雇用の確保のために「日本版ワークシェアリング法令」の検討導入を急げ! 


・三条 健です。
・新卒者の多くが就職できないという氷河期を長く続けて黙認している社会は最悪の社会だ! 日本の政府、省庁、経営者、労組、マスコミなど結集してこの社会問題を解決せよ!
雇用の確保のために「日本版ワークシェアリング法令」の検討導入を急げ! 

・ 欧州では、1980年代以降、雇用情勢の悪化を背景に国や企業レベルでワークシェアリングの導入が進んだ。
 特に有名なのがオランダだ。「オランダ病」と呼ばれるほどの大不況に陥ったが、82年に政府、経営者、労働組合の3者間で「ワッセナー合意」を締結。経営者は労働時間を短縮して雇用を維持し、労働組合は賃金抑制に協力する。政府は所得の減少を補うため、社会保障負担を減らし、減税を行うこととした。


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 雇用不安が急速に広がる中、一つの仕事を複数の働き手で分かち合う「ワークシェアリング」が注目を集めている。今春闘でも議論される見通しだが、経営者、労働組合双方から慎重論も相次ぐ。制度を取り巻く現状と課題をまとめた。
Q どんな制度
 ワークシェアリングは、仕事の分かち合いを意味する英語。従業員1人当たりの労働時間を減らして雇用を維持・創出する手法だ。導入する目的によって、「緊急避難型」と「多様就業対応型」の大きく2タイプに分けられる。
 緊急避難型は、企業の業績が悪化した際に、賃金が下がっても従業員が1人当たりの労働時間を減らして全体の雇用を守るやり方だ。
 例えば、5人の労働者が1人1万円の賃金で働く5万円分の仕事があり、企業が不況によってこの仕事を4万円分に減らすとする。この場合、労働者1人を解雇せず、1人当たりの仕事を減らして賃金も8000円に引き下げて、5人全員の雇用を確保する仕組みだ。今回、議論の対象になっているのが、これだ。
 一方、多様就業対応型は、様々な短時間労働を設けて働く機会を増やすことを狙っている。オランダの例などが有名だ。
 ある企業が、午前9時〜午後6時だった勤務時間を午後2時までに4時間短縮する制度を導入したとする。そうすれば、従業員は育児などの時間を増やすために短時間勤務を選ぶことができ、従業員の妻や夫も働きに出やすくなる。企業は子育てが一段落した女性をパートで新たに雇い入れる余裕が生まれる。こうした企業が増えれば、女性や高齢者の社会進出につながる効果もある。
 緊急避難型が不況下で雇用を守る一時的な対策であるのに対し、多様就業対応型は働き方を改革して新たな雇用を生み出す中長期的な対策と言える。
Q なぜ注目
 世界的な不況で製造業の減産が相次ぐ中、派遣労働者の契約打ち切りなど雇用不安が高まっている。大量失業を放置すれば社会不安が生じかねない。ワークシェアリングは経営者と労働組合が協力し、できるだけ雇用を確保する有力な手段となりうるためだ。
 日本経団連の御手洗(みたらい)冨士夫会長が1月6日の年頭あいさつで、「緊急的に時間外労働や所定労働時間を短くして雇用を守るという選択肢を検討する企業が出るかもしれない」と言及、導入論議が一気に高まった。経団連と連合は今春闘で雇用問題を協議する場を設けることにしており、ワークシェアリングも主要議題になる見通しだ。
 製造業では、減産に伴う一時的な措置としてワークシェアリングをすでに導入した企業もある。
 マツダは今月から、本社工場(広島県)と防府工場(山口県)の正社員1万人を対象に、従来の昼夜2交代制を昼間だけの勤務にして賃金もカットした。
 富士通半導体子会社、富士通マイクロエレクトロニクスは国内3工場(岩手、三重、福島県)で製造部門の正社員を対象に導入した。12時間勤務の2交代制を8時間勤務の3交代制に切り替え、1人当たりの労働時間を3分の2に減らした。
 従業員の賃下げを「痛みの分かち合い」という広い意味にとらえ、事実上のワークシェアリングと解釈する企業も出てきた。
 トヨタ自動車は、2月と3月に予定している計11日間の工場休止日のうち、2日間について賃金を2割削減。宮崎直樹常務は「ワークシェアリング的な働き方を、みんなで我慢して進めている」と説明する。社員約1万人を対象に2月から基本給を1〜5%カットする日本電産も「全社で危機感を共有する狙い。(事実上の)ワークシェアリング」(永守重信社長)という。
Q 問題点は
 これまでワークシェアリングが日本に根付かなかったのは、景気回復で必要性が薄れた事情に加え、実際に制度を導入するとなると、経営者と労働組合双方に様々な思惑があるためだ。
 労働組合にとって、ワークシェアリングは賃下げにつながるとの警戒感が強い。「議論は否定しないが、現時点で対応は考えにくい」(連合の団野久茂副事務局長)との声が一般的だ。
 一方、経営者側には、労働者の仕事を減らしたからと言って、思ったように人件費を下げられないという問題がある。多くの企業の給与体系は単純な時給ではなく、基本給に様々な手当が積み上がっている。人件費削減を目指すならリストラの方が効果があることも事実だ。ワークシェアリングで同じ仕事に就く労働者が増えれば、労働時間の管理も煩雑になる。
 導入できる業種が限られることも障害となっている。日本商工会議所の岡村正会頭は「ある程度マニュアル化された作業はワークシェアリングが行いやすいが、営業や研究開発などはなじまない」と指摘する。
 ワークシェアリングに「雇用を守ることで技術を伝承する」(シャープの町田勝彦会長)役割を期待する声もある。その一方で、有能な社員の労働時間を減らし、長期的には生産性の低下を招くとの懸念も指摘されている。
 期間従業員などの非正社員も加えてワークシェアリングを導入する場合は、さらに大変だ。正社員と非正社員の賃金格差は大きく、両者の格差を是正しようとすると、正社員の賃金が大幅に下がる可能性がある。正社員は手厚い福利厚生が受けられる反面、会社の命令で転勤を余儀なくされる場合もあり、こうした処遇まで均衡させるのは簡単ではない。
 労働政策研究・研修機構の小倉一哉主任研究員は、「同一労働・同一賃金を前提とした欧州型の働き方を日本でも進めない限り、日本での導入はごく一部にとどまるだろう」と指摘する。 専門家の間では「当面の危機対応としては、経営者が報酬を減らし、労働者の賃金を一律にカットする『賃金の分かち合い』の方が現実的」(日本総研の山田久主席研究員)との声も出ている。

