・増税と円高がもたらすデフレ予想が企業の国内向け投資意欲をそいでいるのだ!  

増税ではなく雇用や所得を増やす経済成長政策を競うのが大政党の役割のはずだが、増税を先行させるという政治の倒錯が起きてしまった!
野田首相は「増税すれば、むしろ景気がよくなる」という浮世離れしたエコノミストの論理を信じて、出てきた政策は、税率引き上げによる税増収分をバラマキすればよいという「増税バラマキ型」だ!
・主要項目を2011年度と1997年度を比較し、GDP全体が51・4兆円縮小し、公共投資、民間設備投資、民間住宅投資の投資部門が43・7兆円減少した。 純輸出は13・4兆円減で、投資と輸出の減退がデフレ不況の日本を形作っている。
・恐るべきは国内投資の萎縮だ!   効率の悪い公共事業を省くのは当然としても、財務官僚はバラマキ費捻出のために公共投資を減らしてきた。  
 社会インフラ投資をやみくもに減らせば、地域経済や国土が破壊される。
・投資なくして成長はありえないのに、民主党政権は投資に目を向けず、増税で裏付けした社会保障給付やエコカー補助などバラマキにのみこだわる。
・11年1月に消費税率引き上げなど増税策に踏み切った英国は、デフレ圧力と若者の失業率増大に悩まされている。 ロンドン五輪会場の外側は暗い。
 発券銀行イングランド銀行はお札を大量に刷ってポンド安に誘導しているが、ブレーキをかけたままアクセルを踏んでいるわけで、成長率はゼロ%台だ!
増税円高がもたらすデフレ予想が企業の国内向け投資意欲をそいでいるのだ!  
 参院が「良識の府」なら、消費増税法案審議の中で増税・バラマキ型の経済政策に焦点を合わせ、論戦すべきだ。



〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
強まる増税・バラマキ型財政
編集委員・田村秀男    2012.7.8 07:41
 ■「投資と成長」忘れた民主政権
 民主・自民・公明3党合意による消費増税法案は、衆院に続き参院でも可決成立が必至の情勢だ。  増税ではなく雇用や所得を増やす経済成長政策を競うのが大政党の役割のはずだが、増税を先行させるという政治の倒錯が起きてしまった。   これまで縮小し続けてきた勤労者の平均可処分所得は、すでに実施が決まっている東日本大震災からの復興増税社会保険料の引き上げと合わせ、一挙に5%程度減る見通しだ。
 ここで、改めて経済の成長政策を考えてみよう。
 野田佳彦政権は今月中にも「成長戦略」を打ち出す方針だが、内容は各省庁の官僚作文の寄せ集めになりそうだ。 
 民主党政権菅直人前首相の場合「増税した分だけ財政支出すれば景気は維持される」という机上の空論を唱える御用経済学者に惑わされ、野田首相に至っては「増税すれば、むしろ景気がよくなる」という浮世離れしたエコノミストの論理を信じてきた。
 出てきた政策は、税率引き上げによる税増収分をバラマキすればよいという「増税バラマキ型」である。  
 復興増税や、形を変えた増税と言ってもよい社会保険料や電気料金の安易な引き上げを容認する背景になっている。
 増税経済モデルが最もよく当てはまるのが、社会保障分野だ。  もとより自公政権時代でも社会保障支出は国内総生産(GDP)でのシェアを増やしてきた。     
 硬直的な社会保障バラマキ型構造を一層拡大したのが民主党政権である。
◆14年間で10兆円以上
 内閣府統計をもとに、名目GDPの主要項目を2011年度と1997年度を比較し、増減の値を示す。  消費税率を3%から現行の5%に引き上げたのが97年度である。  98年度から慢性デフレが始まり、物価の下落を大きく上回る幅で名目GDPや家計所得が下落し始め、現在に至る。
 GDPは大きく分けて、消費、投資、輸出から輸入を差し引いた純輸出で構成される。  一般に成熟した経済では家計消費が経済を安定させる基礎部分を構成し、技術革新を担う民間の設備投資が成長率を押し上げる。
 ところがGDP全体が51・4兆円縮小し、公共投資、民間設備投資、民間住宅投資の投資部門が43・7兆円減少した。
 純輸出は13・4兆円減で、投資と輸出の減退がデフレ不況の日本を形作っている。
 消費に目を転じると、家計消費は4・6兆円減だが、政府最終消費なる項目が16・1兆円も増加している。  政府消費の大半は「社会保障関係の現物給付」だが、現物給付とは医療と介護の政府支出分で実に約15兆円も増加した。
 同じ社会保障支出でも年金の場合、受給者に政府から直接支払われるので、GDP統計上は家計消費に反映するのだが、医療や介護サービスも家計にとっては消費行為である。  従って、日本の家計消費は社会保障現物給付を上乗せする方が実態に近い。  そう計算すると、日本の実質家計消費は14年間で10兆円以上も増加したと推定できる。
◆肝心の人的資本疲弊
 道理で、増税しても消費は減らないと野田首相や財務官僚は強弁するはずだ。  だが、バラマキの受益者は主に高齢世代であり、現役世代は高額の社会保険料と税負担にあえぎ、若者は将来への希望を喪失しつつある。
 経済成長を担う肝心の人的資本が疲弊するのだ。
 もう一つ、恐るべきは国内投資の萎縮である。   効率の悪い公共事業を省くのは当然としても、財務官僚はバラマキ費捻出のために公共投資を減らしてきた。  社会インフラ投資をやみくもに減らせば、地域経済や国土が破壊される。
 さらに、民間設備投資の退潮は経済成長をマイナス方向に押し下げる。
 投資なくして成長はありえないのに、民主党政権は投資に目を向けず、増税で裏付けした社会保障給付やエコカー補助などバラマキにのみこだわる。

 11年1月に消費税率引き上げなど増税策に踏み切った英国は、デフレ圧力と若者の失業率増大に悩まされている。 ロンドン五輪会場の外側は暗い。
 発券銀行イングランド銀行はお札を大量に刷ってポンド安に誘導しているが、ブレーキをかけたままアクセルを踏んでいるわけで、成長率はゼロ%台だ。

 成長とは無縁な財政のバラマキ構造を温存したまま増税を先行させる日本の場合、日銀が今後量的緩和に転換したところで、効果は出ないかもしれない。
 3党合意以降、連日のように国内生産の縮小や技術の切り売りが報じられている。
 増税円高がもたらすデフレ予想が企業の国内向け投資意欲をそいでいるのだ。  
 参院が「良識の府」なら、消費増税法案審議の中で増税・バラマキ型の経済政策に焦点を合わせ、論戦すべきだ。