民主党が 政権公約(マニフェスト)を余にも安易に変更可能なものと捉えているとすれば、これほど国民を愚弄しているものは無い!!

・三条 健です。 拓殖大学大学院教授の遠藤氏の言う「沈黙の螺旋(らせん)」説と 「アナウンスメント効果」は興味深い。
民主党の「V字回復」はこの説が当てはまっているのか。
民主党政権公約マニフェスト)を1年足らずで大幅に変更してしまった問題について、螺旋現象のなかで、あまり真面目に議論されてはいないのは大問題である。 政権公約マニフェスト)とは何か? 政党が何としても実行を守り行動する「確約の旗である」はずだ。
政権公約マニフェスト)を反省の総括も何も発表せず、覆すということは、
新たな参議院選挙における民主党政権公約マニフェスト)も いとも簡単に変更することに何の恥じらいも無い政党と考えるのが普通であろう。
民主党が 政権公約マニフェスト)を余にも安易に変更可能なものと捉えているとすれば、これほど国民を愚弄しているものは無い!!


〜〜〜メディア報道の一部<参考>〜〜〜

【正論】拓殖大学大学院教授・遠藤浩一 「勝ち馬」乗る安易さに流れるな
2010.7.2 03:15
40年ほど前にドイツの政治学エリザベート・ノエル=ノイマンが提起した「沈黙の螺旋(らせん)」という有名な仮説がある。

 人間は孤立への恐怖心と周囲の動向を把握する能力を併せ持っているため、自らの見解が少数派であると認知するや公の場での意見表明を抑制し、沈黙するようになる。他方、自分の意見が優勢であることを察知すると、嵩(かさ)にかかって自説を開陳する。

アナウンス効果はどう出るか≫
 このとき、マスメディアも「現状報告」のかたちで「多数意見」について重点的に報道するため、優勢と目された説はますます勢力を拡大し、劣勢と思われた説は一層孤立を深める。このように、実体以上に世論の極大化と極小化が進行する(かに見える)状況を、ノイマンは「沈黙の螺旋」と名付けたのである。

 この説に対しては批判もあるが、大衆社会の世論形成メカニズムの一面を照射しているとはいえるだろう。

 選挙における「勝ち馬志向」も、このメカニズムが働く一例として理解していい。その際大きな影響を及ぼすのが、世論調査や情勢分析などマスメディアによる「現状報告」である。事前の情勢報道が有権者の投票行動に与える影響を「アナウンスメント効果」と呼ぶが、「勝ち馬志向」はその一つである。今回の選挙でこれがどう出るのか、私は、従来の選挙以上に注目している。

 鳩山由紀夫氏と小沢一郎氏が退いたことで、それまで急下降していた民主党への支持率は一気に上昇に転じた。マスメディアはこの現状について「V字回復である」と報告しているが、ここでも「沈黙の螺旋」現象が生じていることを見落としてはなるまい。支持率の急回復という(優勢な)現象だけに目を奪われ、一連の党首交代が内包する深刻な問題についてはほとんど顧慮されることなく、参院選に突入してしまったのである。

≪「鳩山・小沢」退陣の爽快感≫
 管見によるならば、代表が交代しただけで民主党への支持率が回復した理由は、第1に鳩山・小沢両氏の退陣への爽快(そうかい)感であり、第2に自民党の政権復帰への抵抗感であって、必ずしも菅直人総理自身への積極的評価を意味するものとは考えられない。新総理の指導者としての適格性について十分吟味する時間が与えられないまま、参院選を迎えることになってしまったのは遺憾である。

 1年足らずで民主党政権公約マニフェスト)を大幅に変更してしまった問題についても、螺旋現象のなかで、あまり真面目に議論されてはいない。これも、遺憾である。

 現実路線への転換は結構だが、同一政党の公約がこんなに安易に変更されていいものか。マニフェストの大幅な改定を余儀なくされたというのは、要するに、政策が行き詰まったということである。菅氏はかつて「政策的に行き詰まったり、スキャンダルによって総理が内閣総辞職を決めた場合は、与党内で政権のたらいまわしをするのではなく、与党は次の総理候補を決めたうえで衆議院を解散し、野党も総理候補を明確にしたうえで総選挙に挑むべきだろう」(『大臣』)と述べ、同一政党内での「政権のたらいまわし」を厳しく批判したものである。

≪「V字回復」に目を奪われて≫
 政権が政策的に行き詰まり、政府・与党“2トップ”の金銭スキャンダルによって内閣総辞職という仕儀になったわけだから、菅氏年来の持論に従うならば、「与党は次の総理候補を決めたうえで衆議院を解散し、野党も総理候補を明確にしたうえで総選挙に挑むべき」であった。その際、会期延長を回避するなどという姑息(こそく)な手を使うのではなく、自らの理念と政策をしっかり示し、有権者にその是非を判断する時間を与えた上で、堂々と解散・総選挙に打って出るべきではなかったか。少なくともかつての菅氏はそう主張していた筈である。

 しかし、現下の螺旋現象はそうした言動の矛盾や問題点を吹き飛ばして、専ら「V字回復」だけに目を奪われている観がある。遺憾である。

 ところで「アナウンスメント効果」には2つの相反する反応がある。ひとつはすでに見た「勝ち馬志向」だが、もう1つは「判官贔屓(びいき)」とか「牽制(けんせい)的投票」と呼ばれる行動である。かつて自民党が政権に在った時代、「自民党優勢」と事前に報道されると、敢(あ)えて野党に投票して自民党を牽制するという行動が、無党派層を中心として見られた。

 公示直後に実施されたいくつかの世論調査では、早くも民主党の失速傾向が出ている。

 有権者は、「勝ち馬」に乗るべきか、それとも「牽制」すべきか、熟慮し始めているのかもしれない。彼らは「沈黙の螺旋」現象の中で、どのような判断をするのだろうか。政党・候補者以上に、有権者自身の資質が問われる選挙を迎えたのだと言わなければならない。(えんどう こういち)