・原発事故の責任のある東電と政府の両者がこうした身を切る努力をした後、それでも賠償の資金が足りない場合に、初めて電力料金上げという形で国民にも負担をお願いするのが筋ではないか?

原子力損害賠償法の規定から、今回の事故が第3条に規定する“天災地変”に該当しない(なぜなら、同じ震災で女川原発には問題が生じていないことからも明らか)以上、東電が責任主体であるのは明確だ!
・そもそも市場のルールという観点から、
① 発表されている東電のリストラ策ではまったく不十分
② 本来は株式については100%減資、社債などの金融債権もある程度のカットが行なわれるべき
③ 被害者への賠償や福島原発への対応で東京電力債務超過に陥る場合、機構を通じて資本注入するよりも一時国有化すべき(資本注入は過少資本、すなわち債務超過に陥っていない場合に限定すべき)
④ 原子力発電は事実上、電力会社と政府が一体的に経営してきたも同然だ。
従って、政府、具体的には原子力安全・保安院原子力安全委員会の責任も重いし、この責任を曖昧にするな! よって、政府は“原子力埋蔵金”を賠償に充てるべきだ!
核燃料サイクル”を断念すれば、数兆円単位の資金を賠償の原資とすることができる。
2種類の積立金(再処理積立金、最終処分積立金)が合計約3兆5千億円
今後10年は毎年の原子力関連予算のうち1000億円を賠償に供すれば、1兆円
つまり、政府がその気にさえなれば、数兆円の賠償減資を供出することができるのだ!
原発事故の責任のある東電と政府の両者がこうした身を切る努力をした後、それでも賠償の資金が足りない場合に、初めて電力料金上げという形で国民にも負担をお願いするのが筋ではないか?
政府が自らの責任を国民に転嫁しようとしているかが明らかになるはず。すべての国民が厳しく監視すべきだ!




〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
安易な電気料金値上げに走る前に
原子力予算・埋蔵金を賠償に回せ
 新聞でも報道されていますが、この大型連休の間も、政府内では福島原発事故の被害者に対する損害賠償(補償)のスキームに関する検討が行なわれていました。政府は連休明けの5月10日の閣議決定を狙っていますが、漏れ伝わってくる政府や与党内での議論を聞いていると、本当に腹立たしくなります。

政府の責任も追求されるべき:
 損害賠償スキームの基本的な内容は、新聞で報道されている内容のとおりです。すなわち、
1.東京電力が損害賠償の責任を一義的に負う
2.電力の安定供給に支障が生じないよう(=株式上場を維持して社債にも影響が生じないよう)賠償のための新たな機構を設立する
3.そこに全電力会社から資金を拠出させ、政府も交付国債を発行し、巨額の賠償にも東電が耐え得るようにする
4.東京電力は毎年の利益から機構に賠償金額を返済していく
5.賠償負担の減資を捻出するため、電力料金を東電は大幅に、また他の電力会社もある程度上げる
という形になっています。
 このスキームにはそもそも市場のルールという観点から、
● 発表されている東電のリストラ策ではまったく不十分
● 本来は株式については100%減資、社債などの金融債権もある程度のカットが行なわれるべき
● 被害者への賠償や福島原発への対応で東京電力債務超過に陥る場合、機構を通じて資本注入するよりも一時国有化すべき(資本注入は過少資本、すなわち債務超過に陥っていない場合に限定すべき)
といった問題があるのですが、それに加えて看過してはいけないのは、政府の責任が曖昧になっているということです。
 このスキームでは、東電が賠償の一義的な責任を負い、政府は賠償が円滑に進むよう支援するような役割になっていますが、それでいいのでしょうか。種々の規制の存在や毎年投入される多額の予算などを勘案すると、原子力発電は事実上、電力会社と政府が一体的に経営してきたとも言えます。
 その観点からは、今回の原発事故について東電の責任がもっとも重いのは当然ですが、同時に政府、具体的には原子力安全・保安院原子力安全委員会の責任も重いし、もっと追求されて然るべきではないでしょうか。

