・アジアピボットはこれから本格化する。

・世界を動かすのは「攻撃的現実主義」であり、したがって米中はかならず衝突するとジョン・J・ミアシャイマー著『大国政治の悲劇』は予告。
・中国の覇権掌握のための軍事活動を阻止するため、ベトナム、フィリピンを筆頭にアメリカと連動する反作用が強く生まれる。
・「日本、南北朝鮮、インド、露西亜ベトナムなどが、アメリカと協力して反中同盟を形成する可能性が高い」
・「国家が地域覇権を達成すると、その次にはあらたな狙いが出てくる。それは『他の大国が地域覇権を達成するのを阻止する』というものだ」
・アセアン諸国や中国の周辺国(ラオスカンボジア、韓国は別だが)は、中国に対してその陣営に与するより、米国に近づくことによってバランスを得ようとする。
・アジアピボットはこれから本格化する。






〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
書評「大国政治の悲劇」    
宮崎正弘  2014.11.03
■地域覇権を露骨に倣う中国とその周辺国の対峙状況から次を予測 
中国の覇権を阻止するためアメリカと連動する反作用が強く生まれる
<ジョン・J・ミアシャイマー著、奥山貞司訳『大国政治の悲劇』(五月書房)>
  国際政治、とりわけ地政学の泰斗、ミアシャイマー教授(シカゴ大学)は、オフェンシブ・リアリズム(攻撃的現実主義)の提唱者として知られ、世界的な評判をとった作品をこれまでにも幾冊か発表してきた。
 この本は最新作『THE TRAGEDY OF GREAT POWER POLITICS』の日本語訳である。
  主眼は南シナ海を巡ってアセアンと、その背後にある日本、米国、そして豪、インドとの軍事的緊張の度合いがますます激化しているが、世界を動かすのは「攻撃的現実主義」なのであり、したがって米中はかならず衝突すると予告する衝撃の本である。
 すなわち南シナ海から西太平洋へと「地域覇権を露骨に倣う中国とその周辺国の対峙状況を判断すれば、次の中国の覇権掌握のための軍事活動を阻止するため、ベトナム、フィリピンを筆頭にアメリカと連動する反作用が強く生まれるのである。
「中国が次の十年間に見事な経済成長を続けていけば、強力な軍事組織を築き挙げ、アメリカが西半球で行ったようなやり方でアジアを支配しようとする」と予測できるが、その根拠は単純で「覇者になることが自国の生き残りを最も確実にしてくれる」からであるとミアシャイマー教授は定義する。
 しかし、その結果、米中の軍拡競争が激化し、「アジアに於ける北京の近隣諸国にとっても中国の力を封じこめておくことはそもそも国益にかなう」(中略)「日本、南北朝鮮、インド、露西亜ベトナムなどが、アメリカと協力して反中同盟を形成する可能性が高い」と予測した。
  中国はそれを知っているからこそ、ロシアと南北朝鮮にくさびを打ち込み、反中同盟形成の流れを阻止しようといていることも明白で、他方ではインドにも揺さぶりをかけて、巨額の経済援助、ニコニコ外交を展開し、むしろ中国主導の上海協力機構へ引きづりこもうと躍起となる。
  基本的に「国家が地域覇権を達成すると、その次にはあらたな狙いが出てくることになる。それは『他の大国が地域覇権を達成するのを阻止する』というものだ」(484p)。
 したがってアセアン諸国や中国の周辺国(ラオスカンボジア、韓国は別だが)は、中国に対してその陣営に与するより、米国に近づくことによってバランスを得ようとするだろう。
 まさにオバマの提唱したアジアピボットはこれから本格化するのである。