・中国では、革命を回避するための「経済成長」が結局、革命発生の新しい条件を作り出してしまったという皮肉な結末となっている!

・経済的にも社会的にも、中国の現状はまさに行き詰まりの様相を呈しており、経済的「成長」と社会的「安定」を吹っ飛ばすほどの爆発が目の前に迫ってきている状況となっている。
・金融引き締め政策の実施はいずれか不動産バフルの崩壊を引き起こして経済の急落をもたらすのが必至のすう勢である。
・中国政府は2月18日には今年二回目の銀行預金準備率の引き上げを断行してインフレ退治の金融引き締め政策に踏み切ろうとした。
 一方、同じ日に、胡錦濤国家主席は党の会議で治安とネットの「管理強化」を訴えて社会的動乱の発生に備えての統制強化をはかった。
・中国では、革命を回避するための「経済成長」が結局、革命発生の新しい条件を作り出してしまったという皮肉な結末となっている!


〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
「エジプト」と「インフレ」で占う北京政府の末路 
石平
2011.05.02 Monday

 中国共産党政権が何を恐れているかを知るには、一つ簡単な方法がある。政権はその都度、何かを懸命に隠そうとしている時、その「何か」こそが政権にとっての急所なのである。
 たとえば1月から2月にかけて、エジプトで民衆参加の革命が起きた時、中国政府は情報の統制を行って革命の真実を中国国民の目から覆い隠そうとしたが、こうした情報隠ぺいは当然、政権はエジプト革命が中国に飛び火してくるのを恐れていることの証左である。
 実は、「エジプト隠し」をやったのと同じ時期、中国政府は国内の経済問題にかんしても、手の込んだ情報の隠ぺいを行った。

 2月15日、政府当局は1月の消費者物価指数が前年同月を4.9%上回ったと発表した。中国経済はインフレ傾向にあることがそれでもよく分かるが、実はこの「4.9%」という数値はまた、政府による情報操作の結果であった。当局が1月の消費者物価指数を算出する際、価格の上昇がもっとも激しかった食品の占める比率を意図的に引き下げることによって全体の数値を低く見積もった。つまり当局は、小細工を使ってインフレの実態を隠ぺいしょうとしているのである。
 この隠ぺい工作も当然、インフレの襲来にたいする政府の恐怖心の裏返しであろう。 数億人単位の貧困層がいて国民の不満が高まっている状況下では、本格的なインフレの発生=物価の暴騰は直ちに社会的大混乱の発生につながりかねない。   北京はまさに、それに怯えているのだ。そして、彼らの抱える危機感に拍車をかけたのはすなわち、エジプトで起きた驚天動地の民衆の反乱だ。
 というのも、貧富の格差の拡大や腐敗の蔓延などの「中エ共通問題」に加えて、インフレの深刻化もまた、エジプト革命の引きかねの一つとなっているからである。
 考えてみれば、天安門事件以来のこの二十数年、共産党政権はまさに、天安門民主化運動を二度と起こらせないよう、あるいはエジプト革命のような反乱が中国で起こらないよう、経済の高度成長を押し進めることによって社会の安定を図ってきた。

 そのために、中国政府は結局、通貨の過剰供給による投資の拡大という「禁じ手」を使って継続的高度成長を維持してきたが、深刻な流動過剰がそこから生じてきて今のインフレ率の上昇につながった。  その結果、中国政府は今、本格的なインフレの襲来に促される民衆の反乱の発生を危惧しなければならない立場にあるのである。
 言ってみれば、革命を回避するための「経済成長」が結局、革命発生の新しい条件を作り出してしまったという皮肉な結末であるが、北京は今、必死になってこの「運命の結末」から逃れようとしている。

 そのために、中国政府は2月18日には今年二回目の銀行預金準備率の引き上げを断行してインフレ退治の金融引き締め政策に踏み切ろうとした一方、同じ日に、胡錦濤国家主席は党の会議で治安とネットの「管理強化」を訴えて社会的動乱の発生に備えての統制強化をはかった。

 が、金融引き締め政策の実施はいずれか不動産バフルの崩壊を引き起こして経済の急落をもたらすのが必至のすう勢であるが、こうなった時には社会的混乱の拡大は当然避けられない。そして、上述の胡錦濤講話の翌々日の20日、北京・上海を含めた中国の13の重要都市で、エジプト革命に倣っての反政府デモの実施がネットで呼びかけられることになった。  中国政府の敷く厳重な厳戒態勢によってそれが不発に終わったが、天安門事件から23年目にして、一部の人々は実際に行動を起こそうとしたこと自体、中国における「反乱の時代」の到来を告げたような歴史的出来事であろう。

 ともかくして、経済的にも社会的にも、中国の現状はまさに行き詰まりの様相を呈しており、経済的「成長」と社会的「安定」を吹っ飛ばすほどの爆発が目の前に迫ってきている状況となっているのである。
 「天下の大乱」がいつやってくるのか、まさにこれからの「見どころ」なのである。