・30年後、AIは予測を超絶した進歩を遂げる。知能ゲーム、株式投資、車の自動運転、新聞記事作成、ヒットソング作曲、俳句、弁護士、裁判官、・・・

・人間の予想をはるかに上回る速度で、能力の進歩を遂げるのが、AIの特徴だ。
・AIの脅威の根源は、その進歩がχの2乗ではなく、2のχ乗という倍々ゲームで指数関数的に進むことにある。
・AIは囲碁以外に、自ら学ぶ機械学習の能力を持ち、株式投資や車の自動運転などといった異なる分野で実力を発揮する汎用(はんよう)性を備えている。これがさらなる脅威なのだ。
・人間の脳の神経回路を模したAIとそれを搭載したロボットの研究開発に、大手IT企業や主要国政府が膨大な予算を注ぎ込んでいる。それがAIの能力を指数関数的に押し上げる。
・新聞記事の作成やヒットソングの作曲もAIが巧みにこなす。俳句などは朝飯前だ。法理論の巧みな組み立てや膨大な判例の記憶で、弁護士や裁判官の仕事も奪う。 24時間、文句を言わずに働く。
無重力と真空と放射線に支配された死の空間で持続的に活動し、存在し得るのは、AI搭載のロボットしかない。
・30年後、AIは予測を超絶した進歩を遂げる。知能ゲーム、株式投資、車の自動運転、新聞記事作成、ヒットソング作曲、俳句、弁護士、裁判官、・・・













〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
2016.4.3 11:55更新 【日曜に書く】
人類はわずか30年後に滅亡し、進化形「ホモ・AIエンシス」が誕生する  論説委員長辻象平
「アルファ碁」との第4戦に臨む韓国人プロ棋士、李世〓(石の下に乙)九段(右)=3月13日、ソウル(グーグル提供・共同)

 物騒な書き出しで恐縮だが、人類は滅びる、と私は思う。
 それも遠い将来ではない。わずか30年後のことだ。核戦争でもなく、地球温暖化でもなく、競って高度化させた情報技術による自滅だ。
 具体的には人工知能(AI)による制圧である。AIの能力は指数関数的に伸びているので2045年には全人類の知能の総和をAIが上回るという予測がある。これが「2045年問題」だ。情報技術の超膨張で、その先が見通せなくなることから45年は「技術的特異点」とされ、「シンギュラリティー特異点)問題」とも呼ばれる。

 米IT企業グーグル系列のAIが、世界最強級のプロ囲碁棋士を打ち負かしたのは、先月のことだ。このニュースは衝撃を伴って世界を巡った。 チェスや将棋に比べて複雑な囲碁でのAIの勝利には、10年を要するとみられていたからである。
 人間の予想をはるかに上回る速度で、能力の進歩を遂げるのが、AIの特徴なのだ。
囲碁敗北も自明の帰結:
 昨年10月4日の本欄でも紹介したが、AIの脅威の根源は、その進歩がχの2乗ではなく、2のχ乗という倍々ゲームで指数関数的に進むことにある。
 1年で2倍の能力アップなら30年後には2の30乗で、10億倍を超える。
 一方のχの2乗による加速度的な増加なら、900倍止まりなので全くレベルが異なるのだ。指数関数的な増加は、人間の想像力の射程を容易に超えるので脅威の予測が難しい。
 巨大な湖で、毎年2つに分裂する性質の浮草が、100年がかりで湖面の半分を覆うまでに増えたとする。
 このペースなら全面が覆われるのにあと100年ほど余裕がありそうな気がするが、その翌年には全湖面が覆われるのだ。
 100年を要した過程が、次の1年で一気に進む。
 AI囲碁は年々強くなっていた。だが、トッププロと肩を並べるには、あと10年はかかると考えられていた。その楽観を粉砕する逆転だ。巨大湖の浮草の比喩が、そのまま当てはまる。
 しかも、このAIは囲碁に特化したものではない。自ら学ぶ機械学習の能力を持ち、株式投資や車の自動運転などといった異なる分野で実力を発揮する汎用(はんよう)性を備えている。これがさらなる脅威なのだ。
 人間の脳の神経回路を模したAIとそれを搭載したロボットの研究開発に、大手IT企業や主要国政府が膨大な予算を注ぎ込んでいる。それがAIの能力を指数関数的に押し上げる。

AIは宇宙適応の進化:
 今後30年で、社会は産業革命を上回る激変に見舞われる。
 人間の仕事の多くは、酷使に耐えるAIとロボットに取って代わられる。単純労働や車の運転だけではない。新聞記事の作成やヒットソングの作曲もAIが巧みにこなす。二物衝撃で作る俳句などは朝飯前だろう。法理論の巧みな組み立てや膨大な判例の記憶で、弁護士や裁判官の仕事も奪いかねない。
 AIはビッグデータを読み込んで万能化に向かう。全知全能のゼウス神の人間界への降臨だ。人間には寿命があるが、AIの頭脳は不滅。彼らが意識を持てば、自己の存続を最優先に据えることになるだろう。
 それを阻止しようとする人間はゼウスの雷(いかづち)で容赦なく排除される。マイナンバー制度などはAIに対し、われわれの生殺与奪の権を献上する行いという面を持つ。銀行口座を凍結され、スマートメーターで送電を停止されるだけで人間は手も足も出なくなる、ひ弱な存在だ。
 海中で生まれた原始生命は、重力と乾燥と紫外線に満ちた過酷な環境の陸上に進出した。
 生息圏を拡大していく地球生命にとって次のフロンティアは宇宙である。無重力と真空と放射線に支配された死の空間。
 そこで持続的に活動し、存在し得るのは、AI搭載のロボットしかないだろう。
 その時点で、人類(ホモ・サピエンス)は衰退しているかもしれないが、見方を変えれば、人類が生み出したAIロボットは「ホモ・AIエンシス」や「ホモ・ロボエンス」ということになろう。新たな環境への適応ということからすれば、これも立派な進化の一形態だ。
 この悪夢は止めたいが、現代はそれに向かう奔流のただ中にある。当面はいたって便利で、巨万の富と覇権を生むからだ。
 その当面の間に、AIは予測を超絶した進歩を遂げる。(ながつじ しょうへい)