・いったん崩れた習主席の威信回復は難しく、今後は政権基盤が弱まっていくだけだろう。

南シナ海問題などに関する米中間の溝はよりいっそう深まり、米国の習近平主席への失望感が一気に広がった。
・訪米の結果は散々であった。習氏が唱える「新型大国関係」に対してオバマ政権は完全無視の姿勢を貫き、習主席の「片思い」はまったく相手にされなかった。
・9月29日、王毅外相がメディアに登場し「習主席のリーダーシップにより、米中新型大国関係が強化された」と嘘を語った。
・中国政府は公然と捏造(ねつぞう)を行い「訪米大成功」と吹聴していた。
・習のメンツは丸つぶれとなって「大国指導者」としての威信が地に落ちるから捏造した。
・習の権威失墜を防ぐために、政権下の宣伝機関は「訪米大成功」の嘘を貫いたが、問題は、米海軍の南シナ海派遣の一件によってこの嘘が一気にばれてしまった。
・習の虚像が一気に崩れてしまった結果、彼はただの「裸の王様」となった。
・いったん崩れた習主席の威信回復は難しく、今後は政権基盤が弱まっていくだけだろう。













〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
習近平氏はただの「裸の王様」   
石平   2015.11.05
■米イージス艦派遣で「虚像」は崩壊した 窮地の習政権の「余命」は?
  先月27日、米海軍のイージス艦南シナ海の、中国の人工島周辺海域を航行した。 中国政府は「中国に対する深刻な政治的挑発だ」と強く反発したが、米軍の画期的な行動は、実は外交面だけでなく、中国の国内政治にも多大なインパクトを与えている。
  話は9月下旬の米中首脳会談にさかのぼる。この会談が双方にとって大失敗であったことは周知の通りだ。 南シナ海問題などに関する米中間の溝はよりいっそう深まり、米国の習近平主席への失望感が一気に広がった。
  過去数年間、習主席は米国とのあらゆる外交交渉において自らが提唱する「新型大国関係構築」を売り込もうとしていた。 「対立せず、衝突せず」を趣旨とするこのスローガンは「習近平外交」の一枚看板となっているが、訪米前日の人民日報1面では、習主席は米国側との新型大国関係構築を「大いに前進させよう」と意気込んだ。
 しかし訪米の結果は散々であった。習氏が唱える「新型大国関係」に対してオバマ政権は完全無視の姿勢を貫き、習主席の「片思い」はまったく相手にされなかった。
 その時点で習主席の対米外交はすでに失敗に終わっているが、中国政府と官製メディアはその直後からむしろ、「習主席訪米大成功」の宣伝キャンペーンを始めた。
 まずは9月26日、人民日報が1面から3面までの紙面を費やして首脳会談を大きく取り上げ、49項目の「習主席訪米成果」を羅列して、筆頭に「新型大国関係構築の米中合意」を挙げた。
  同27日、中央テレビ局は名物番組の「焦点訪談」で「習主席の知恵が米国側の反響を起こし、米中が新型大国関係の継続に合意した」と自賛した。 同29日、今度は王毅外相がメディアに登場し「習主席のリーダーシップにより、米中新型大国関係が強化された」と語った。
 この異様な光景は世界外交史上前代未聞の茶番だった。
 米中首脳が「新型大国関係構築」に合意した事実はまったくなかったにもかかわらず、中国政府は公然と捏造(ねつぞう)を行い「訪米大成功」と吹聴していたのである。
 それはもちろん、ひたすら国内向けのプロパガンダである。習主席訪米失敗の事実を国民の目から覆い隠すためにはそうするしかなかった。「新型大国関係構築」がご破算となったことが国民に知られていれば、習氏のメンツは丸つぶれとなって「大国指導者」としての威信が地に落ちるからだ。
 まさに習氏の権威失墜を防ぐために、政権下の宣伝機関は「訪米大成功」の嘘を貫いたが、問題は、米海軍の南シナ海派遣の一件によってこの嘘が一気にばれてしまったことである。

 オバマ政権が中国に対して「深刻な政治的挑発」を行ったことで、習主席訪米失敗の事実は明々白々なものとなり、米中両国が「新型大国関係構築に合意した」という嘘はつじつまが合わなくなった。しかも、米海軍の「領海侵犯」に対して有効な対抗措置が取れなかった習政権への「弱腰批判」が広がることも予想できよう。
  今まで、習主席はいわば「大国の強い指導者」を演じてみせることで国民の一部の支持を勝ち取り、党内の権力基盤を固めてきたが、その虚像が一気に崩れてしまった結果、彼はただの「裸の王様」となった。
 いったん崩れた習主席の威信回復は難しく、今後は政権基盤が弱まっていくだろう。
 反腐敗運動で追い詰められている党内派閥が習主席の外交上の大失敗に乗じて「倒習運動」を展開してくる可能性も十分にあろう。

1962年のキューバ危機の時、敗退を喫した旧ソ連フルシチョフ書記長はわずか2年後に失脚した。今、米軍の果敢な行動によって窮地に立たされた習政権の余命はいかほどだろうか。