・野田政権は増税と引き換えに、大規模な金融緩和によるデフレ克服と公務員給与の引下げなどムダ削減を徹底せよ!

・デフレ下で増税したらデフレが更に悪化する。それは経済成長率の低迷につながるので、雇用や生活に悪影響があるのみならず、税収も期待したほどには増えない可能性がある!
増税しながらも、同時にデフレを克服する道を探らなくてはならない!
・消費税増税と引き換えに、政府・与党が責任を持って日銀に大規模な金融緩和を来年早々から行なわせるようにすべきだ!
・ムダ削減はまだ不十分であり、純粋な政府のムダの削減、その例は公務員の給与の引き下げ、エネルギー予算をはじめ様々なところにあるムダの削減をすべきだ!
・赤字が極端に大きい社会保障勘定の赤字削減を行え! 社会保障の中の無駄分析して無駄を削減せよ!
・野田政権は増税と引き換えに、大規模な金融緩和によるデフレ克服と公務員給与の引下げなどムダ削減を徹底せよ!


〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
もしも私が民主党財務省の応援団だったら   2011年12月9日

 消費税率引き上げを目指す野田首相は、「社会保障・税の一体改革」の素案を、年内を目処に取りまとめるよう指示を出しました。 私は、消費税増税が最優先の経済財政運営には反対ですが、あまり反対ばかりを叫んでも虚しいですし、いずれかのタイミングで消費税増税が必要なことも事実なので、もし私が民主党財務省の応援団だったら、消費税増税の実現に向けてどういう提案をするだろうかを考えてみました。
増税に先行したデフレ脱却の約束を:
 私が消費税増税を最優先することに反対する最大の理由は、デフレ下で増税したらデフレが更に悪化するからです。それは経済成長率の低迷につながりますので、雇用や生活に悪影響があるのみならず、税収も期待したほどには増えない可能性もあります。
 実際、1997年に消費税率が3%から5%に引き上げられましたが、政府の一般会計の税収は、97年の約54兆円をピークに、翌年以降現在に至るまで税収が54兆円を超えたことはありません。
 そう考えると、消費税を増税しながらも、同時にデフレを克服する道を探らなくてはなりません。
 ちなみに、第3次補正予算が成立し、総額12兆円のうち9兆円が被災地の復興や円高対策に使われます。  GDP比2%の財政支出が行なわれるので、欧州危機や円高に足を引っ張られつつも、来年の日本の景気はある程度良くなり、経済成長率も悪くないでしょう。
 しかし、来年度の国債発行額(≒財政出動)が44兆円と今年度の約56兆円(第3次補正後)に比べて大幅に減少することも考えると、再来年以降の日本経済は非常に厳しい状況に置かれることが確実です。
 従って、14年度頃からの消費税増税と引き換えに、政府・与党が責任を持って日銀に金融緩和を来年早々から行なわせるようにすべきではないでしょうか。  デフレ脱却を目指すことに加え、消費税増税の経済へのマイナスの影響をオフセットする位に大規模な金融緩和です。  日銀法改正やインフレ・ターゲットの導入など、政府・与党の側にできることはたくさんあります。
 聞くところによると、財務省の中にも少なからぬ数の“リフレ派”がいるようですが、財務省だけで日銀を追い込むのは厳しいので、政治主導で消費税増税と同時に決着させるべきです。   そうすれば、財務省に批判的で金融緩和を主張する高橋洋一氏などの批判もある程度抑えられるのではないでしょうか。
増税とムダ削減を同時並行で:
 次に、消費税増税を国民に納得してもらうにはもう1つやるべきことがあります。それは政府のムダの削減です。  財務省は既に公務員宿舎を25%廃止することを発表しました。  数字自体はまだまだ不十分ですが、早く決断したこと自体は評価すべきです。  しかし、ムダ削減はまだ不十分であり、2通りのことをやらなければなりません。
 1つは、純粋な政府のムダの削減です。 その典型例は公務員の給与の引き下げであり、今国会に法案が提出されませんでしたが、国家公務員のみならず地方公務員の給与も削減すべきです。  また、エネルギー予算をはじめ様々なところにまだムダが潜んでいます。  メディアはこうした部分を突っつくのが好きですが、一方で財務省もそれらを削減したいはずです。
 それならば、消費税増税前にあらゆるムダを削減するのは不可能であることも考えると、メディアの批判の機先を制する形で、ムダ削減がこれからも恒常的に続くと国民が納得できる形を示すべきです。
 具体的には、行政刷新会議事業仕分けのように、法的根拠や強制力もなくメディアも見限っている演出は止め、先月行なわれた国会版事業仕分けを、野党も全面的に巻き込んだ形で通年開催することにしてはどうでしょうか。  これなら、野党もメディアも文句を言いにくくなるし、政府のムダを厳しく追及する古賀茂明氏などの批判もある程度抑えられるのではないでしょうか。
社会保障支出の削減を明示すべき:
 もう1つは、社会保障の赤字削減です。モルガン・スタンレーロバート・フェルドマン氏が面白い分析をしていますので、それを引用しましょう。
 データの制約からちょっと古い数字になりますが、2008年度予算の一般会計予算は、予算総額が83兆円、基礎的財政収支対象経費が63兆円、国債費が20兆円、税収が54兆円でした。
 しかし、この数字は中央政府の一般会計だけの数字であり、地方政府、特別会計社会保障基金などすべてを合計した連結ベースでの政府の財政を国民経済計算の数字から見てみると、財政の規模は196.7兆円と一般会計の2倍以上、税収も82兆円と一般会計の1.5倍程度です。

