財源をどうするこうするかというより、必要なものは大胆に政府が通貨発行権を行使して、政府通貨をどんどん出していくことが、求められている。

・国土を守るためには、国家を輕んじてはなりません。国を守るという危機管理の基本の考え方をもつためには、憲法改正から始めるべきだ!
国を軽んじてはならないということを、大きな教訓として、肝に銘じるべきだ。自衛隊、警察、消防という国でなければできないことばかりでした。これを機に、国の力を弱めようとしてきた風潮を、大転換しなければなりません。
普代村は、明治の大津波の教訓から、十五メートルの防潮堤と水門を築いていたので、大丈夫でした。
「コンクリートから人へ」という公約を掲げて、国民の大多数がその通りだと思ったのは、あまりにも甘すぎました。
アメリカは今度の天災の救援に当たって、全力投球した。沖縄の米軍を中心として、二万人を投入した。  日本の国防がまったく空き巣になったから、アジアのために軍事的な空白を作ってはならないということで、原子力空母ロナルド・レーガンを急派した。
自衛隊5人に対し、沖縄の米軍兵1人の全力投球をした。
・政府が通貨発行権を行使して、政府通貨をだすのが唯一つの正解
財政が破綻しているといいますが、関東大震災の時は日本は債務国でした。今は、世界で有数の債権国です。外貨保有高だって、大変なものです。
財源をどうするこうするかというより、必要なものは大胆に政府が通貨発行権を行使して、政府通貨をどんどん出していくことが、求められている。
・生き金、死に金という言葉がありますが、生きた組織、死んだ組織もあって、日赤は後者だ!  
・人生は苦の連続であるのが、真実だ!
・被災民たちの沈着な態度をみて、全世界が称賛している。
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対談・・日本再生の基本とは
加瀬英明
2011.05.03 Tuesday

加瀬 英明インタビュー  聞き手 矢野 弾

――お蔭さまをもちまして、八〇〇号を『カレント』が迎えました。八〇一号の記念に、ぜひ加瀬先生にお願いしたいということで伺いました。
加瀬 おめでとうございます。
――大震災について、お話し下さい。
加瀬 このところ日本では、国を軽んじてきました。今回の対応は、国家でなければできないことばかりでした。
地方分権とか、地方主権とか囃されてきましたが、地方ではできないことが、多い。国を軽んじてはならないということを、大きな教訓として、肝に銘じるべきだと思います。

もう一つは、橋本内閣から始まって、公共投資を今日まで削ってきましたね。
――そうでしたね。
加瀬 今では日本が先進国の中で、公共投資がもっとも低くなっています。民主党政権が「コンクリートから人へ」という公約を掲げましたが、三陸縦貫自動車道があったために、救援活動がはかどりました。だが、予算を削ったために、五〇%しかできてなかった。
 自衛隊、警察、消防という国でなければできないことばかりでした。迅速に行動できる集団となると、何といっても自衛隊です。これを機に、国の力を弱めようとしてきた風潮を、大転換しなければなりません。
 日本は世界の中で、国土が最も脆弱な国です。これほど地震津波が頻発する国は他にありません。この国土を守るためには、国家を輕んじてはなりません。コンクリートを中心とする公共投資を抑制すると、天災を巨大な人災としてしまうという、重要な教訓があります。コンクリートは国民の生命を守る盾です。
 ――そうですね。
加瀬 もう一つ、今回、政府や東京電力の対応が遅れたといって強く非難されています。しかし、わたくしは国民全員が責めを負うべきだと思います。
 政府と東電が右往左往して、醜態を演じましたが、国民全員に責任があります。政府だけではなく、全国民が咎められるべきです。
 日本ではいったんコンセンサスができてしまうと、実体がない怪しげなものであっても、支配的な力をもって、全員がそこに寄りかかってしまいます。そして、全員がことなかれ主義になる。そのために、最悪の場合を想定することができないんです。

