2014年と15年の経済成長率予測では、米国が2.1%・3.1%、ユーロ圏が0.8%・1.1%、日本が0.9%・1.1%となっている。リセッションさえ警戒される欧州や日本とは状況が違う。

メルケルは米国の尻馬に乗って行き過ぎた対ロシア制裁強化をするつもりはない。 口先介入に努めるだろう。 こんなメルケルにルー米財務長官は苛立つ。
・ルー米財務長官にしてみれば、「安全運転も良いが、ドイツ経済が減速傾向にあるのだから市場経済を意識した経済の舵取りをしてくれよ!」と言外に唱えている。
・欧州委の現在の予想では、ドイツの国内総生産(GDP)伸び率は2014年が1.6%、15年が2.0%。ただし制裁強化なら、エネルギー価格上昇などの影響により、成長率は押し下げられる。
・日欧中の経済が弱く、相対的な米経済の強さに変化はないため、ドル高・円安トレンドは続くとの見方も依然多いが、強気一辺倒だった市場心理に動揺が見え出した。
経済協力開発機構OECD)が9月に公表した2014年と15年の経済成長率予測では、
米国が2.1%・3.1%、
ユーロ圏が0.8%・1.1%、
日本が0.9%・1.1%
となっている。リセッションさえ警戒される欧州や日本とは状況が違う。
・成長支援は「とりわけ、対外収支が黒字で、財政が世界の調整を支援できる柔軟な状況である国に課された義務だ」とルー長官は強調した。
・欧州の国々は経済の生産性を改善する必要があると指摘した。
日本については、日銀がデフレサイクルを解消しつつあり、日本は慎重に財政健全化のペースを調整する必要があるとの見解を示した。
 また、中国は市場が決定する為替相場への移行と金融部門リスクへの対処が不可欠と語った。










〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
ドイツ経済の減速ぶりがヤリ玉にあがった    
古澤襄  2014.10.11
 米ワシントンで20カ国・地域(G20)財務相中央銀行総裁会議が開かれたが、欧州経済の悪化焦点とくにドイツ経済の減速ぶりがヤリ玉にあがった。
 その先頭に立ったのはルー米財務長官。 世界の需要押し上げに注力するよう世界各国の首脳に求めたが、そのうえで、成長支援は「とりわけ、対外収支が黒字で、財政が世界の調整を支援できる柔軟な状況である国に課された義務だ」と名指しこそしないが、ドイツを念頭に置いた発言をしている。
  欧州経済の低迷をよそにして好調を誇っていた米国経済に陰りが顕著となっているのは各種経済指標でも明らかになった。 ルー米財務長官の焦りがこの発言の裏にある。
 ドイツ経済の舵取りはアンゲラ・ドロテア・メルケル首相なのは言うまでもない。 メルケルは旧西ドイツのハンブルク生まれだが、生後数週間で両親と一緒に旧東ドイツに移住している。  そこで旧東ドイツで必修科目だったロシア語に堪能となり、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とは通訳なしで電話会談を頻繁に行う仲となった。
 この経歴を無視することは出来ない。 旧西ドイツは敗戦国でありながら米ソ冷戦の中で米国の後押しで急速な経済発展を遂げた。
 1990年の冷戦崩壊による東西ドイツの統合は国際政治上の大きな朗報だが、旧西ドイツにとっては旧東ドイツに対する援助コストの増大など大きなお荷物を抱え込むことになった。
  旧東ドイツの出身と言っていいメルケルは、この課題の解決つまり経済再建に努めて、新生ドイツを米国、中国、日本に次ぐ世界第四の経済大国にして、EU加盟国で最大の経済力を持つ国に育てあげている。
 この過程でロシア経済との繋がりを強化してロシア域内におけるドイツの輸出は米国を寄せ付けないトップの座を占めてきた。
 メルケルが強かなのはウクライナ情勢でロシアに対する経済制裁を声高に唱える米国に同調していることである。 ロシアに義理立てして米国と衝突する気はサラサラない。
 ドイツ経済を支えているのは輸出である。 ロシアだけが輸出対象国ではないし、また欧州経済が悪化してユーロ安となっているが、マルクからユーロになったドイツはユーロ安で輸出の利益を集中的にチャッカリ受けている。
 もちろんメルケルは米国の尻馬に乗って行き過ぎた対ロシア制裁強化をするつもりはない。 口先介入に努めるのだろう。 こんなメルケルにルー米財務長官は苛立つのであろう。
 メルケルの経済路線は輸出振興だが、同時に行き過ぎた市場経済には慎重で、むしろ経済再建策、いうなら日本の財務省と似た路線といえる。  ルー米財務長官にしてみれば安全運転も良いが、ドイツ経済が減速傾向にあるのだから市場経済を意識した経済の舵取りをしてくれよ!と言外に唱えている。
 このあたりの微妙な思惑のすれ違いをベルリンからロイターが、独誌シュテルンの論評を引用して伝えている。

