設なし…噴火は想定外か?
  気象庁は国内にある110の活火山のうち、御嶽山を含め噴火時の影響が大きい47の火山(関連する市町村は130)を24時間の監視対象としている。 内閣府が3月にまとめた火山の防災対策によると、このうちハザードマップこそ37火山で作成されていたが、具体的な避難計画を定めていた自治体は20にとどまった。
  地域住民以上に、噴火が生命と直結するのが、登山者だ。 御嶽山噴火では、犠牲者の大半が屋外で噴石の直撃を受け、山頂付近の山荘では噴石が屋根を破壊した。 こうした被害を防ぐための強固なシェルター(退避施設)も整備は進んでいない。
 世界文化遺産に登録され、昨年7、8月に登山者約31万人を集めた富士山も活火山の一つだ。静岡県では、気象庁の出す噴火警戒レベルが3以上になった際、避難対象となる地域を示した「避難計画」はあるが、交通規制などは定めていない。山頂付近には退避施設もない。
  県危機情報課の担当者は「警戒レベル1時点での対策は想定していなかった。御嶽山の噴火は富士山にとっても大きな課題だが、退避施設は景観の問題とも関わる」と頭を悩ませる。
  監視対象となっている九重(くじゅう)山を抱える大分県九重(ここのえ)町の担当者は「歴史的にみても、地震と比べて噴火の回数は少ないため、退避施設に関する問い合わせもほとんどなかった。 施設整備は予算の問題もあり、簡単ではないだろう」と話す。
■海外の活火山観光地では危険性を説明
  山そのものに対する情報不足を懸念する声もある。「観光地である以上、伝えるべき火山ごとの特性や最低限の基本情報が登山者に伝わっていないのではないか」。 日本火山学会元会長で北海道大の宇井忠英名誉教授(73)=火山地質学=はこう指摘する。
  宇井氏によると、諸外国の活火山の観光地は、危険性の説明を観光案内に組み込んでいる。
 ニュージーランドの国立公園内にある火山「ルアペフ山」は一大スキーリゾート地だが、噴火すれば雪が泥流となって観光客を襲う危険がある。 このため国が音頭を取り、スキーコースに数種類のサイレン音が鳴り響く装置を整備。サイレンの説明や噴火のリスク、避難方法が、スキーコースを紹介するパンフレットに書き込まれ、宿泊施設に置かれているという。
  宇井氏や米国・ハワイ州観光局日本オフィスによると、ハワイの火山「キラウエア山」のビジターセンターでも、色合いで噴火の危険度を示す掲示板が設置されるなど、最新の火山状況を知ることができる。
「日本では活火山であることを前面に出さず、活火山と知らずに登る登山者もいる。ハザードマップや退避施設も重要だが、『つくったから大丈夫』ということではない」。 山を知ることが被害防止にもつながると、宇井氏は主張する。

■山への畏敬の念が大切
  御嶽山山岳信仰の「霊峰」としてあがめられてきた。慶応大の宮家(みやけ)準(ひとし)名誉教授(81)=宗教学=によると、山に対する信仰は噴火などの天災を畏敬し、沈静化を祈る一方、田畑を豊かにしてくれることへの感謝という「共生」の考えが根底にある。
 宮家氏は、近年の登山ブームで山に親しむ人が増えたものの、山に対する古来の考えは薄れつつあると感じるという。
 一概に登山者をとがめるものではないと言及した上で、宮家氏は「山岳国家の日本で山と共生していくためには、一定の怖さや畏れを抱きながら接し続けることが大切ではないか」と話している。

■下山した人にアンケートしていれば…
 御嶽山の噴火では、被害状況の全容把握に向けた関係機関の連携や、登山届のあり方が課題として浮かび上がった。
「情報が欲しいのに、テレビの情報と変わらない」。9月27日の噴火から数日後、長野県木曽町役場の待機所に集まった家族らから不満が漏れ始めた。
  県の行方不明者数公表に先立ち、同町の地元消防は30日、「79人」という数字を出した。一方、県はこの数字を否定して「精査中」と繰り返した。
  登山者47人の死亡が確認された後の3日、県はようやく行方不明者数を16人と発表した。しかし、前日には同町が「19人」と発表しており、関係機関の連携不足が露呈した格好だ。 同町は3日午後に16人と訂正したが、原隆副町長は「公表が遅い。 本当の危機管理とは何かを県に考えてほしい」と注文を付けた。
 信州大の北沢秋司名誉教授(治山砂防学)は、下山者にアンケートせずに帰宅させたと指摘し、「情報がないため行政は状況を説明できず、自衛隊なども手探りで救助に当たらざるをえない」と問題視。
 下山者からの聞き取りで、山頂に残された登山者はある程度把握できると強調する。

■登山届の提出も徹底されず
 日程や氏名などを記す登山届の提出も徹底されていなかった。条例で登山届の提出を義務づけているのは剣岳富山県)、谷川岳群馬県)、北アルプス岐阜県、12月から)の3カ所のみ。  経験を積んだ登山者でも遭難の危険がある山で、事前審査で登山が認められないケースもある。
  富山県の担当者は「登山者の多い山での義務付けはそぐわない」とみるが、日本山岳ガイド協会の武川俊二常務理事(59)は「届け出なしでは遭難に気づかれないこともある」と述べ、任意ではあっても提出の習慣化を訴えている。(産経)