日本の防衛はまだまだアメリカ依存であって、安心できる領域には程遠い!

・安保環境は確かに50年前から見て激変した。中国の核戦力増強と海洋進出に伴う挑発的活動の拡大、北朝鮮の核・ミサイル開発など日本を取り巻く変化は大きい。 
現行条約は、日米による「相互の協力」が明記されたが、日本は依然として経済優先で、防衛のかなりの部分をアメリカに依存したまま自立はできないままだ。
東西冷戦は終結しいくらかの軌道修正が日米間で行われたが、日本は今、枕を高くして安閑と寝ていられる状況だろうか? 北や中国の軍事的膨張に対して、日本の防衛は安心できる領域にはまだ無い。


〜〜〜メディア報道の一部<参考>〜〜〜

【主張】日米安保改定50年 共同防衛の実効性高めよ
2010.6.22 03:02
■ 新たな脅威に日本も対抗力を

 日本の外交・安全保障の基軸である日米安全保障条約が現行条約に改定されてから23日で50年を迎える。にもかかわらず、昨年秋の政権交代で発足した民主党鳩山由紀夫前政権の下で米軍普天間飛行場移設問題は迷走を重ね、海上自衛隊によるインド洋上の補給支援は終結させられた。安保体制は大きく揺らぎ、日米同盟は空洞化の危機に立たされてしまった。

 その最大の理由は、日本の安全保障環境が21世紀に入って激変した現実を正しく認識していなかったことにあるといえよう。

◆安保環境が激変した
 北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の核戦力増強と海洋進出に伴う挑発的活動の拡大などは、50年前になかった新たな脅威だ。国際平和維持、復興支援、海賊対策など日本に期待される活動や貢献も安保改定時の想定をはるかに超える時代に入っている。 

 とりわけ、相対的な米国の力の低下がいわれる中で中国は「接近阻止」能力を高めつつある。アジア太平洋の米中の主導権争いは今後も激化するだろう。自由や民主主義の価値で結ばれた日米同盟の役割と重要性がかつてなく高まっている。そのことを強く認識しなければならないときである。

 現行条約と旧条約の最大の違いは、日米による「相互の協力」を明文化したことにある。安保改定をもって、日本は条約の文面上は自らの意思で地域の平和と安定をともに支える公共財となる選択を下したはずだった。

 60年の安保改定時、国会は「アンポ粉砕」を叫ぶデモと怒号に包まれ、90年代には同盟が「漂流」する危機にさらされた。そのつど安保体制を維持してこられたのは日米の政治指導者や官僚らの知恵と努力によるものだろう。

 冷戦終結と日米が仮想敵としてきた旧ソ連の消滅を受けて「日米安保再定義」(96年)が行われ、小泉純一郎政権下では「世界の中の日米同盟」を掲げてきた。

 イラクへの陸上自衛隊派遣による人道復興支援や、アフガニスタン支援のための海上自衛隊によるインド洋補給活動はそうした相互協力の一環だった。ミサイル防衛の展開も進められた。

 内閣府が3年ごとに行う世論調査によれば、「安保条約が日本の平和と安全に役立っている」との意見が76%(昨年1月)を占めている。日本の安全についても「現状通りに日米安保体制と自衛隊で日本を守る」という意見が77%にのぼり、安保体制と日米同盟は今や国民に定着した観がある。

 しかし、現実には「外交も安保もアメリカ任せ」という対米依存体質から抜け切れていないのが実態といわざるを得ない。世論調査に表れた数字も、自らを防衛する現実の努力や日米共同で担うべきリスクへの対処を怠っている現状の追認とみえなくもない。

 ◆米国依存体質の脱却を

 今後は集団的自衛権を行使できるようにすることや「米国頼み」に陥らないように、主体的な自主防衛努力が欠かせない。そのためには、同盟強化の一方で憲法改正の作業も必要になるだろう。

 テロとの戦いや海賊対策などの分野では、日本がもっと率先してリスクを負うべきだ。「世界の中の日米同盟」をめざしてきた流れを止めてはならない。

 問題は、鳩山政権と交代した菅直人政権にそうした正しい現実認識がそなわっているかにある。

 菅首相所信表明演説で「日米同盟を基軸」とし、「現実主義を基調とした外交」を進めると述べた。だが、菅氏が引用した「平和の代償」(故永井陽之助著)はあくまで1960〜70年代の「古い現実主義」ではないか。21世紀の新たな現実を踏まえた確かな構想とはいえまい。

 政府は日米合意に基づき8月末までに普天間移設先の詳細を決着させなければならず、11月には沖縄県知事選がある。移設をめぐる地元の理解が得られなければ、在日米軍再編や日米同盟の将来はさらに厳しい局面に置かれよう。

 鳩山氏がこだわった「常駐なき安保」論や、米海兵隊が沖縄に常駐することで担保される抑止力の意義などについて、菅氏は具体的な外交・安保政策に即してもっと語る必要がある。安保改定半世紀の節目を機に、共同防衛を実効性あるものにする努力が必要だ。

 それが直ちに問われるのは、主要国首脳会議(G8)に伴って開かれる日米首脳会談だ。首相は言葉だけでなく、日本の平和と繁栄が維持できる安全保障の基本政策を示す責務がある。