<[ベルリン 9日 ロイター]独誌シュテルンは、欧州連合(EU)がウクライナをめぐりロシアへの制裁を強化した場合、ドイツの成長率は今年は最大0.9%ポイント、2015年は0.3%ポイント押し下げられる可能性があると報じた。
  欧州委員会は、制裁を強化した場合に域内諸国に及ぶ影響について報告書をまとめた。同誌は、報告書のドイツに関する記述を引用した。
  欧州委の現在の予想では、ドイツの国内総生産(GDP)伸び率は2014年が1.6%、15年が2.0%。ただし制裁強化なら、エネルギー価格上昇などの影響により、成長率は押し下げられる、という。
  欧州はロシア産天然ガスに大きく依存しているため、メルケル独首相らは、対ロシア制裁強化を声高に主張することは控えざるを得ない。
 シュテルン誌によると、制裁が高級品の禁輸など小幅なものであれば、今年と来年のドイツ成長率は、0.1%ポイント押し下げられるにとどまると見られる。 しかし、ロシア産の石油や天然ガスの輸入が禁止されるなど、強力な制裁を科す場合は、影響はより深刻になるという。>
 ドイツにとっては、ドイツ経済に介入したルー発言は頭にくるのであろう。 ショイブレ財務相は、欧州にとって必要なことは経済改革であって「小切手を切る」ことではないと切り返している。

■米「1人勝ち」に陰り ロイターが指摘
[東京 2日 ロイター]円安・株高相場に急ブレーキがかかった。米経済ピークアウトの可能性を示唆するマクロ指標が発表され、米経済「1人勝ち」ストーリーに陰りが出てきたとの思惑が広がったためだ。
  株式や新興国通貨などが売られ「安全資産」の国債などが買われるリスクオフが加速。 日欧中の経済が弱く、相対的な米経済の強さに変化はないため、ドル高・円安トレンドは続くとの見方も依然多いが、強気一辺倒だった市場心理に動揺が見え出した。
<先行指標の勢い減速>
  米国では、これまでも弱い経済指標はみられた。だが、それは住宅関連や雇用の一部の指標が多く、生産や消費などのデータは好調さが維持されていたことで、いずれ住宅や雇用も改善していくという予想が根強かった。 しかし、足元で目立ち始めているのは、生産や消費のピークアウトを示唆する指標だ。
  9月米ISM製造業景気指数は、6月以来の低水準となる56.6にとどまった。 50が分岐点なので、依然として高いレベルにあるが、市場の警戒感を強めたのは新規受注が66.7から60.0に急低下したことだ。 先行指標の急減速に「拡大傾向は持続したものの、モメンタム(勢い)はピークを過ぎた可能性がある」(外資系証券エコノミスト)との見方が広がった。
  消費も弱い。 9月米コンファレンス・ボード(CB)消費者信頼感指数が5月以来の低水準となったうえ、9月米自動車販売も年率(季節調整済み)1643万台と前月の1750万台から減少。  夏場にかけて見られた勢いは鈍りつつあると受け止められた。
  三菱東京UFJ銀行・シニアマーケットエコノミストの鈴木敏之氏は「米経済がこれから落ちていくということではない。ただ、2009年から始まった景気回復期がもう5年になり、成熟度も増している。先行き、米経済の勢いがこれ以上増すわけではなさそうだ」との見方を示す。
  欧州や中国、日本の経済は勢いが鈍い一方、米国は堅調として、ここまで投資家の多くはドル高ストーリーを描いてきた。  しかし、ピークアウトを示唆する経済指標が出始め、ストーリーの見直しを迫られている。 ドル調整が始まったとの見立てるなら「円安が唯一の拠り所だった」(国内証券)といわれる日本株が反落基調に入っても、不思議ではない。