 岩手県の北にある普代村は、明治の大津波の教訓から、十五メートルの防潮堤と水門を築いていたので、大丈夫でした。リアス海岸の形とか、他の条件もあったかもしれませんが、十五メートルの防潮堤をつくっていたのは、ここだけなんですね。
 今回、巨大津波によって、あまりにも多くの人命が失われてしまいましたが、天災よりも、人災だったといいたいですね。

 最悪の事態を想定できない最たるものが、何かといえば、日本の安全と平和を守ることのできない、アメリカが押し付けた日本国憲法を、後生大事に戴いてきたことですよ。
 津波に対する備えができなかったのも、福島原発の問題も、憲法問題と変わらないんです。
 ――そうしますと、この教訓は、国を守るということの再確認ということですね。
加瀬 これまでは、国は悪であって、地方にどんどん権限を譲るべきだとかいう、愚かな議論が当たり前のように行われてきたんですね。
 ――コンクリートで生命を守る、その施策をもう一度見直すべきだということですね。
加瀬 「コンクリートから人へ」という公約を掲げて、国民の大多数がその通りだと思ったのは、あまりにも甘すぎましたね。
――やっぱり、国に敬意を払うという精神を取り戻さなきゃいけない。
加瀬 今度の復興にあたっては、東日本だけを考えずに、沖縄から北海道まで国土の全域を対象として考えなきゃいけない。
 ――復興と同時に、日本の再見直しということにつなげていくことになるんでしょうか。道州制みたいな形を作り上げていく方法もありますね。
加瀬 国家が中心だという認識をはっきり持った上で、道州制がいいのかということを考えないと、また国家を軽んずることになりかねない。

 今回は、十万六千人の自衛隊員を災害派遣に投入しました。三自衛隊は合わせて二十三万人しかいないんです。
 ――半分、出したわけですね。
加瀬 これでは、このあいだ、国防がまったく成り立たなかったんです。予備自衛官も招集されました。けれども、予備自衛官陸自が三万四千人、海自が一千百人。空自は六百六十人しかいないんです。

 アメリカは今度の天災の救援に当たって、全力投球しました。だが、災害の救援という善意だけではなかった。日本の国防がまったく空き巣になったから、アジアのために軍事的な空白を作ってはならないということで、原子力空母ロナルド・レーガンを急派したということですね。

 沖縄の米軍を中心として、二万人を投入しました。そのために、日本では日米安保条約があって良かったという安心感が強まりましたが、アメリカに頼っていればいいやという、また安易な依存心が強まったら、大きな問題です。

 三月十一日を境にして、自衛隊の評価が大きく変わりました。テレビに海底の遺体を捜索する海上自衛隊の舟艇に、旭日の海上自衛隊旗が翻っているのが、しばしば放映されましたが、軍旗がまぶしく見えたのは、久し振りですね。
 自衛隊が国民に受け容れられたということによって、健全な国家意識を回復するのに役立ちました。

 ――天皇陛下が三月十六日にお言葉を述べられて、全国に放映されましたが、国民の天皇に対する崇敬心があらたまりましたね。
加瀬 やはり首相よりも、はるかに重い存在ですね。陛下がお言葉のなかで、「自衛隊、警察、消防…」の順で、「労を深くねぎらいたい」といわれて、当然のことですが、自衛隊を最初にあげられたのに、感動しました。

 ――復興に当たって、財源をどうするこうするという議論が、盛んですね。
加瀬 わたくしは仮に家族が交通事故に遭って、集中治療室に入っているときに、費用をどうして捻出するかという議論よりも、何でもいいから、お金を都合しなければならないんですね。

 今回の東日本大震災は、戦争です。戦時予算を組む気概が必要です。
 ――そうすると、復興国債という形で、日銀引受で出すという方法が一つありますし、政府が紙幣を発行する。
加瀬 政府が通貨発行権を行使して、政府通貨をだすのが唯一つの正解です。 今はデフレですから、インフレを招く心配はまったくありません。閣議で決定すればよいことです。国債に償還と金利があります。
 財政が破綻しているといいますが、関東大震災の時は日本は債務国でした。今は、世界で有数の債権国です。外貨保有高だって、大変なものです。財源をどうするこうするかというより、必要なものは大胆にどんどん出していくことが、求められています。
 ――財源に関しては政府通貨という形で、バックアップするということですね。
 それと同時に、今度は、国民から被災者対策として、一千億円を超える金額が集まったというのに、支給の基準がないからって、まだ、まったく配ってないんですね。
加瀬 矢野先生にもお加わりいただいている、毎週火曜日朝七時半からニューオータニで行っている、わたくしの本の読書会がありますね。昨年二月に始まって、毎回五十人ぐらい集まりますが、志士経営者倶楽部と名づけています。