 そして、政府の機能のうちどの部分が赤字/黒字になっているかを見るために、この連結ベースの財政の数字を
・営業収支(防衛など政府の通常の活動の合計)
社会保障収支(複数の会計の合計)
・利子収支(国債利払い以外に政府の利子所得を合計したもの)
・資本取引収支(不動産の購入など)
 の4つの機能別の収支に分けてみると、政府の営業収支は約10兆円の黒字、利子収支は5兆円の赤字、資本取引の収支は9兆円の黒字となります。つまり、これら3つの収支はある程度バランスが取れていると考えることができるのです。この点、財務省の努力は評価すべきでしょう。

 これに対して赤字が極端に大きいのは社会保障勘定です。年金など現金給付と医療など現物給付を合計すると、社会保障支出104兆円に対して国民の社会保障負担は57兆円しかないので、ものすごい額の赤字になっています。
 これらの数字は2008年度なので少し古いですが、財政の基本的な構造は現時点でもそう大きくは変わらないとすれば、財政再建の道筋をつけるためには、この部分の赤字をどうにかしないといけないのです。
 だからこそ政府・与党は消費税を増税しようとしているのですが、社会保障支出の水準をそのままにして増税のみに頼ったら、最終的には消費税率を20%以上にしなければなりません。
 一方で、社会保障改革に関する現在の厚労省案では、削減よりも拡充という名の下で更なるバラマキを志向しているので、これでは社会保障勘定の赤字削減にほとんど寄与しません。  かつ、厚労省は、社会保障制度の抜本改革は先送りする一方で、例えば社会保険料の不足を補うために大企業の健保の負担を高めるなど、取れるところから取って帳尻を合わせ、結果的に税ではなく社会保険料所得再配分をやろうとしています。
 もちろん、これらの動きは、次の選挙を見据えて高齢者の反発を恐れる与党議員の意向を踏まえてでしょうが、こんないい加減な社会保障改革で、消費税増税に対する国民全体の理解が進むでしょうか。   それは、誰よりも財務省の方々が一番分かっているはずです。
 だからこそ、日本の将来を本当に憂えて消費税増税をするのならば、民主党財務省の双方が高齢者が嫌がる社会保障支出の削減にも今後取り組む姿勢を明示すべきではないでしょうか。   小手先で一部の人を満足させようとしても、多くの国民や、何より金融市場からは見透かされるはずです。
現実的には財務省の権限強化しかないか:
 最後に、消費税増税に当たっては低所得者対策も不可欠です。この点、政府・与党は給付付き税額控除を導入すると表明していますが、国民背番号制の導入に加え、税と給付が接近した存在になるので、財務省が税金を徴収し、厚労省が給付を行なうという政府の体制のあり方も検討しなくてはなりません。
 即ち、消費税増税のために本当に必要な環境整備は、日銀への金融緩和の強制、歳出の強制的な削減、税と給付の接近に見合った政府の体制整備と、財務省もいつかはやらないといけないと認識していることばかりのはずです。   それが出来ないのは、与党の政治家が安易にポピュリズムに走って頼りにならないからかもしれません。
 そう考えると、財務省に同情すべき部分も多々ありますし、だからこそ財務省内の“リフレ派”を中心とする良識ある方々に暴走してもらうのも面白いかもしれません。   それが本当に必要かを見極めるためにも、まずは民主党内で消費税増税がまとまるかどうかをじっくりと監視しましょう。
<岸 博幸>