貿易赤字背景にドル/円に底堅さも>
 ただ、米経済は相対的にみれば堅調だ。9月米消費者信頼感指数(確報値)が14カ月ぶりの高水準となるなど、堅調なデータも多い。
  経済協力開発機構OECD)が9月に公表した2014年と15年の経済成長率予測では、米国が2.1%・3.1%、ユーロ圏が0.8%・1.1%、日本が0.9%・1.1%となっている。リセッションさえ警戒される欧州や日本とは状況が違う。
 さらにドル/円に関しては、日本側の理由もある。 貿易収支で月間1兆円近い赤字が出続けるなか、輸入勢のドル買いが相場を支えている。  「需給構造が以前とはまったく変わったようだ。ドル/円に下方硬直性が出てきた」と野村信託銀行・資金為替部次長の網蔵秀樹氏は指摘する。
  2日の市場でドル/円は一時、米国内でエボラ出血熱感染者が確認されたことをきっかけとするドル売りもあって、108円半ばまで下落したものの、一時は109円台を回復するなど底堅さもみせている。
 みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は「放っておけば円安」という基本シナリオは変わらないと話す。
 「明日発表の米雇用統計の内容が良ければ、110円割れの機会は、当分来ないかもしれない、そのぐらい(ドルに強気の)気概をもって円の先安観を見通すべきだ」と独特の表現で強気の見通しを展開。105円台まで下落する展開は想定しておらず、年内は106─113円のレンジを見ていると語った。
  一方、米債市場ではリスクオフの動きを背景に「安全資産」である米国債に資金が流れ込んでいる。10年米国債 利回りは2.3%台まで低下。金融政策の変化に敏感に反応する2年債 や5年債 の利回りも低下した。 米金利上昇はドル高シナリオの要諦だけに警戒感もある。

調整の範囲内か、本格的なリスクオフの始まりか──3日発表の9月米雇用統計後の市場動向が、年内の相場の分水嶺となりそうだ。(ロイター)
■G20、欧州経済の悪化焦点 各国から対応求める声
[ワシントン 10日 ロイター]米ワシントンで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相中央銀行総裁会議は10日閉幕した。会議では欧州経済の悪化が焦点となり、各国からは景気後退(リセッション)回避に向け、当局に対応を求める声が相次いだ。
  欧州経済をめぐっては、最大のけん引国であるドイツの減速ぶりが鮮明になっている。 今週発表された8月の貿易統計によると、輸出は前月比5.8%減と2009年1月以来の大幅な落ち込みとなった。 同じく今週発表された鉱工業受注や鉱工業生産でも大幅な減少がみられ、一部ではドイツが景気後退(リセッション)に陥るのではないかとも懸念されている。
IMFは今週発表した「世界経済見通し」のなかで、ユーロ圏が今後1年間でデフレに陥る確率を30%、景気後退となる可能性は40%との予想を示した。
 こうしたなか、欧州の当局者はこうした懸念の払しょくに追われた。
 ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のダイセルブルーム議長はロイターに対し、今後開かれるユーロ圏会合で、域内の成長を後押しするための新たな戦略を提案する考えを表明。  具体的には、金融政策、財政政策、構造改革、投資計画の4分野において、各政策の連携強化を求めるとした。
 オズボーン英財務相は記者団に対し、「足元、英国経済はもちろん世界経済にとっても最大のリスクは、ユーロ圏経済が景気後退(リセッション)に陥り、危機に逆戻りすることだ」と話した。
  一方、ドイツのショイブレ財務相は、欧州にとって必要なことは経済改革であって「小切手を切る」ことではないとの立場を繰り返し表明した。
■米財務長官、通貨安競争の回避と世界の需要押し上げを要請
[ワシントン 10日 ロイター]ルー米財務長官は10日、世界の需要押し上げに注力するよう世界各国の首脳に求めた。
 さらに、景気や財政状況が堅調な国々に対し、成長支援に向け一段の措置を講じるよう要請した。 また為替相場について、主要国は競争的な通貨切り下げを回避するという合意を順守する必要があると訴えた。
 ルー長官は国際通貨金融委員会IMFC)への声明で 「弱い需要の伸びは、多くの国で見られる慢性的な経済不振の元凶だ」と指摘した。
 そのうえで、成長支援は「とりわけ、対外収支が黒字で、財政が世界の調整を支援できる柔軟な状況である国に課された義務だ」と強調した。ドイツを念頭に置いた発言とみられる。
 その一方で「より力強い成長を実現するために需要と供給面の改革を同時に進める必要がある」として、欧州の国々は経済の生産性を改善する必要があると指摘した。
  日本については、日銀がデフレサイクルを解消しつつあり、日本は慎重に財政健全化のペースを調整する必要があるとの見解を示した。
 また、中国は市場が決定する為替相場への移行と金融部門リスクへの対処が不可欠と語った。(ロイター)