・もともと中国庶民は政府など信じていない!「屈辱に満ち溢れた顔」だ!

中国当局は経済ファンダメンタルズを反映しないこの経済現象に常識を超える政策で対応した。
・当局は中国大手証券会社21社に上場投資信託約2・4兆円分を購入させ、上海総合指数が4500に戻るまで保有株の売却を禁止した。
・なりふり構わぬ市場介入をやった!
・現代中国漂流の原点は1840年のアヘン戦争、ここから歴史的屈辱が始まったからだ。
・1851年の太平天国の乱、1861年の洋務運動、日清戦争敗北後の変法運動、1900年の義和団事件、1911年の辛亥革命に至っても、あの屈辱感は克服されなかったからだ。
・多数の犠牲者を生んだ大躍進政策文化大革命も「歴史的屈辱」だ!
・学生らは1989年、天安門で立ち上がったが、権力側は民主化運動を徹底的に弾圧した。「屈辱の歴史」は変わらない。
・上海株バブルが「崩壊」した。「屈辱に満ち溢れた歴史」だ!
・中国の権力者は豊かな経済力の多くを政治改革ではなく、軍事大国化に投入した。
中国経済が真の「グローバル」市場に成長することもないだろう!
・もともと中国庶民は政府など信じていない!「屈辱に満ち溢れた顔」だ!
 







〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
2015.7.28 05:01更新 【正論】「バブル崩壊」で中国は変わるか
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・宮家邦彦

 上海株式市場で再びバブルが「崩壊」した。 今中国では一体何が起きているのか。中国当局は経済ファンダメンタルズを反映しないこの経済現象に常識を超える政策で対応した。7月4日、当局は中国大手証券会社21社に上場投資信託約2・4兆円分を購入させ、上海総合指数が4500に戻るまで保有株の売却を禁止した。
 これで驚いてはいけない。市場関係情報の統制、悪意ある空売りへの懲罰、新規株式公開の承認凍結、大量保有株主による株式売買の半年間停止など、およそ世界に通用しない株価下落阻止策を総動員しているのだ。このなりふり構わぬ市場介入の功罪はエコノミストに任せることとし、本稿ではこの「バブル再崩壊」が、中国内政に及ぼす影響について考えたい。
≪権力と民衆の異なったこだわり≫
 現代中国指導部の行動指針は経済だけでなく、軍事・政治・歴史を含め総合的に分析すべし、というのが筆者の持論だ。
 現代中国漂流の原点は1840年のアヘン戦争、ここから歴史的屈辱が始まったからだ。爾後(じご)の中国史はこの不名誉を克服しようとする中国人の絶望的努力の歴史でもあったが、不幸にもこの努力はいまだ報われていない。1851年の太平天国の乱、1861年の洋務運動、日清戦争敗北後の変法運動、1900年の義和団事件、1911年の辛亥革命に至っても、あの屈辱感は克服されなかったからだ。
 興味深いことに、これらの「下から」の民衆蜂起と「上から」の改革運動には一定のパターンがある。それは権力側の中華至上主義と、民衆側の対政府不信・財富への妄信に近いこだわりだ。
 近代中国では、権力エリート層がほぼ一貫して既得権確保に耽溺(たんでき)し一般民衆を見下し続けた。
 これに対し、庶民側も政府・権力者を全く信頼せず、自己防衛のため近親者と財富のみを信じ続けてきた。
 現在の最高権力者である中国共産党指導部もこの歴史を受け継いでいる。1949年の共産革命は民衆の財富へのこだわりを不自然なまでに戒め、非現実的な共産主義型経済政策を続けた。その結果が、多数の犠牲者を生んだ大躍進政策文化大革命だ。
≪乖離する政治分析と経済分析≫
 建国から30年後の1979年以降、今度はトウ小平氏が民衆の財富へのこだわりを巧みに利用した。 権力側は対外的に中華の野心を隠しつつ、資本主義の導入で国力を蓄える「韜光養晦(とうこうようかい)」政策を進めた。
 財富のみを信ずる庶民はこれを大いに歓迎したが、権力側は彼らに政治的自由を認めなかった。
 これを不満とした学生らは1989年、天安門で立ち上がったが、権力側は民主化運動を徹底的に弾圧した。アヘン戦争以来の、中華を志向する権力者と、財富を妄信する民衆側との相互関係は、結局変わらなかったのだ。
 さらに、改革開放政策導入から30年、中国では2ケタの経済成長が続いた。2009年以降も中国は4兆元の大型景気刺激策でリーマン・ショックを乗り切り、胡錦濤総書記から習近平総書記への政権交代も順調に進んだ。誰もが、近代史上初めて中国が政治・経済ともに順風満帆、安定していると信じていた。その矢先に上海株バブルが「崩壊」した。従来の権力・民衆関係は変化するだろうか。
 これまで中国共産党の統治に関する政治分析と経済分析には常に乖離(かいり)があった。
 共産革命後最初の30年間、中国経済は停滞・疲弊したが、大方の予想に反し共産党指導の政治体制は崩壊しなかった。
 続く1979年からの30年間、中国経済が順調に成長する中、西側諸国の多くは中国での民主化・政治改革を期待した。
 しかし、中国の権力者は豊かな経済力の多くを政治改革ではなく、軍事大国化に投入した。またしても、経済分析と政治分析が一致することはなかった。それでは習総書記率いる共産党政権はどこへ行くのか。
共産党統治は揺らがない≫
 まずは今回の「バブル崩壊」の経済分析から始める。当局の異常ともいえる「市場介入」は短期的に奏功するだろう。
 もちろん世界の市場関係者はこうした禁じ手を決して認めない。
 中国経済が真の「グローバル」市場に成長することもないだろう。だが、中国権力者の関心はあくまで目先の面子(めんつ)と短期的安定だ。そのためなら如何(いか)なる強権発動も辞さないだろう。
 では政治的影響はどうか。今回の株バブルで踊った中国人の大半は、やはり財富のみを妄信する庶民だった。
 今回の株投資も彼らにとってはひとつのばくちに過ぎないし、もともと庶民は政府など信じていない。
 ある程度の抗議暴動は起きるだろうが、その程度で中国の伝統的な権力者・庶民関係が変わるとは思えない。
 要するに、中国共産党の統治が揺らぐとの分析は希望的観測に過ぎない、ということだ。独裁政権が一時的な経済的繁栄で民主化することはない。同様に、一時的な経済的困窮によって崩壊することもない。やはり、中国共産党の統治は当面続くと見るべきだろう。(みやけ くにひこ)