・ 北朝鮮が先に実質的譲歩をしたときに限り、譲歩幅に比例して少しずつ制裁解除や支援は行うという「行動対行動」の原則を崩してはならない!

・三条 健です。
北朝鮮拉致被害者に関する調査をやり直すという約束も、米国が金融制裁解除に続いてテロ支援国家指定を解除するや、反古(ほご)にした。
・米国が2010年8月末に始めた金融制裁は、金正日個人資金を扱う朝鮮労働党39号室と朝鮮人民軍の偵察総局を、テロと犯罪を行う組織だと名指しし、世界中の銀行に口座凍結、金融取引停止を求めた。
・2005年に安倍晋三氏が官房長官になって、対北圧力の一つ、「厳格な法執行」を打ち出し、翌年の安倍政権成立とともに、それが拉致問題をめぐる政府方針に明記され、総連の脱税や不正融資、核ミサイル技術流出などへの厳しい取り締まりが始まった。
・1994年、2005年に続いて39号室資金を標的にした3回目の制裁が今、かけられている。
 今回は韓国も制裁に参加している点が従来とは違う。
 北朝鮮は今回の砲撃のような挑発を繰り返し、何とか米朝交渉に持ち込み、制裁解除を得ようとし、中国も狡猾(こうかつ)に手助けしている。日米韓3カ国が結束し、挑発には懲罰で報いなければならない。
・ 北朝鮮が先に実質的譲歩をしたときに限り、譲歩幅に比例して少しずつ制裁解除や支援は行うという「行動対行動」の原則を崩してはならない!
・「北朝鮮急変事態時、拉致被害者等救出特別措置法」など、自衛隊を活用できる法的な枠組み作りを早急に行っておけ!



〜〜〜関連報道<参考>〜〜〜
【正論】東京基督教大学教授・西岡力 
北の砲撃は金融制裁への悲鳴だ
2010.12.10 03:32

◆効いた金正日資金狙い撃ち :

 北朝鮮による韓国砲撃は、金正日総書記が、日米韓主導の制裁に個人資金を狙い撃ちされて上げた悲鳴でもある。米国がこの8月末に始めた金融制裁は、金正日個人資金を扱う朝鮮労働党39号室と朝鮮人民軍の偵察総局を、テロと犯罪を行う組織だと名指しし、世界中の銀行に口座凍結、金融取引停止を求めた厳しいものだ。金正日個人資金の枯渇を目指す制裁は過去にも効果を挙げた。

 北朝鮮は1970年代初め、大規模工業化を目的に、日本や欧州からプラント輸入などを大量に行いながら代金を支払わなかった。その結果、西側との貿易では信用取引をできなくなり、現金決済となった。貿易統計では毎年、数億ドルの赤字であり、借款提供などもほとんどない。経済学の常識に照らせば、そんな国は政府も国民も窮乏しなければおかしい。

 ところが、ヨットや高級乗用車のベンツ、高級食材のトロ、メロンといった贅沢(ぜいたく)品と、ミサイル、核開発に必要な資材や部品はなおも現金で輸入し続けている。統計に表れない外貨収入が毎年、数億ドルは存在するはずである。

 90年代初め、現代コリア研究所が徹底して調べたところ、北朝鮮には政府管轄の計画経済と、労働党39号室が管轄する金正日個人資金経済が併存、後者に朝鮮総連が多額の脱税や朝銀信用組合を使った不正融資などで年間数億ドルを送金していることが分かった。

 日銀や内閣調査室も本格調査、朝鮮総連が90年代初め時点で年間1800億円〜2000億円を送金していると判明した。当時、内調幹部から聞いた数字だ。政府は送金を止めるべく、総連の違法活動の取り締まりに入った。

 金日成主席がカーター元米大統領平壌に招き核開発凍結を約束した背景に、この日本の制裁もあった。政府は米朝が核凍結で合意すると、締め上げていた手を緩めてしまう。本来なら拉致問題解決まで制裁を弱めてはならなかったはずだ。

◆総連の不法活動摘発と両輪 :
 その後、バブル経済崩壊などで総連の送金は減ったものの、98年から10年間続いた韓国の親北左傾政権が太陽政策の美名の下、計100億ドルの対北支援をし、大半が39号室に収まったという。
 そのころ、北朝鮮政府は社会主義計画経済の根幹を成す主食の配給を停止、人口の15%の300万人余が餓死させられたともいわれる。39号室の懐にある外貨が放出されたとの話は聞かない。

 2005年に安倍晋三氏が官房長官になって、対北圧力の一つ、「厳格な法執行」を打ち出し、翌年の安倍政権成立とともに、それが拉致問題をめぐる政府方針に明記され、総連の脱税や不正融資、核ミサイル技術流出などへの厳しい取り締まりが始まった。
 整理回収機構(RCC)が総連を相手に600億円の返還を求める民事訴訟を起こし、総連中央本部を差し押さえようとした。菅直人政権が11月に決めた拉致問題対応方針にも「厳格な法執行」は盛られ、日本の制裁は続く。
 05年からの米金融制裁は、海外の銀行にさまざまな名義で隠匿されている金正日個人資金を使えなくする狙いだった。米中央情報局(CIA)によると、金正日氏は約40億ドルの秘密預金を持つ。それを米国は「テロ資金、犯罪資金」と認定、世界の銀行に金正日個人資金と取引すれば米銀行との取引は停止すると脅しをかけた。制裁は総連不法活動取り締まりと車の両輪となり、かなり効いた。

体制崩壊に万全の備えを :
 ライス米国務長官ヒル国務次官補(アジア太平洋担当)はしかし、ブッシュ前政権末期に目先の成果を欲しがり、金融制裁を解除した。見返りとして得たのは、用済みの原子炉冷却用煙突の爆破ショーだけで、北朝鮮はその後も、核開発を着々と進めた。北朝鮮拉致被害者に関する調査をやり直すという約束も、米国が金融制裁解除に続いてテロ支援国家指定を解除するや、反古(ほご)にした。
 1994年、2005年に続いて39号室資金を標的にした3回目の制裁が今、かけられている。今回は韓国も制裁に参加している点が従来とは違う。北朝鮮は今回の砲撃のような挑発を繰り返し、何とか米朝交渉に持ち込み、制裁解除を得ようとし、中国も狡猾(こうかつ)に手助けしている。日米韓3カ国が結束し、挑発には懲罰で報いなければならない。制裁解除や支援は北朝鮮が先に実質的譲歩をしたときに限り、譲歩幅に比例して少しずつ行うという「行動対行動」の原則を崩してはいけない。

 日本は、個人資金の枯渇と健康悪化などで金正日体制が近く倒れる事態を想定し、中国の影響力をできる限り排する形で北朝鮮を独裁のくびきから解放して半島全体の民主化と自由統一を達成、拉致被害者を全員、取り戻し、核開発をやめさせるために何ができるか、万全の備えをすべきだ。 
 特に、「北朝鮮急変事態時、拉致被害者等救出特別措置法」など、自衛隊を活用できる法的な枠組み作りを早急に行ってほしい。(にしおか つとむ)