紙の書物は絶滅するか?

・難解な本は売れない。
・2015年、国内の書籍と雑誌を合わせた紙の出版物の販売金額が、過去最大の落ち込みを記録した。ネットや電子書籍の普及によって、本離れは、他の国でも進んでいる。
・『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』






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2016.2.22 05:03更新   【産経抄
もうすぐ絶滅するという紙の書物について 2月22日

 ベストセラーの法則を知りたい。出版関係者なら、誰もが抱く願望だろう。ただし、ベストセラーにならない法則なら、すでに存在している。たとえば、難解な本は売れない。
 ▼イタリア・ボローニャ大学教授のウンベルト・エーコさんが、初めての小説、『薔薇の名前』を書き上げたとき、編集者から言われたそうだ。「3000部以上売れることは、けっしてないでしょう」(『ベストセラーの世界史』フレデリック・ルヴィロワ著)。
 ▼14世紀の修道院を舞台に、修道僧が相次ぐ殺人事件の謎を解いていく物語である。単なる歴史ミステリーにとどまらない。エーコさんは、専門とする中世の神学についての学識をたっぷり盛り込んだ。
 ラテン語をはじめ、古い時代の言葉も飛び交っている。過激派によるテロの嵐が吹き荒れた、刊行当時のイタリアの政治状況も投影されている。題名についても、さまざまな解釈がある。
▼こんな難解な小説が、日本を含めた45カ国で翻訳され、売り上げは5000万部を超えている。ショーン・コネリーさん主演の映画もヒットした。その後も話題作を発表していた、エーコさんの訃報が届いた。84歳だった。
 ▼昨年、国内の書籍と雑誌を合わせた紙の出版物の販売金額が、過去最大の落ち込みを記録した。ネットや電子書籍の普及によって、本離れは、他の国でも進んでいるらしい。エーコさんには、『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』と題した、対談本がある。
 ▼もっとも原題の直訳は、「本から離れようったってそうはいかない」である。『薔薇の名前』のような「難解な名作」が、今後も読まれ続けていくのか。蔵書5万冊、書物への愛を語ってやまないエーコさんに聞いてみたかった。