・「中国を牽制するための安全保障上の理由からTPP加盟が得策だ」という人がいるが、条文には安全保障は除外すると書かれている。

・「中国を牽制するための安全保障上の理由からTPP加盟が得策だ」という人がいるが、条文には安全保障は除外すると書かれている。
・日本のメリットはゼロ、農業は壊滅するが、表面的な損得勘定ではすまない。農業とくに農地、林業がもつ保水力が失われる。
・事実上の米国の失業率は17%から19%だとする計算がある。だから「ウォール街を占拠せよ」という若者等の反乱がおこる。
・黄金の経済繁栄がおわり、リーマン・ショック以後の米国経済は衰退の一途。教育ローンを借りたものの、すでに返済不能に陥った比率が9%弱となった。
・累積のローン貸出額は5500億ドルに達した公式統計が示しているが、実際は一兆ドルを超えている(英紙エコノミスト、10月29日号)。もし9%のレシオで焦げ付けば、将来どうなるかって?
・2004年から2011年までの七年間で米国の農地価格は40%あがり、レンタル代金は17%あがったが、どうやら中国からの投資資金が流入しているようだ!
・一千万元(一億二千万円)以上の富裕階級のうち、およそ三分の一の中国人が海外資産を保有していることが明らかになった(京華時報、10月31日)。







〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
米国経済はTPPでも助からない  
宮崎正弘
2011.10.31 Monday

 輸出倍増、雇用改善はオバマ選挙対策。教育ローンは一兆ドル規模、すでに9%弱が焦げ付いたのも新卒に職がないからだ。
 TPPは土壇場、来週あたりドジョウ首相はAPECで参加を表明する段取り。国内の反対が異様に多いのに米国の顔色を窺って、売国行為に走る。
 中国を牽制するための安全保障上の理由からTPP加盟が得策だ」という人がいるが、条文には安全保障は除外すると書かれている。
 日本のメリットはゼロ、農業は壊滅するが、表面的な損得勘定ではすまない。農業とくに農地、林業がもつ保水力が失われると関東平野は、今日のバンコックのように洪水になるぞ!米国の国益に沿うということは、日本の国益にはならないということである。
 さて雇用の問題は米国で極めつきに深刻かつ、絶望的だ。統計方法の違いは、むろん日本方式とも異なるが、事実上の米国の失業率は17%から19%だとする計算がある。だから「ウォール街を占拠せよ」という若者等の反乱がおこる。
 以前、これは共和党の「ティーパーティ」(茶会)に酷似した民主党のそれ、と比喩したが、おなじ分析を最近あちこちに見かけるようになった。
 教育ローンにも暗雲が目立つようになった。大学進学者の多くが教育ローンの恩恵をうけている。これは奨学金ではなく、低利で学生に貸し出される学費ローン、返済は割賦で就労後、義務つけられている。日本には両親が加入する教育ローンがあるが、米国は学生本人が加入する。
 「偉大な社会」を謳ったジョンソン政権のときから本格化し、公的資金が投ぜられた。その規模は天文学的金額となった。
 そして黄金の経済繁栄がおわり、リーマン・ショック以後の米国経済は衰退の一途。教育ローンを借りたものの、すでに返済不能に陥った比率が9%弱となった。大学を卒業しても満足な雇用が得られず、ウォール街は首切り旋風の最中、公務員は定数削減でつついっぱい。
 あまつさえ軍隊は国防予算の大幅削減にともない、新卒の入る余地がない。地方政府財政もパンク寸前だから警官になっても仕方がない。
 昨日まで銀行で高給をはんでいた人が、今日はビルの駐車場の係員とか、スーパーのレジうち。それでも雇用があれば良い方という。惨状である。

▲世界平和も福祉も、同時にという「偉大な社会」建設の一環だった
 ジョンソン政権下、ひとり千ドルを二万五千人に。将来、教育ローンで育った学生等が実業界や国際交易の場で活躍し、米国経済の発展に貢献するだろうといわれて発足した。「金の卵」を育てるのが目的だった。
 それが過去半世紀に巨大化し、米国では「教育ローン産業」とまで言われる。三人にひとりの学生がローンを借りており、中退組の69%がローンに世話になっていた。累積のローン貸出額は5500億ドルに達した公式統計が示しているが、実際は一兆ドルを超えている(英紙エコノミスト、10月29日号)。もし9%のレシオで焦げ付けば、将来どうなるかって?
 こうした米国の状況下、「え?」。唯一上昇しているのが農地だ。農地売買は、価格面で上昇を描き、くっきりと差異を表した。穀物相場が高騰し、他方、農地の供給がふえることはない。したがってヘッジする投資家は農地への投資にものりだし、1967年以来、米国では年率平均で34%農地の価格が上昇した。
 はやくから目をつけていた一群の投資家がいた。2004年から2011年までの七年間で米国の農地価格は40%あがり、レンタル代金は17%あがったが、どうやら中国からの投資資金が流入しているようだ、と関係者は言う。

 そういえば一千万元(一億二千万円)以上の富裕階級のうち、およそ三分の一の中国人が海外資産を保有していることが明らかになった(京華時報、10月31日)。