・北朝鮮内での最近の“兆候”と李氏解任との関連性も否定はできない。

・若い金正恩(キムジョンウン)第1書記の後見人をめぐって、軍を含む権力機構内でのパワーバランスに変動が起きている。
・核とミサイルを基本に据えた対外強攻策の継続を強調し、その強力な推進者とみられた北朝鮮軍の李英浩を頂点とするタカ派軍人が失脚した。李氏の解任について「軍事強硬派を鎮め、対外交渉をスムーズに進めるための更迭だった」
張成沢朝鮮労働党内で最高の力を持つといわれる組織指導部に大きな基盤を持つことで党内の実務に詳しい上に、死亡した2人の兄が軍の実力者だったため、その影響で軍内部にも多くの支持基盤を扶植してきた。
・まずは「金正恩氏の軍事家庭教師」などと呼ばれてきた李英鎬総参謀長の失脚を謀った可能性がある。
張成沢金正覚ラインが形成されることも予想される。
北朝鮮内での最近の“兆候”と李氏解任との関連性も否定はできない。






〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
北朝鮮、強硬派を一転排除か 李英浩氏解任  
古沢襄  2012.07.17 Tuesday
 李英浩・朝鮮人民軍総参謀長の解任劇について産経新聞は、ソウルとニューヨークの特派員による多元的な解説記事を掲げている。
 端的にいえば、若い金正恩(キムジョンウン)第1書記の後見人をめぐって、軍を含む権力機構内でのパワーバランスに変動が起きている・・・という見方である。
 核とミサイルを基本に据えた対外強攻策の継続を強調し、その強力な推進者とみられたのが北朝鮮軍の李英浩を頂点とするタカ派軍人。 それが失脚したという見方である。 早急な判断は下せないが、私の見方も同じである。
 その意味で、李氏と同じ軍強硬派である金格植(キム・ギョクシク)前第四軍団長の処遇を注目している。 金格植氏も失脚となれば、明らかに二〇一〇年の延坪島を砲撃事件を主導した軍強硬派が金正恩政権で後退したことになる。
 ここで注目すべきは金正恩政権で最大の影の実力者といわれる張成沢の存在であろう。 亡き金正日の妹の金敬姫の夫なのだが、金日成時代から浮沈を繰り返しただけに用心深く、公式行事で常に後ろの列で静かに立っていた。
 だが金正日総書記の葬儀期間中に初めて大将の階級章を付けた軍服姿で前面に姿を現し、この日も金正恩氏のすぐ後ろを歩くことで自らの権力を誇示した。  陰では中国の人民解放軍との連携強化を図っているといわれている。
 さらに張成沢朝鮮労働党内で最高の力を持つといわれる組織指導部に大きな基盤を持つことで党内の実務に詳しい上に、死亡した2人の兄が軍の実力者だったため、その影響で軍内部にも多くの支持基盤を扶植してきた。
 その張成沢氏が朝鮮人民軍タカ派軍人に支配される状況に歯止めをかける策謀をめぐらしたとしても不思議ではない。
 まずは「金正恩氏の軍事家庭教師」などと呼ばれてきた李英鎬総参謀長の失脚を謀った可能性がある。 とはいうものの北朝鮮軍内の強硬派は依然として力を保持している筈だから、張成沢氏は表面には立たずに用心深く動くのではないか。
 また金正覚(キム・ジョンガク)総政治局第1副局長(大将)の動きにも注目したい。  総政治局とは小隊長から総参謀長に至るまで、朝鮮人民軍の将校全員の一挙手一投足を監視する組織。  韓国の世宗研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)首席研究委員は「金正恩氏が軍を掌握する過程で、誰よりも重要な役割を果たしたのが金正覚だ」と述べているので、張成沢金正覚ラインが形成されることも予想される。

<【ソウル=加藤達也、ニューヨーク=黒沢潤】 金正恩(キムジョンウン)第1書記の世襲体制確立まで、側近として支えた李英浩(リヨンホ)氏(69)の朝鮮労働党の全役職解任が決まった。  李氏は「先軍政治」継承を宣言した金第1書記の軍事面の後見人とされてきた。  韓国の対北情報筋は国家運営の方向性をめぐり、軍を含む権力機構内でのパワーバランスに変動が起きているのではないかとみている。
 李氏は2009年2月、軍総参謀長に就任。  当時、金正日総書記が脳梗塞とみられる病に倒れて半年が経過しており、北朝鮮では後継体制への移行準備が急ピッチで進められていた。   後継体制確立の最大の関門は軍掌握だった。
 軍事部門の後見人として登用された李氏はその後、金第1書記の側近としての地位を固めていった。 昨年12月に金総書記が死去し、体制は金第1書記に世襲された。  新体制は「先軍政治」の継承を宣言。  核とミサイルを基本に据えた対外強攻策の継続を強調した。  その強力な推進者とみられたのが李氏だった。
 ところが今年2月、北朝鮮の政策に変化がみられた。  北朝鮮は突然、ウラン濃縮や核実験の一時凍結で米国と合意した。
 だが、これより前の金総書記の生誕記念日(2月16日)に訪朝した複数の人々は、北朝鮮の権力層内で「金正恩大将は『金正日総書記の革命遺産である核をもっと活用しよう』とおっしゃった。
 核の活用にもっと積極的でなくてはいけない」という話が出ているのを聞いた。  言葉の発信源は李氏とされていたという。
 韓国の対北情報筋は、北朝鮮の指導層内に党主導で外交部門に人材を集中させ対外交渉で破綻経済の打開を図ろうとするグループと「核」を背景に超強硬方針で臨もうとするグループが存在する−との情報を得ているという。
 対北情報筋は李氏の解任について「軍事強硬派を鎮め、対外交渉をスムーズに進めるための更迭だった」と分析している。
 一方、李氏解任の報道に先立ち、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は15日、金正恩体制の始動後、北朝鮮で西側文化を容認しているとも受け取れるさまざまな兆候が出ているとソウル発で報じた。

 同紙は、北朝鮮でミニスカートやハイヒール姿の女性の写真が公表されたり、公演でミッキーマウスそっくりの着ぐるみが登場し、米映画「ロッキー」のテーマ曲や映像が流されたことをあげ「西側への態度の変化」の可能性を指摘している。   こうした北朝鮮内での最近の“兆候”と李氏解任との関連性も否定はできない。(産経)>