・電力自由化で、「送配電」について新規参入者にとってシステムをいかに使い勝手のいいものにするか、規制当局のイニシアティブが必要になるとは皮肉なモノだが、それが競争環境整備の第一歩だ!

電力自由化のホントとウソをしっかり見極めよう!
アメリカや韓国などと比べて2倍程度も高い。
・「そういう仕組みになっていません。停電したら、太陽光で発電しても家では使えません」
・農業をやっていて小規模の水車がたくさんあるので、そこで小さな水力発電をして、地域に電力を配れないか? 最終的にはできるが、いろいろと細かな規制が多く、結局、停電時には使えないことになってしまった。
・細かな規制が多く、人のやる気をそいでしまう!
・「送配電」は地域独占になっていて、そこが電力自由化でメリットが出るか出ないかの大きなポイントだ!
・送配電を握っているところが意地悪をすれば、発電会社も小売電気会社も困ってしまって、自由化の果実はなくなる。
・新規参入する小売電気事業者と送配電事業者を結ぶ基幹システムが顧客情報や料金計算などを瞬時にやりとりする必要がある。
・4月の電力小売り自由化にシステム開発が間に合わない可能性すらある。
・今回の電力自由化では、システム開発のプロジェクトマネージャーも誰だかわからず、電力自由化のスケジュールがまず頭ごなしに与えられて、それに異議を挟むことも許されずにシステム開発しているようにみえる。
システム開発は超専門的な分野なので、こうした構図は残念ながら随所でよく見られるものだ。
電力自由化で、「送配電」について新規参入者にとってシステムをいかに使い勝手のいいものにするか、規制当局のイニシアティブが必要になるとは皮肉なモノだが、それが競争環境整備の第一歩だ!









〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
電力自由化のウソに騙されるな
2016年4月から電力小売りの全面自由化が始まる。異業種参入によるセット料金のメニューも続々と登場し、どのプランが一番お得なのか、家庭向け電力をめぐる「戦国時代」の到来に話題も尽きない。我が家の電気代は本当に安くなるのか。電力自由化のホントとウソをしっかり見極めよう。

電気料金はまだまだ下がる 本当の電力自由化はこれからだ
高橋洋一嘉悦大学教授)

 4月からの電力小売り自由化が秒読み段階になってきた。自由化に向けて新規事業者が現状よりも安い電気料金を打ち出しているが、それでも東電より数%安い程度である。
 まだ、アメリカや韓国などと比べて2倍程度と高いが、自由化の第一歩としてはまずまずだろう。今後、電力料金をさらに引き下げるには何が必要であろうか。
 ここで、電力の自由化をおさらいしておこう。
 電力事業は、発電事業、送配電事業、小売電気事業の三つから成り立っている。既存電力会社はこの3事業をすべて行い、地域独占になっている。電力の自由化は、発電事業と小売電気事業に新規参入を認めるものである。
 発電事業には製鉄・製紙メーカーなどがLNG、石炭火力発電などで新規参入し、小売電気事業にはガス会社、通信会社、住宅メーカーなどの多様な業者が新規参入する。
 なお、送配電事業では地域独占は残る。関東でいえば、送配電事業は東電の独占である。

