・「リニアの大阪延伸前倒し」と 「北陸新幹線の大阪延伸前倒し」をコンセッション方式を用い、財政資金を使わずに開通を実現

・安全保障論議に、経済論議が埋没してみえる。
増税によって消費マインドは負の影響を受け、そこに対外要因も加わって、第2四半期の成長率は再びマイナスとなった。
・生活必需品とくに食料品はダウンサイジングの実質の値上げが行われている。生鮮野菜や果実は軒並み高騰している。
・国民にとってはマインドのみでなく実質的な財布上において消費は節約傾向にならざるを得ない。 
・2017年4月の消費税値上げは景気の腰折れに作用するので、延期すべきなのはあきらかだ!
需給ギャップ率はマイナス2%に中国発の影響を考慮すると、何らかの補正予算は避けられない。
・国家プロジェクトで構造改革型の補正予算を準備する。財源は、為替差益でえた外国為替資金特別会計の資金(まさにアベノミクスの成果)を活用する。
・「リニアの大阪延伸前倒し」と 「北陸新幹線の大阪延伸前倒し」を
コンセッション方式を用い、財政資金を使わずに開通を実現することだ。
・鉄道建設支援機構(前鉄建公団)が名古屋・大阪間を建設する。そしてその運営権を、JRに売却する。その際、工夫によって、JRのバランスシートを大きくせず、実質延べ払いのような形でコンセッションを実現することが可能。
規制緩和などの構造改革で民間の投資機会を増やせ! 大胆なインフラ投資方策を打ち出すことで、需要を強化し、いまこそ経済政策への「リセット感」を高めよ!








〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
2015.9.11 05:01更新   【正論】
経済政策へ「リセット」のときだ 慶応大学教授・竹中平蔵

 アベノミクスは、着実な成果を挙げているが、その成果を見えにくくするようないくつかの要因が、内外で働いている。 重要なのは、今の国会で安保関連法案の処理を確実に終え、経済政策への「リセット感」を示すことだ。
 そのための具体策として、短期には環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)対応型の建設的な補正予算を準備すること、そして中長期には国が所有する施設の運営権を民間に移すコンセッション方式を活用し、2027年にリニア新幹線を(名古屋までではなく)大阪まで開通させるナショナル・プロジェクトの実施を提言したい。

≪求められる政策的な工夫≫
 成果を見えにくくする要因として、まず中国経済の混乱が挙げられる。ドルベースでみた中国の国内総生産(GDP)は日本の2倍強、アメリカの6割に達する。また貿易額の面で中国は世界1位、輸入額で世界2位の地位を占める。金融面の影響もさることながら、実物経済の悪化を通じた日本および世界経済への影響は相当に大きいと考えておく必要がある。
 国内的にも二つの要因がアベノミクスの成果を見えにくくしている。一つは安全保障論議に、経済論議が埋没してみえることだ。 6月末には今年度の骨太方針と成長戦略改訂版が決定されているが、メディアにおける取り上げ方は安保論議に影響されて極めて限定的だった。
 さらにもう一点、昨年の消費税引き上げのマイナス影響が続いている点だ。消費増税は前政権下で決められたことであり、アベノミクスの内容とは異なるものだ。 しかし増税によって消費マインドは負の影響を受け、そこに対外要因も加わって、第2四半期の成長率は再びマイナスとなった。
 以上のような要因を考慮して、いまいくつかの政策的な工夫が求められている。まず重要なのは、経済論議に明確な「リセット感」を出すことだ。一つの手段は内閣改造であろう。斬新な人材の登用は、市場の期待変化を生み出す。
 その上で政策の中身として、短期的には中国の経済悪化への対応が求められる。
 現状において日本の需給ギャップ率はマイナス1・7%と考えられている(内閣府推計)。そこに中国発の影響があることを考慮すると、何らかの補正予算は避けられなくなるだろう。
 しかしこれが、来年の参院選を意識した政治的なバラマキにならないよう、建設的な財政論議を行う必要がある。具体的にTPP交渉がやがて纏(まと)まることを前提にしたうえで、構造改革型の補正予算を準備することだ。その際の財源としては、為替差益によって生じた外国為替資金特別会計の資金(まさにアベノミクスの成果)を活用することが考えられてよい。
 加えてナショナル・プロジェクト型の思い切った政策を提言したい。2027年に、東京・名古屋間のリニア新幹線が完成する計画だ。東海道新幹線が開通から51年を経過し老朽化が懸念されること、海岸線を走る新幹線には大災害時のリスクがあることなどを考えると、リニア新幹線の構想には、それなりの意義がある。
 しかし名古屋までの開通では、供給サイドにもたらす効果は極めて限定的だ。大阪まで開通してはじめて、本来の効果が期待できる。大阪・東京がリニアによって60分強で結ばれれば、人口7200万人の世界最大のメガ・リージョンが生まれることになる。
 元来イノベーションは、さまざまな人材や企業の「結合」によってもたらされるものだ。現状の計画では、2045年に大阪まで開通することになっているが、これを一気に早めることが日本のイノベーション力強化につながる。
 ≪構造改革で投資機会を増やせ≫
 こうした際に必ず問題になるのが財源だ。そこで考えられる新手法が、名古屋・大阪間についてコンセッション方式を用い、財政資金を使わずに開通を実現することだ。具体的に、鉄道建設支援機構(前鉄建公団)が名古屋・大阪間を建設する。そしてその運営権を、JRに売却する。その際、いくつかの工夫をすることによって、JRのバランスシートを大きくすることなく、実質延べ払いのような形でコンセッションを実現することが可能と考えられる。
このような政策は、グローバル経済の潮流から見ても正当性が高い。いま世界的に、デフレ圧力が高まっている。その背景に、投資機会が減少しているため世界が「長期停滞」(セキュラー・スタグネイション)に陥る危険のあることが、ハーバード大学のサマーズ教授らによって指摘されてきた。
 これを克服するために、まず規制緩和などの構造改革で民間の投資機会を増やすことが求められる。アベノミクスの成長戦略は、まさにこれに当たる。同時に、供給サイドを強化するようなインフラ投資が期待されているのだ。
 こうした大胆な方策を打ち出すことで、いまこそ経済政策への「リセット感」を高めることを期待したい。(たけなか へいぞう)