・日本に必要なのはアジアの国々を牽引(けんいん)していく覚悟だ。海の平和を構築するのは日本であることを肝に銘じたい。

東シナ海は中国漁民による乱獲の海と化している。
日中漁業協定があり、東シナ海上に日中両国が互いに自国の漁船を管理し漁業を行う暫定措置水域を設定し、漁獲量を決めている。
・2015年期の同水域内での漁獲量上限目標値は中国が約166万トンなのに対し、日本は約11万トンで15倍もの開きがある。
・漁船数も中国の1万7500隻、日本はわずか800隻に過ぎない。中国の勝手な要求に日本は押し切られているのだ。
・中国漁船は、日本海から北海道沖の日本の排他的経済水域ぎりぎりまで進出し、魚を獲り尽くす勢いだ。この漁船団は、時に海上民兵として動き出す。
・中国漁船団に怯(おび)えるのは日本だけではない。フィリピンやベトナムも切実な問題をかかえている。
・2015年、沖縄海域に頻繁に現れた中国の海洋調査船は、潜水艦の航行に影響する深層海流のデータを取得するとともに、銅などの鉱物資源のサンプルを採取したようだ。
・安倍首相は、対中戦略において「海における法の支配の3原則」の徹底を改めて訴えた。
・「国家は国際法に基づいた主張をすべきである」「主張を通すために力や威圧を用いない」「紛争解決には平和的収拾を徹底する」という内容で、大国が力を用いて海洋の秩序を変更する動きに歯止めをかけ、紛争は国際的な司法機関によって解決すべきだ、というものだ。
・日本に必要なのはアジアの国々を牽引(けんいん)していく覚悟だ。海の平和を構築するのは日本であることを肝に銘じたい。

















〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
2015.12.23 05:01更新 【正論】
海の平和構築は日本の使命だ 東海大学教授・山田吉彦

 古来、日本に迫り来る危機は海を越えて押し寄せる。しかし、平和ボケした日本人はこれまで「海の守り」の重要性を忘れてしまっていた。
≪脅威増す中国の海洋進出≫
 尖閣諸島周辺には中国の公船が恒常的に居座り、島を奪い、東シナ海全体を手中に収めようとしている。また、東シナ海は中国漁民による乱獲の海と化している。
 日本と中国との間では日中漁業協定があり、東シナ海上に日中両国が互いに自国の漁船を管理し漁業を行う暫定措置水域を設定し、漁獲量を決めている。その2015年期の同水域内での漁獲量上限目標値は中国が約166万トンなのに対し、日本は約11万トンで15倍もの開きがある。漁船数も中国の1万7500隻、日本はわずか800隻に過ぎない。中国の勝手な要求に日本は押し切られているのが実態なのだ。
 中国漁船は、日本海から北海道沖の日本の排他的経済水域ぎりぎりまで進出し、魚を獲り尽くす勢いだ。この漁船団は、時に海上民兵として動き出す。
 中国漁船団に怯(おび)えるのは日本だけではない。フィリピンやベトナムも切実な問題をかかえている。

 中国の海上警備機関や海軍は、大量の漁船を南シナ海に送り出し乱獲を進めるとともに、「漁民の保護」という名目で周辺国と管轄権の主張が重なる海域に強引に軍事拠点を造ってきた。
 不審な中国船によるベトナム漁船への襲撃事件が頻発しており、昨年はベトナム沖で強引に石油掘削調査を行い、制止を求めるベトナムの公船に中国の警備船が衝突する事件を起こした。
 中国の海底資源獲得に関する動きからも目が離せない。東シナ海のガス田開発のために16カ所ものプラットホームが建設され、軍事利用が懸念されている。今年、沖縄海域に頻繁に現れた中国の海洋調査船は、潜水艦の航行に影響する深層海流のデータを取得するとともに、銅などの鉱物資源のサンプルを採取していたようだ。
 中国の公船と民間船が連携した海洋進出は、アジア全体の脅威となっている。

≪アジア各国に高まる不満≫
 こうした情勢下で、安倍晋三政権は海洋安全保障の強化に動き始めた。9月には安保関連法が成立し、日本が国際平和に積極的に関与していく姿勢を内外に示した。10月には米イージス駆逐艦が、南シナ海で中国が領土と主張する人工島12カイリ内の海域を航行したことについて、安倍首相は「国際法にのっとった行動であると理解している」と述べ、支持を表明した。
 11月にマレーシアで開かれた東南アジア諸国連合ASEAN)と日、米、中など18カ国の首脳による東アジア首脳会議(EAS)では、日本が各国に海洋協力の提案を行い、地域の安定に貢献する意思を明確にした。
 このなかで安倍首相は、対中戦略において「海における法の支配の3原則」の徹底を改めて訴えた。これは「国家は国際法に基づいた主張をすべきである」「主張を通すために力や威圧を用いない」「紛争解決には平和的収拾を徹底する」という内容で、大国が力を用いて海洋の秩序を変更する動きに歯止めをかけ、紛争は国際的な司法機関によって解決すべきだ、というものだ。
 実は、この前段として8月にアジア各国の海洋政策の専門家が東京に集まり、会合が開かれた。その話し合いで、冒頭から各国の中国への不満が表出した。
 マレーシアが「中国の領海の主張は、国際法に反する行為だ」と口火を切ると、フィリピンは人工島の造成の違法性に言及し、インドネシア南シナ海での中国の密漁の抑止を求めた。そして日本を中心とした「海洋協力体制の構築」を急ぐよう求めたのである。中国は口をつぐむしかなかった。
≪海洋協力のフレームワークを≫
 EASでは、日本がアジアにおける海洋協力のリーダーに押し上げられる形になった。これは一貫して国際法に基づいた海洋管理の必要性を訴えた安倍首相の外交戦略の成果である。
 各国が日本を支持する背景には、海賊対策をはじめとして15年にわたり、海の平和と安全に寄与してきた日本に対する信頼がある。採択された「海洋協力推進に関するEAS声明」では、優先分野として海洋協力が位置付けられ、各国の海上警備力の向上などが目標とされた。
 日本が今後、果たすべき役割は多い。まずアジアの国々と連携して、中国が南シナ海での領有権主張の根拠とする「九段線」の撤回を求めることだ。国際司法機関に一斉に訴えることも必要だろう。そのためには各国が国際海洋法を理解し、国際社会を納得させる理論武装を強化することが求められる。そして、国際法を意にも介さない中国を従わせる、新たな「海洋協力のフレームワーク」を作り上げるのである。
 日本に必要なのはアジアの国々を牽引(けんいん)していく覚悟だ。海の平和を構築するのは日本であることを肝に銘じたい。(やまだ よしひこ)