35年後、「裸の子羊」は 日本のみか?

・三条 健です。
・「新防衛計画の大綱」は35年先の予測が含まれていることをどれほどの国民が認識しているか?
その中核要素は、中国、ロシア、そして日米同盟関係ということだ!
新防衛計画の大綱は、中露両国と日米同盟関係のいかなるシナリオにも対応できるように、わが国の防衛戦略と公約数的防衛力の整備を方向付けるものということだ!
・35年先の日本の安全と生存は今、決まるという。
非核政策を貫くわが国は、核を持った中、露、北朝鮮に囲まれて、日米同盟も弱体化し、「もの言えぬ日本」になっているかもしれない。
日本以外は皆、核保有国となっているシナリオの方が圧倒的に確率が高い。 核廃絶は声には出しているのはアメリカのみで、中国、ロシア、北朝鮮の実態としては核保有のまま35年は過ぎるであろう。
そのとき、35年後、「裸の子羊」は日本のみか?


〜〜〜メディア報道の一部<参考>〜〜〜

【正論】帝京大学教授・志方俊之  35年先の日本防衛、今、決まる
2010.9.6 02:53

 政治が政局で動くことはある程度、やむを得まい。二大政党体制が定着している米国でも、大統領選がある4年ごとに本来の政治に空白が生じるとされる。

 まして民主党政権は野党時代が長かったから、若干の迷走なら大目にも見よう。保守から革新へ変わったのだから社会政策が変わるのは当然で、これに伴い財政政策なども変わって当然だ。

◆安全保障めぐる迷走深刻

 深刻なのはしかし、国家安全保障に関する迷走だ。「迷走する」というより、「すくむ」あるいは「先送りする」という方が当たっている。今、普天間問題よりも心配なのは、防衛計画の大綱を本年末までに決定するという課題だ。本来なら昨年度内に策定される予定だったものが、政権交代を口実に1年間、延期された。

 今年2月に、当時の鳩山由紀夫首相の私的諮問機関として、「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(佐藤茂雄座長)が発足した。同懇談会は、この8月27日に最終報告を菅直人首相に提出した。だが、その内容がどの程度、採用されるかは定かではない。

 安倍晋三政権当時、やはり有識者による「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(柳井俊二座長)が招集され、報告書が次の福田康夫首相に提出されたが、一顧だにされず棚上げとなった。今回の最終報告書についても、どう扱われるのか心配である。

 本来、安全保障に関する取り組みの本質は、保守だろうと革新だろうと、大変わりはしない。その第一は相手があることだ。経済、社会など他の政策と違い、その基本ですら、自分の国の主義や都合だけでは決められない。グローバルかつ相対的視野に立って決めなければならず、選択の余地は局限される。

 本質の第二は、安全保障に関する「対応力」を培うには長い年月を要することだ。対応力の主体である現在の陸海空三自衛隊の能力、陸自主力戦車も海自のイージス艦も空自の航空機F15も、すべてはほぼ35年前に構想を練って整備に着手したものだ。

 民主党政権下で定められるであろう防衛計画の大綱と、それに伴う防衛力整備計画は、35年先の2045年ごろの日本の対応力を決める土台となるものだ。

 本質の第三は不確実性だ。防衛力整備に必要な35年先のグローバルな戦略環境は、はるか霧の彼方にある。どんなに洞察力があっても、それを的確に予測できる政治家や学者はほとんどいまい。今から35年前の1975年といえば、サイゴン陥落でベトナム戦争が終わりを告げた年である。その当時に、2010年のグローバルな戦略環境を言い当てていた者など、果たしていただろうか。

普天間よりも防衛計画大綱

 普天間飛行場の移設問題は、地元との間で政治的に解決する選択肢しかない。政治決着の後に残るのは土木工事であり、工期を短くする方策は他にもある。

 むしろ、「新防衛計画の大綱」を今年末までに策定することの方が、民主党政権には、もっと重要だ。たとえ1年であっても新大綱の策定を遅らせることのツケは、35年先に何年もの遅れとなって顕在化し、安全保障に関するわが国の選択の幅は極端に狭められてしまうだろう。

 35年先という遠い将来の戦略環境を予測するプロセスではまず、「これだけはあり得ない変化」を消去法的に予測範囲からそぎ落としていき、そして、「あり得る戦略環境」の範囲を残す。

 次いで、その範囲内でいくつかの代表的なシナリオを想定、「各シナリオへの対応戦略」を考える以外にない。そうして導き出された複数の対応戦略に共通して必要な「公約数的対応力(防衛力)」を見積もることになる。

◆3要素は中露と日米同盟

 35年先のわが国を取り巻く戦略環境を占うとき、中核となる要素は、大国になっているであろう中国と、再生しているロシア、そして日米同盟関係だろう。

 35年先に中露両国がどうなっているかは不透明で、「甲(民主化した大国)」、「乙(軍事覇権を追い求める大国)」、「丙(分裂し破綻(はたん)する大国)」という3通りのシナリオが考えられる。両国がこのうち、われわれが望んでいる「甲」のシナリオをたどってくれるとは限らない。加えて、日米同盟関係の先行きも、強化、維持、弱体化、破綻の可能性があって、今の調子では心許ない。

 新防衛計画の大綱は、中露両国と日米同盟関係のいかなるシナリオにも対応できるように、わが国の防衛戦略と公約数的防衛力の整備を方向付けるものだ。その初年度となる来年度の防衛予算は、先を見据えた防衛力整備の発射台ともいえる重要性を持つ。

 予算の聖域なき一律削減は、日本を危うくする。35年先の日本の安全と生存は今、決まる。非核政策を貫くわが国は、核を持った中、露、北朝鮮に囲まれて、日米同盟も弱体化し、「もの言えぬ日本」になっているかもしれない。(しかた としゆき)