・冷戦勝利の歴史観こそが、安倍談話に付け加えられるべき最後の部分であった!

・20世紀の世界史で、ナチズムとスターリニズムという「二つの怪物」によって、人類がいかに苦しめられたかを無視することはできない。
ユダヤ人数百万人を迫害・殺戮(さつりく)したナチズムは人類史の大きな汚点だ。
・平時に数千万人の自国民を死亡させたスターリンソ連毛沢東の中国、死者は数百万人だが人口比ではむしろ多いポル・ポトカンボジア金正日北朝鮮もまた同様だ!
・日ソ中立条約を一方的に破って参戦したスターリンソ連が、北方領土を武力で強奪し、60万人のわが国軍人をシベリアに強制連行して6万人の犠牲者が出たこと、満州で150万の邦人に対して行った強姦、暴行、強盗、殺害はどれも当時の国際法に明白に違反する侵略であった!
・「21世紀構想懇談会」が、日本の侵略行為のみを議論しながら、日本が被害にあったソ連の侵略については、議題にもしないというおかしな姿勢をとった責任は極めて大きい!
・米国は当初、東アジアの秩序は「中華民国」をリーダーにして維持し、日本は非武装の弱小国にしておくという占領政策を採った。
・それが間違いだと分かるのがソ連をバックにして、毛沢東が1949年に共産中国を建国し、1950年に金日成が南進し、朝鮮戦争を起こしたときからだ!
ソ連をリーダーとする共産陣営こそが世界革命を目指す「力による現状変更勢力」だと分かった米国は、日本を東アジアにおける価値観を共有する同盟国として遅まきながら認識し、再軍備を求めた!
社会党共産党など左派勢力や朝日新聞などを拠点とするいわゆる「進歩的知識人」の多くは当初から自衛隊の存在を「違憲」だと主張し、ソ連ぬきの講和を「片面講和」だと非難し、日米安保条約を「米国の戦争に巻き込まれる」と反対した。
・また、左派勢力は、偏った主張を通すために「民主主義の否定」だという乱暴な理屈をつけて、国会にデモをかけるというやり口は、現在でも変わらない。 全く進歩していない!
・冷戦勝利の歴史観こそが、安倍談話に付け加えられるべき最後の部分であった!












〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
2015.9.3 05:00更新 【正論】
冷戦勝利の歴史観で現代史語れ 東京基督教大学教授・西岡力

 この8月に多くのマスコミが行った戦後70年キャンペーンに強い違和感を覚え続けた。私は本年2月24日本欄で、なぜ、70年前の敗戦にだけこだわるのか、「第3次世界大戦」とも言うべき冷戦において、わが国は自由民主主義陣営に加わって、24年前、ソ連が崩壊したときに勝利したという観点に立つべきだと主張した。
 20世紀の世界史を回顧するとき、ナチズムとスターリニズムという「二つの怪物」によって、人類がいかに苦しめられたかを無視することはできない。

≪なぜソ連の侵略に言及しないか≫
 ユダヤ人数百万人を迫害・殺戮(さつりく)したナチズムは人類史の大きな汚点だが、平時に数千万人の自国民を死亡させたスターリンソ連毛沢東の中国、死者は数百万人だが人口比ではむしろ多いポル・ポトカンボジアと、金正日北朝鮮もまた同様である。
 「侵略」を議論するなら、日ソ中立条約を一方的に破って参戦したスターリンソ連が、北方領土を武力で強奪し、60万人のわが国軍人をシベリアに強制連行して6万人の犠牲者が出たこと、満州で150万の邦人に対して行った強姦、暴行、強盗、殺害はどれも当時の国際法に明白に違反する侵略であった。
 安倍晋三首相の戦後70年談話のための「21世紀構想懇談会」が、日本の侵略行為のみを議論しながら、日本が被害にあったソ連の侵略については、議題にもしないというおかしな姿勢をとった責任は大きい。
 同懇談会の報告書は、安倍談話とは違って納得できない部分が多い。
 特に、日韓関係に関して調査もせずに謝罪し、その後も事実関係に踏み込んだ反論をしないで自らゴールポストを下げた外務省の失敗を指摘しないことを、後日きちんと批判したいと思っている。
 戦後の日本の歩みについての議論でも、日本が自然に自由民主主義の側に立ったかのような見方が多くのマスコミの主流になっている点が不満だ。
 米国は当初、東アジアの秩序は「中華民国」をリーダーにして維持し、日本は非武装の弱小国にしておくという占領政策を採った。それが間違いだと分かるのがソ連をバックにして、毛沢東が1949年に共産中国を建国し、1950年に金日成が南進し、朝鮮戦争を起こしたときからだ。

≪変わらない左翼のやり口≫
 ソ連をリーダーとする共産陣営こそが世界革命を目指す「力による現状変更勢力」だと分かった米国は、日本を東アジアにおける価値観を共有する同盟国として認識し、再軍備を求めた。
 日本もソ連とは講和せず、米国をはじめとする自由主義諸国とだけ講和する道を選び、その上で、米国と同盟を結んで独立回復後も米国軍の駐屯を続けさせ、冷戦を戦う一翼を担った。
 日本が独立を回復した1952年4月は、朝鮮戦争のさなかだった。翌53年7月、休戦が成立するまで、日本は米軍を中心とする国連軍の後方基地として間接的に共産軍と戦った。
 北朝鮮を支持する勢力は、日本国内で米軍基地に火炎瓶を投げるなど、共産軍のための闘争をつづけていた。 日本の再武装は当初、国内の共産勢力の武装蜂起を抑えることを第一の目標としていた。
 これらは国内で社会党共産党など左派勢力や朝日新聞などを拠点とするいわゆる「進歩的知識人」の大反対のなかでなされたわが国の選択だった。その選択は正しかった。彼らの多くは当初から自衛隊の存在を「違憲」だと主張し、ソ連ぬきの講和を「片面講和」だと非難し、日米安保条約を「米国の戦争に巻き込まれる」と反対した。
 また、自分たちの偏った主張を通すために「民主主義の否定」だという乱暴な理屈をつけて、国会にデモをかけるというやり口は、現在までも変わらない。

≪今も続く東アジアでの戦い≫
 1991年にソ連が崩壊したとき、日本は冷戦勝利陣営の一員として自由と繁栄を享受していた。中国も毛沢東の死後、80年代に計画経済を捨てて市場経済を採用することにより、体制競争では敗北した。ただし、政治面では一党独裁下での抑圧政策や対外膨張主義は変わっていない。北朝鮮ではいまだに3代世襲独裁政権の下で人民への人権侵害と外国人拉致は国連によって「人道に対する罪」と規定されるに至っている。その上、日本を射程に入れた弾道ミサイルを実戦配備している。
 日本は70年前、ナチズムのドイツと同盟を結ぶという間違いを犯したが、敗戦後は自由民主主義陣営に加わり、共産主義勢力と対峙してきた。 ソ連崩壊後の今も東アジアでその戦いは続いている。 中国と北朝鮮の2大全体主義政権の自由化を実現することこそが、冷戦の最終勝利だ。

 この冷戦勝利の歴史観こそが、安倍首相談話に付け加えられるべき最後の部分ではなかったかと私は思っている。
 来年はソ連崩壊25年すなわち「第1次冷戦勝利25周年」だ。いまから、それに備えて現代史の議論を深めていきたい。(にしおか つとむ)