民主党は「強い経済、強い財政、強い社会保障」スローガンについてもっと丁寧な説明が要るのでは?

・三条 健です。
・菅政権のスローガン「強い経済、強い財政、強い社会保障」は実現すれば確かに立派だ! 昨年の衆議院選挙のマニフェスト政権交代を実現した。 投票した有権者民主党に大いに期待した。 ただし、その政権交代マニフェストは今や、殆どが崩れている。果たして新たなスローガンはどうだろうか?
そこで、痺れを切らしたか大田氏は「増税しても成長」の根拠を説明しろと主張している。
財政運営戦略では、10年先にようやくプライマリー(基礎的)収支を黒字化させる目標であって強いとは言えないし、「強い社会保障」の具体像は示されていない。
成長のエンジンに社会保障分野を充てると言い、これが「第三の道」としている。 増税社会保障分野(医療、介護、年金)に資金を回して成長のエンジンにするという意味のことを言っているようだ。
・どういう社会保障制度にするのか?を説明しないと、本当に成長に繋がるかどうか?が判らない。
民主党は「強い経済、強い財政、強い社会保障」スローガンについてもっと丁寧な説明が要るのでは?



〜〜〜メディア報道の一部<参考>〜〜〜
【正論】大田弘子 「増税しても成長」の根拠を示せ
2010.6.29 03:11
 「強い経済、強い財政、強い社会保障」という立派なスローガンが登場した。未曾有の高齢化を迎えるわが国が、これを現実のものにできれば、今後高齢化が急速に進むアジア諸国に対して先例となるモデルを提供できる。
 しかし、問題はいかにして実現するかだ。自信をもって掲げる菅首相には、どんな道筋が見えているのだろうか。「成長も実現し、社会保障もより強いものにし、財政も健全化していく」ということは、現実にどうすればいいのか。

≪来年度予算は組めるのか≫
 これがあり得ないほど難しいことは、最近発表された財政運営戦略と新成長戦略を見ただけでもよく分かる。

 財政運営戦略では、10年先にようやくプライマリー(基礎的)収支を黒字化させる目標になっており、決して「強い財政」ではない。しかも、当面3年間は、非現実的とすら言える前提にたっての推計だから、実現はあやうい。この戦略からは、来年度予算が組めるかどうかさえ見えてこない。「強い社会保障」の具体像は示されていないが、民主党マニフェストに掲げられている最低保障年金の創設だけでも、大幅な歳出増になる。このことを加味しただけで、財政は一段と厳しいものになるだろう。

 そして、「強い経済」との関係では、医療・介護という社会保障分野で需要と雇用をつくることが、成長の重要な柱になっている。10年間で、新規市場50兆円、新規雇用284万人が生まれるという。高齢化が進めば医療と介護の需要が増えるのは当然だし、ここが成長分野になり得ることはたしかだが、それにしても社会保障が成長のエンジンになるということがあり得るだろうか。

社会保障でさらに難易度増≫
 それには、両分野に参入する民間企業が高い収益をあげ、高い賃金を払えるようにならねばならない。

 強い経済と強い財政の両立だけでも相当に難しい課題なのだが、まだ、ここまでなら多くの国が目指していることだ。しかし、ここに社会保障の充実という第三の軸が加わったとたんに、難易度は一挙に上昇し、「超」がつくほどむずかしくなる。はたして解は存在するのだろうか。

 首相の発言や民主党マニフェストからその答えのありかを探ってみると、経済・財政・社会保障をともに強くするという三元連立方程式を解くカギは、「増税をすることで経済が成長する」という理論にあるようだ。

 増税をして強い財政をつくり、さらに増税を財源として社会保障サービスを増やせば、国民は安心してお金を消費に回すことができるようになり、経済が成長する、というシナリオである。「増税をしても使い道を間違えなければ経済は成長する」と、菅首相はたびたび口にしている。

 安定的な社会保障制度をつくることは、重要だ。毎年1兆円以上増えている社会保障費を賄うには、増税も必要だろう。しかし、社会保障費を増やすことで成長する、という甘いシナリオを信じることは、私には到底できない。

 社会保障分野で民間部門がよほど成長するのでない限り、増税分を政府がみずから支出して、それが経済成長に大きく貢献するなどということがあるのだろうか。医療や介護で、潜在的な需要が満たされずにいるのは、さまざまな規制や制度がじゃましているからであって、その改革が先決だ。

 今回示された試算では、新成長戦略どおり名目成長率3%で推移したとき、前述の財政目標を達成するには、2020年度で約14兆円の赤字を埋める必要があり、仮に消費税で増税すれば税率11%弱になることが示されている。

≪消費税10%の前提もあいまい≫
 しかし、この推計は、増税をして社会保障給付費を拡大させるという前提には立っていない。どういうメカニズムで、増税社会保障費拡大のセットが成長に結びつくのか、モデルでも示してほしいものである。

 増税が成長につながることを前提にシナリオを描くのなら、まずは、どんな社会保障制度であれば成長にプラスになるのかを具体的に示すべきだ。若い世代にとっても負担が過重にならず、かつ将来の給付を確実に約束できる社会保障制度の姿を示すべきだ。

 スローガンは、力強いほうがいい。経済と財政と社会保障を一体で改革することも大賛成だ。しかし、税率の根拠も曖昧(あいまい)なまま、消費税率を10%にすることで全体の帳尻があい、三元連立方程式の答えが見つかるような議論には無理がある。

 高らかなスローガンと消費税率10%の関係は、いまだ説明されていない。

 せっかく消費税を選挙の争点にすえるなら、せめて年金制度ひとつでいいから、現実的な公約がほしい。衆議院任期満了までのこの3年間に、団塊世代は65歳を超し、本格的な年金受給層になる。社会保障制度改革にはきわめて重要な3年間なのである。(おおた ひろこ)