政府が調査団の入島に許可を与えて、積極的に参画する必要性は、今回の上陸事件で一段と強まった!

・7月に、領海を侵犯した中国の3隻の漁業監視船に、海上保安庁の巡視船が退去を求めたところ、「妨害するな。直ちに中国領海から離れろ」と、逆に言い返された!
尖閣諸島というわが国固有の領土を防衛するには、そこを明確に管理し利用し警備する体制を築いて、絶対に付け入るすきを与えないことだ。
・実効支配がいかに重要かは、北方領土竹島を見れば一目瞭然だ!
 相手の非道によるものであっても一度(ひとたび)手を離れた領土は、滅多に返ってこないのだ!
・東京都は8月末の尖閣調査団派遣を計画している。 政府が調査団の入島に許可を与えて、積極的に参画する必要性は、今回の上陸事件で一段と強まった!



〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
尖閣「上陸」調査は待ったなしだ
東海大学教授・山田吉彦   2012.8.21 03:18 [正論]
 日本政府は、尖閣諸島最大の魚釣島に不法上陸した香港の活動家らに対して、入管難民法違反の容疑で逮捕しながら、同法第65条に基づく刑事訴訟法の適用除外として強制送還する措置を取った。
 魚釣島灯台の破壊なども計画され、海保の巡視船に投石で抵抗する悪質な事案で、本来なら刑事処分の手続きを取ってしかるべきだったにもかかわらず、である。

≪弱腰対応の裏に甘い現状認識≫
 弱腰の対応というほかない。
 野田佳彦民主党政権はこの7月に尖閣諸島を国有化する方針を表明し、野田首相尖閣を「平穏かつ安定的に維持管理する」と述べた。  しかし、そもそも「平穏」という言葉の解釈に誤りがある。
 この表現は、国際的な領土紛争の判例であるパルマス島事件仲裁判決でフーバー判事が「先占」する国の要件とした、「国家的機能の平穏かつ継続した発現」を意識したものだろう。  平穏とは、複数の国家の主権主張行為により争われてはいない状態である。  現在の尖閣周辺海域は、今回の件以外にも中国公船の領海侵犯が繰り返され、平穏とは言い難い。
 「国家的機能」としては、行政権、司法権立法権の確立が挙げられる。  このうち、司法権の確立には、的確に捜査したうえで裁判権を行使することが望まれる。  今度のような処理では、とても、司法権を行使したと胸を張って言えようはずがない。  日本の従来の政策では、行政権もあいまいだ。 政府は、地方行政権を持つ石垣市に対して、固定資産税調査のための上陸すら認めていないのである。   これでは、日本の「先占」には国際的に疑問を持たれてしまう。
 今回の事態への対処の手ぬるさも一つには、こうした認識の甘さを映したものだといっていい。

トウ小平発言の呪縛今もなお?≫:
 中国は尖閣諸島について、1992年制定の領海法で領土とし、2010年施行の海島保護法で国有地とし、最近では事実上の「核心的利益」(安全保障上、譲れない国益)とさえ位置づけている。   10年夏からは、大漁船団が日本領海内で違法操業を繰り返すようになった。   漁船団は、漁業監視船に統制されているとみられ、中国の海洋進出の先兵と化している。
 その漁業監視船、さらには海洋調査船による尖閣沖での領海侵犯も頻々として起きている。   この7月に、領海を侵犯した3隻の漁業監視船に、海上保安庁の巡視船が退去を求めたところ、「妨害するな。直ちに中国領海から離れろ」と、逆に言い返されたという。
 中国の「尖閣盗り」の意図は明らかなのに、日本側はなお、「尖閣問題棚上げ」という、1978年のトウ小平発言の呪縛から解き放たれていないようにもみえる。
 尖閣諸島は、沖縄県石垣市の行政区域内にあるものの、個人所有の無人島だ。   現在、海保の巡視船が通常は4隻ほどの態勢で周辺の領海警備に当たっているのみで、諸島の管理についても、無策といわれても仕方ない状況である。
 尖閣諸島というわが国固有の領土を防衛するには、そこを明確に管理し利用し警備する体制を築いて、絶対に付け入るすきを与えないことだ。
 実効支配がいかに重要かは、北方領土竹島を見れば一目瞭然。
 相手の非道によるものであっても一度(ひとたび)手を離れた領土は、滅多に返ってこないのである。
 政府がなすべきは、現状よりもぐっと踏み込んだ対策である。

海上警備と社会空間の創設≫ :
 第一に、不審な船舶を尖閣に寄せ付けない海上警備体制の構築である。 今回のように1隻の抗議船の領海侵犯も阻止できないようなありさまでは、仮に数百隻の漁船が点在する尖閣の島々や岩への上陸を目指し侵入してきた場合、対応不能に陥るのは間違いない。
 8月10日、衆院海上保安庁法改正案が可決された。  この法改正により、離島での海上保安庁の警察権の行使が可能になり、日本の領海に侵入し停留する不審船に対し退去を命令できるようになる。
 漁船をはじめ中国の船が領海内で不穏な動きを見せた際など、海保は速やかな対応を取れるのだ。
 次は、石垣市が行政権を持ち各島内を管轄する、社会システムを尖閣諸島に創設することである。
 実際に島に上陸して調査活動を行うことが、その第一歩となる。
 島の所有権の獲得を目指している東京都は、石垣市とともに、島に新しい社会空間をつくる方向だ。
 尖閣諸島をはじめとする国境の離島はいずれは国有化して管理すべきである、と筆者は考える。  だが、今回の尖閣上陸への対応をみて、民主党政権による国境管理に不安を感じたのも確かである。
 中国の海洋進出はとみに加速し一刻の猶予もならない状況だ。  尖閣諸島管理への着手を急がなければならない。  地主との交渉が進んでいて世論の支援による購入資金集めが順調に推移する東京都との協力を、政府が強化していくことこそ、そのための近道となる。
 東京都は8月末の尖閣調査団派遣を計画している。 政府が調査団の入島に許可を与えて、積極的に参画する必要性は、今回の上陸事件で一段と強まったといえる。(やまだ よしひこ)