Q 海外は
 欧州では、1980年代以降、雇用情勢の悪化を背景に国や企業レベルでワークシェアリングの導入が進んだ。
 特に有名なのがオランダだ。「オランダ病」と呼ばれるほどの大不況に陥ったが、82年に政府、経営者、労働組合の3者間で「ワッセナー合意」を締結。経営者は労働時間を短縮して雇用を維持し、労働組合は賃金抑制に協力する。政府は所得の減少を補うため、社会保障負担を減らし、減税を行うこととした。
 96年の労働法改正で短時間労働者が働きやすい環境づくりも進めた。賃金や昇進、社会保険の加入などについて、フルタイムで働く正社員とパートタイムで働く短時間労働者間の差別を禁止し、同一労働・同一賃金を実現した。
 こうした国を挙げての取り組みは、短時間なら働きたいという女性や高齢者の労働市場参入も促し、83年に9・2%だった失業率は、2007年には3・2%まで改善した。
 ドイツでは、労使協約に基づく自主的な取り組みでワークシェアリングが進んだ。中でも有名なのが、自動車大手フォルクスワーゲンが94年に実施した事例だ。業績不振に陥った同社が打ち出した約3万人の削減計画を巡り、反発した組合側が経営者側と交渉。週35時間労働を28・8時間に短縮して給与を減らす代わり、95年まで人員削減を回避するという協定を締結した。
 一方、フランスでは、時短促進の法改正を重ねることで雇用の維持と創出を図ってきた。労働時間は82年の法改正で週40時間から39時間に、2000年からは35時間まで短縮した。国は人員削減しないことを約束した企業の社会保険料を軽減するなど改革を後押しした。
 欧州でワークシェアリングが進んだ背景には、日本と比べ、仕事の範囲や責任が明確なことや、正社員と非正社員の賃金・待遇格差が小さく、仕事を共有、分担しやすい点が挙げられる。
2000年前後にも導入機運
 デフレ不況が深刻化した2000年前後に「緊急避難型」のワークシェアリングの導入機運が高まったことがある。02年6月に失業率が過去最悪の5.5%まで上昇するなど、企業のリストラが加速していたころだ。
 当時の日経連、連合、政府は02年3月の「政労使合意」で、ワークシェアリングの具体化に向けた労使協議や政府支援の必要性を強調。政府は同年6月に導入企業への助成措置(従業員が300人より多い企業には100万円)を始め、同年12月には日経連の組織を引き継いだ経団連、連合、政府が助成措置の拡大などで再び合意した。
 こうした動きを背景に、自動車や電機業界などでワークシェアリングを導入する動きもあった。大手企業では、日野自動車が1999年に日本で初めて採用し、日立製作所富士通半導体工場で導入した。
 だが、その後の景気回復を受け、ワークシェアリング論議は急速に下火になった。企業はむしろ人手不足に陥ったためだ。03年春闘では「ほとんど話題にのぼらなくなっていた」(経団連)状態で、政府の助成措置を利用した企業も結局、3年間で4社にとどまった。
(2009年1月22日 読売新聞)