 話はやや脱線するが、我が家では太陽光発電をしている。太陽光発電の設備を屋上に設置しただけであるが、そのとき素朴な期待があった。
 何かというと、「もし停電しても、太陽光発電していれば、ウチだけは電力が使える」というものだ。
 太陽光発電の仕組みは、屋上で太陽光で「発電」して、それを既存の電線で「送電」する。 日中ではウチの発電量がウチの消費量を上回るので、その分が「送電」される。  夜中はウチの発電量はないので、ウチの消費量はもっぱら電力会社からの「送電」に依存している。
 毎月、電力会社に支払う電気料金は、電力会社から「送電」される分か、電力会社へ「送電」するものを引いた残りである。
 いうなれば、ウチも小さな「発電会社」ともいえる。  だから、停電しても日中のウチの消費量くらいはまかなえるし、余った分は蓄電しておけば、夜もなんとかなるだろうと考えたわけだ。
 ところが、太陽光メーカーの意見はつれなかった。
 「そういう仕組みになっていません。停電したら、太陽光で発電しても家では使えません」
 納得いかなかったので、いろいろと技術的なことを含めて聞いた。 
 メーカーのいいたいことは、そうした個人の事情を考慮すると(端的にいえば、「異物」が入ると)、電力の「品質」が下がるのでやめてくれ、そうした要望を受けるには「送電線」がネックになってしまうということらしい(興味のある方は「系統連系」とかをネットで調べればいい)。
 それでも、「ウチで発電してウチで使うには問題無いはず」と食い下がると、やっと停電時に一つのコンセントだけ使えるとなった。
 それ以上は話し合う時間の無駄使いなので、それで妥協した。

 ほかの人からも似たような話を聞いた。その方は、農業をやっていて小規模の水車がたくさんあるので、そこで小さな水力発電をして、地域に電力を配れないかという話だ。
 いい話だと思っていたら、最終的にはできるらしいのだが、いろいろと細かな規制が多く、人のやる気をそいでしまう。
 結局、停電時には使えないようになってしまったようだ。

 「発電」は比較的簡単である。問題は、それを「送電」するところだ。電力自由化でも、「送配電」は地域独占になっていて、そこが電力自由化でメリットが出るか出ないかの大きなポイントであると筆者は考えている。
 要するに、発電事業や小売電気事業に新規参入の事業者があっても、送配電事業者との連携がうまくいかないと、自由化のメリットはうまく発揮できない。
 はっきりいえば、送配電を握っているところが意地悪をすれば、発電会社も小売電気会社も困ってしまって、自由化の果実はなくなる。
 とりわけ、送配電事業者が、自社の送配電網を使い、発電所から各消費者に電気を送ることを託送供給というが、このシステムがうまく機能しないと不味い。
 具体的には、新規参入する小売電気事業者と送配電事業者を結ぶ基幹システムが顧客情報や料金計算などを瞬時にやりとりする必要がある。

 この点において、実はあまり知られていないが、このシステムで開発が遅れている。これでは、消費者が電気の購入先を切り替える際に不可欠な基幹システムがうまくワークせず、十分な競争が行われない可能性がある。ひょっとすると4月の電力小売り自由化にシステム開発が間に合わない可能性すらある。となると、はっきり言えば、これは競争以前の問題である。

 筆者はかつて郵政民営化を手がけて、そのシステム開発のプロジェクトマネージャーをやった経験がある。筆者の場合、郵政民営化の制度設計や法案作成も兼務していたので、その進捗状況をコントロールできたので、システム開発を最適な期間で行うことができた。
 システム開発が間に合わないときには、郵政民営化のスケジュール自体も変更した。

 ところが、今回の電力自由化では、システム開発のプロジェクトマネージャーも誰だかわからず、電力自由化のスケジュールがまず頭ごなしに与えられて、それに異議を挟むことも許されずにシステム開発しているようにみえる。システム開発は超専門的な分野なので、こうした構図は残念ながら随所でよく見られるものだ。

 東電にとって、新規参入業者を利するだけの託送供給の基幹システムをうまく作るインセンティブはない。システムの立場からみれば、いままで自社内のクローズド・システムだったのを、他社も使うオープン・システムに変えるようなものだろう。むしろ表だっていわないが、そこそこ文句を言われない程度のシステムを作り、それが多少障害になっても構わない、くらいにしか思わないだろう。

 電力自由化で、「送配電」について新規参入者にとってシステムをいかに使い勝手のいいものにするか、規制当局のイニシアティブが必要になるとは皮肉なモノだが、それが競争環境整備の第一歩である。