政府は“原子力埋蔵金”を賠償に充てるべき:
 もちろん、だからと言って、
第一に政府が損害賠償の責任を負うべきとはなりません。原子力損害賠償法の規定から、今回の事故が第3条に規定する“天災地変”に該当しない(同じ震災で女川原発には問題が生じていないことからも明らか)以上、東電が責任主体であるのは明確だからです。
 第二に、機構に政府も多額の国費を投入しろということにもなりません。政府の責任も非常に重いですが、その責任は、国民に新たな税負担を強いる形ではなく、電気料金上げという国民負担も最小となるよう、政府の“原子力埋蔵金”を賠償の原資として供出することにより果たすべきです。
 それでは、“原子力埋蔵金”はどれ位あるのでしょうか。政府が原子力推進を当面の間棚上げにすれば、そして特にもんじゅ六ヶ所村再処理工場に代表される“核燃料サイクル”を断念すれば、数兆円単位の資金を賠償の原資とすることができます。
 まず、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長も主張しているように、(財)原子力環境整備促進・資金管理センターには、電力会社が積み立ててきた2種類の積立金(再処理積立金、最終処分積立金)が合計約3兆5千億円もあります。核燃料サイクルを断念することで、その全部は無理にしても、特に再処理積立金2兆7千億円は賠償に活用できるはずです。
 その他にも、原子力関連では様々な独立行政法人公益法人があり、例えば最大の日本原子力研究開発機構には年間1700億円もの予算が投入されていますので、そうした原子力関連の法人の剰余金などはすべて賠償に用いるべきです。
 次に、政府全体での原子力関連予算は、例えば今年度予算では合計4330億円にもなりますが、それをざっくりと分解してみると以下のようになります。
原子力関連予算   4330億円>
うち安全関連    570億円
立地関連      1290億円(原発が立地する自治体への交付金
国際関連      150億円
残り        2320億円
 つまり、原子力関連予算のうち約2300億円は、研究開発などの原子力推進のために使われているのです。ちなみに、その中で核燃料サイクル関連の予算は520億円、放射性廃棄物対策の予算は170億円です。
今回のように甚大な原発事故が起きた以上、国民感情を考えれば原子力推進などとても無理なはずですので、予算の執行を停止して、原子力推進のための予算のうち全額は無理でも例えば半分を賠償に転用するのは、原発事故の責任を負うべき政府として当然の対応ではないでしょうか。
 そして、原子力予算は過去10年を見てもだいたい毎年4000億円台前半であることを考えると、今後10年も同じ規模が続くでしょうから、今後10年は毎年の原子力関連予算のうち1000億円を賠償に供すれば、1兆円になります。
 これらの事実を考えると、政府がその気にさえなれば、数兆円の賠償減資を供出することができるのです。原発事故の責任のある東電と政府の両者がこうした身を切る努力をした後、それでも賠償の資金が足りない場合に、初めて電力料金上げという形で国民にも負担をお願いするのが筋ではないでしょうか。

政府は電力不足の責任も果たすべき:
 ついでに言えば、東日本が今後しばらく直面する電力不足についても、東電のみならず政府にも責任があります。電力会社の地域独占の継続と原発の推進を政府が容認してきた結果、原発事故によって電力不足が生じたからです。
 それに対する政府の責任の果たし方はどうあるべきでしょうか。今夏については時間もないので、電力需要の抑制に頼らざるを得ませんが、しかしそれは政府の失敗の責任を国民に転嫁していることに他なりません。来年以降の中期的な対応としては、電力の規制緩和という供給側の体制を変革することこそが、本来あるべき政府の責任の果たし方ではないでしょうか。
 いずれにしても、政府は損害賠償のスキームを5月10日に閣議決定しようとしています。東京電力の決算発表が5月17日に予定されており、それに支障が生じないよう早めに損害賠償のスキームを確定したいからのようであり、本末転倒も甚だしいですが、そこでどういう案が出てくるかで、政府が自らの責任を国民に転嫁しようとしているかが明らかになるはずです。すべての国民が厳しく監視すべきではないでしょうか。