南シナ海も東シナ海もシーレーンの確保に向け、米韓越との連携プレーができる程度の予算は組んでおくべきだ!

中国がいよいよ高圧的な軍事大国として動き出した。 中国はここ数年、対外的に自己主張を強める「富国強兵」国に変貌(へんぼう)した。
4月に、10隻の中国艦隊が沖縄本島宮古島間の宮古海峡を通って太平洋へ入り沖ノ鳥島周辺に航行、海上自衛隊の艦船に中国ヘリが異常接近する嫌がらせを受けている。

日本が来年度の防衛費1割カットに象徴される弱腰のため、益々、中国は高圧的な軍事大国としての態度ででてくるであろう。

米中の海軍は現在のところ、黄海南シナ海で勢力圏争いをしているが、近い将来、それが東シナ海に拡大する可能性は大きいと西原氏は見ているが、これは同感である。 南シナ海東シナ海シーレーンの確保に向け、米韓越との連携プレーができる程度の予算は組んでおくべきだ!


〜〜〜メディア報道の一部<参考>〜〜〜

【正論】平和・安全保障研究所理事長  西原正 
   高圧的軍事大国の挑発に牽制を
2010.8.24 03:19

 米中関係がこの5月末以降、急速に緊張の度を増している。日本の政治が内向きになり、外部の世界をまるで見ていないような状況の中で、東アジアの国際情勢は厳しくなりつつある。

≪5月以降、米中が非難の応酬≫
 中国は今年1月、オバマ米政権が台湾に武器を供与したことに抗議して、米中間の軍事交流を停止した。
 5月末北京で開いた第2回米中戦略経済対話では、中国国防部外事弁室副主任の関友飛少将が米国のウィラード太平洋軍司令官やグレッグソン国防次官補らを前に、「米国は覇権行動を繰り返し、戦略的同盟関係を構築して中国を包囲しようとしている」と米国を非難したという。

 6月3日、中国は、予定されたゲーツ米国防長官の訪中を時期尚早として拒絶したのである。

 翌4日始まったシンガポールでのアジア安全保障会議(通称シャングリラ会議)では、公開の場でゲーツ国防長官と馬暁天人民解放軍副参謀長が、対台湾武器供与、南シナ海における中国海軍の活動などに関して相当に強い言葉で議論を交わす場面があった。

 ついで中国は6月30日から1週間、黄海で大演習を実施した。これは、報道された米原子力空母ジョージ・ワシントン黄海入りを「他人の玄関先に踏み込む行為」と牽制(けんせい)したものであった。

 これに対し7月23日のハノイでのASEAN東南アジア諸国連合)地域フォーラム(ARF)でクリントン国務長官は、「南シナ海での航行の自由は国益に合致する」と、周辺関係国による多国間の紛争解決を支持する旨を述べた。出席していた中国の楊潔●外相は意表を突かれて猛反発をしたといわれる。

≪画期的な「越」との合同演習≫
 この米中対立の原因はいうまでもなく中国海軍の覇権的行動である。増大した経済力に後押しされ中国は、米海軍が自国の排他的経済水域EEZ)に入るのを阻止する戦略をとり始めた。2月に米国防総省が発表した『4年ごとの国防計画見直し』(QDR)、8月16日に発表された中国の軍事動向に関する年次報告書でも、東シナ海南シナ海での「接近阻止能力の向上」に言及した。

 米国もこれに対応する行動に出ている。8月5日、国防総省は数カ月以内に空母ジョージ・ワシントン黄海での米韓合同演習に参加するとの方針を明らかにした。
これは7月初旬、中国海軍が黄海で大規模軍事演習を行ったことへの対抗措置であった。黄海における米中の対立は韓国哨戒艦「天安」の爆沈をめぐる米韓対中国の亀裂を一層深刻にしている。今後の北朝鮮をめぐる6カ国協議の運営にも悪影響を与えそうだ。

 米側の行動はそれにとどまらない。8月初め、南シナ海ベトナムとの初めての合同海軍演習を1週間実施した。かつての敵国同士が合同演習するというのは画期的なことであった。そして、
8月8日、遠巻きに中国艦船が監視するなか、南シナ海西沙諸島周辺に停泊中の米空母がベトナム軍高官を艦上に招いたのである。
10日にはベトナム中部のダナン港に米駆逐艦が入港した。これらも、7月26日から中国海軍が大規模の実弾演習を南シナ海で行ったことへの対抗であった。

尖閣東京湾近くも要警戒≫
 中国はここ数年、対外的に自己主張を強める「富国強兵」国に変貌(へんぼう)した。
 2008年夏に北京五輪を開催し、同年秋のリーマンショックを早期に克服した。その勢いをかって昨年4月、人民解放軍海軍の創立60周年、10月の建国60周年記念行事を開催、さらに開催中の上海万博と、民族意識の高揚行事を展開している。現在の米中間の新しい緊張はこうした中国の民族高揚の中で起きている。

 日本も4月に、10隻の中国艦隊が沖縄本島宮古島間の宮古海峡を通って太平洋へ入り沖ノ鳥島周辺に航行、海上自衛隊の艦船に中国ヘリが異常接近する嫌がらせを受けている。米中の海軍は現在のところ、黄海南シナ海で勢力圏争いをしているが、近い将来、それが東シナ海に拡大する可能性は大きい。

 中国が琉球列島以西を「核心的利益」と宣言して尖閣諸島を占拠することや、尖閣諸島の周辺で大規模な軍事演習をすることを予測しておくべきである。また米空母の黄海での演習に対抗して、中国が東京湾近くの公海で演習をすることも考えられる。

 中国がいよいよ高圧的な軍事大国として動き出した。これに対して日本が来年度の防衛費1割カットに象徴される弱腰では、中国にも、また米国やアジア諸国にもバカにされるだけである。
 年末に策定される新防衛大綱は、日本のシーレーンへの脅威を直視したものであるべきだ。中国に対し有利な勢力均衡を維持するための日米韓の連携、日米越の連携などが必要である。同時に、米第7艦隊の行動を強力に支援し、韓国やベトナムのように中国に対抗する米国との海軍合同演習を東シナ海で行うことも検討すべきだ。これは挑発ではない。中国の挑発への牽制である。(にしはら まさし)

●=簾の广を厂に、兼を虎に