・ 英王室まで動かしたイギリスの試みは果たして成功するのだろうか。

・大部分のイギリス国民は敗戦国家にも劣らない生活苦に見舞われていた。
労働党政権が誕生したのは、イギリスの戦後政治の必然ではないかと思うようになった。
・日本では庶民の家にもアルミサッシュの窓枠が当たり前なのに、イギリスではアルミサッシュがないのは、どういうわけか?
・七つの海を支配した大英帝国が崩壊して、この超大国の没落は衝撃的だった。
・イギリスはこの失地回復のために、アメリカの不興を買ってでも中国との接近政策に舵を切ろうととしている。
・ 英王室まで動かしたイギリスの試みは果たして成功するのだろうか。











〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
たそがれの大英帝国はどこへいく   
古沢襄   2015.11.01
 マーガレット・サッチャーが登場する前にロンドンに行った。戦勝国イギリスの姿をみたいと思っていたが、私が見たイギリスは戦敗国日本にも及びつかない惨めな社会であった。
 ポンドは下落し、西ドイツ・マルクが欧州の基軸通貨になったというのは、日本にいても分かっていたが、何故そうなったのか?  労働党政権の政策失敗というのが、一般的な解説だったが、やはりイギリスの現地でみなければ軽々な解説をするわけにいかない。
世は米ソ冷戦の最中にあった。アメリカは同じアングロサクソンの同盟国を助けることよりも、冷戦の最前線に立つ西ドイツの支援に国力を傾注し、西ドイツは奇跡的な復興をとげていた。
朝、ロンドンの街を散策したら、公園で老人たちがすることもなく、惨めな姿をさらしている。第二次世界大戦で戦った兵士たちであろう。
 あの戦争でイギリスも耐えがたい傷を負っていた。一部のものは戦勝国の栄誉を謳歌したのであろうが、大部分のイギリス国民は敗戦国家にも劣らない生活苦に見舞われていた。労働党政権が誕生したのは、イギリスの戦後政治の必然ではないかと思うようになった。

 ロンドンで超一流のホテルに宿泊したが、夜になると木造の窓枠から吹き込む冷たい風に悩まされた。日本では庶民の家にもアルミサッシュの窓枠が当たり前なのに、イギリスではアルミサッシュがないのは、どういうわけか?
 ロンドンの地下鉄に乗った。地下鉄のエスカレーターに乗ったら、木造のエスカレーター。よほど木造が好きな国民性だと皮肉を飛ばしたくなる。
 ロイター幹部と会食した時に、相手の心証に気を遣いながら、やはり疑問をぶつけた。
「イギリス国民は技術の進歩を軽視する傾向がある」
「米ソ冷戦の中で兄弟国アメリカはイギリスが直面して課題を助ける余裕がない」
 ロイター幹部は多くを語りたがらないが、それだけに老大国イギリスがかかえる問題の深刻さが窺えた。

七つの海を支配した大英帝国が崩壊して、かつての植民地インドの独立などカナダ、オーストラリアなどが大英帝国の支配から離脱していったのが、イギリスの衰退を招いた根本原因であるのは、英国史をみるうえで必須の知識だろうが、それにしてもこの超大国の没落は衝撃的だった。
 いまのイギリスはこの失地回復のために、アメリカの不興を買ってでも中国との接近政策に舵を切ろうととしている。
 次期首相の有力候補といわれるオズボーン財務相が中心だが、アメリカ離れは新たな問題となる。
英王室まで動かしたイギリスの試みは果たして成功するのだろうか。