 今回の大震災が起こってから、義援金として、すぐに二百六十五万円を集めました。それで日本赤十字に聞いたら、どのように使うのかまったく返事がないので、福島県相馬市と宮城県山元町を選んで電話を入れたら、着替えがないので、ぜひ肌着がほしいと言うんですね。冬物でした。横浜の親しい運送会社から二トン車を借りて、一万着近くを届けました。
 そしたら、今度は靴と電機洗濯機がほしいと頼まれました。また、二トン車で届けました。日本語には、生き金、死に金という言葉がありますが、生きた組織、死んだ組織もあって、日赤は後者でしよう。

 福島原発は、マグニチュード9の地震は、千年に一度だから大丈夫だっていって、想定していなかったんですね。二年前に原発をめぐる経産省の審議会で、専門家が平安期の巨大地震津波が再発する可能性があると指摘したのに、取りあげられませんでした。
 この国を立て直すために、一人ひとりが行動してほしいと思います。

 ――今回の対策は、日本だけではなくて、原子力発電の将来について、世界の頭脳を集めて、方向を示すことが必要でしょうね。
加瀬 日本の電力の三〇%が、原発によるものです。これを捨てるわけにはいかない。今度の福島原発の重大事故も、最悪の事態を想定していれば、起きなかったはずです。

 日本だけのためではなく、世界のために、全世界からトップの専門家を招いて、大きな国際会議を催すべきです。
 ――東京の電力は福島にかなり依存していたようですが、計画停電のシミュレーションが奇妙なもので、今日は足りるからやめるとか、計画性がない。シミュレーションを行って実施していくことで、信頼が生まれるという考えがあってもよかったでしょうけどね。
加瀬 明治に入ってから、西側はアメリカ方式電力、東側はドイツ方式でやったわけですね。夏場になると大変だと言いますけども、西日本から電力の供給を受けることができない。今から、互換できる手だてを考えるべきですね。
 くどいようですけども、最悪の事態が起こるはずがないという、平和憲法の発想が、今回の悲劇を大きくしました。隙だらけの国ですよ。

 ――国を守るという危機管理の基本の考え方をもつためには、憲法改正から始めるべきですね。
 時間がかなりかかるでしょうから、今の体制の中で作るには、どうするかですね。非常時には、国しか頼れるものがないんです。
加瀬 まず、全国民が国あっての日本だという意識を、取り戻さなきゃならないですね。

 戦前の日本は平和は力によって守らねばならないものだと思っていたのに対して、平和憲法はおかしな呼び方ですがね、そのお蔭で平和があるという、自己責任を放棄した妄想にとらわれてきました。

 ――自立心が忘れられたのは、やっぱり教育から始めないといけないですね。
加瀬 今で言えば、歴史と公民教育でしょうね。文部科学省が教科書を検定していますが、今でも国や、愛国心をないがしろにした、ひどい内容の教科書がほとんどで、大手を振って罷り通っています。
 ――自由な資本主義体制の中で、国としての自立精神をどう培っていくかという課題になりますね。  地震のときは、どこへおられました?
加瀬 麹町の自宅にいました。よく揺れましたね。しかし、わが家では本が一冊も落ちなかったし、まったく被害がなかったですね。事務所のほうでは、本が全部落ちました。
 ――カレントは、テレビがひっくり返って落っこちましたけどね。
加瀬 わたくしは千代田区に住んでいますが、千代田区は、箱根の強羅、湯河原、軽井沢、蓼科の四カ所に保養所を持っているんです。だから、親しい区議にそんなものは売って、東日本の復興に当てるべきだと献策しました。
区は無駄遣いが、多い。区民の中の有識者を集めて、仕分けの委員会を作るべきです。
 ――自分のこととして、不要不急のものを整理して、救援に充当していくのですね。
加瀬 これからはお中元の季節になりますけど、できるだけ東北の産品を贈りたいですね。 食堂や飲み屋さんだったら、他のお酒を造ってるところに叱られるかもしれませんが、できるだけ東北のお酒を置いてほしいですね。
 ――そういう心遣いを束ねることによって、精神的にバックアップして、甦ってくださいということですよね。
 原発については、日本の未来もさることながら、原発自体の未来ということと、世界の未来につながるという問題をはらんでいます。
加瀬 今度の福島原発は、あれは四十年前のアメリカのGE製で、もう古いものですね。今の新しいものはもっと安全なものです。極限まで安全性を考えなければならないということに、尽きるんじゃないですかね。

――そうでしょうね。先ほどの節電という面で見ると、駅舎や電車の中の蛍光灯を減らすとかいうことやって、ちょうどいいですよ。
加瀬 わたくしは以前から照明が明るすぎると言ってきたんですけど、明るすぎると、注意が散漫になって、結局は何もよく見えないんです。菜種油の灯で、相手と向き合っていたときは、相手の顔をよく見ましたね。窓の雪、蛍の光で勉強したほうが、身につきます。
 ――「吾唯知足(我、ただ足るを知る)」から始めなきゃいけませんね。
加瀬 コンビニが夜十一時過ぎにやっている必要が、いったいどこにあるんですか。もし夜中に腹が空いたら、十一時までに買っておいたものを食べればよいんです。
 ――セブンイレブンは、七時から十一時までということですから。
加瀬 ところが、二十四時間やっていますね。自動販売機も、七時から十一時でよいはずです。免状や、食べ物、飲み物は神聖なもので、人から人へ手渡されるべきです。自動販売機は国民をふしだらにしています。
 ――テレビも十二時以降どこまで垂れ流してよいのかという疑問が、生まれてきますね。
加瀬 今度も、NHKから民放まで同じ報道をしていたのは、無駄です。
 ――あらためて認識させられましたね。
加瀬 本当は、日本からテレビの放映を一年間禁じたら、よい国になるといいたいですね。エンターテインメント(娯楽)が、過剰です。人生が楽の連続であるべきだと、錯覚している。 人生は苦の連続であるのが、真実です。
 照明が明るすぎるし、終日コンビニが開いているから、昼と夜の区別がない。男が女性化し、女が男性化して、男女の区別がない。年長者に敬意を払わないから、長幼の区別がない。昼は明るく、夜は暗いほうが、よいんです。
 今日の日本で異常なことは、働くことよりも、教育のほうが上にあるという錯覚があります。  全員が大学へ行かなきゃいけない。それよりも、働くことが、いかに価値があることであって、高校を出てから、すぐに仕事をするほうが尊敬されるという、真っ当な社会をつくりたいですね。    そうなれば、早婚になって、少子化の問題も解決される。
 ――温故知新ということですね。  締めのお言葉で何かいただければ…
加瀬 今回の大天災によって、日本人がいかに気高い民族かということが、全世界に理解されました。被災民たちの沈着な態度をみて、全世界が称賛しています。これは日本の外交力としても、使えます。
 しかし、天災にあたったときだけ、日本人の良いところが現れるのではなくて、普通の時間においても、日本人は素晴らしいという評価に変えていかなきゃならない。復興が成ったら、もとへ戻ってしまうのであってはなりません。
 鴨長明といえば、平安時代歌人ですが、『方丈記』のなかで、元暦二(一一八五)年の大地震で「山はくずれて河を埋め海は傾きて陸地をひたせり」といって、大地震によって「俗世の欲に濁った日頃の心根が」薄らいだようにみえたが、月日がたつうちに忘れられて、元に戻ってしまったと嘆いています。
 誇らしい日本を再生する機会だと思って、物理的な復興に取り組んでゆくだけではなく、日本の伝統精神を回復することを、合わせて行わねばなりません。