・外交は、法の支配とは無関係に結果を押し付けてきたがる者を、抑止できる信頼に足る防衛力が存在するときにのみ機能する。

・フン・セン首相は露骨な中国の代弁者として、南シナ海問題は「国際化」されるべきではないというのがASEANの総意であると誤った声明を出した。
東シナ海でも、中国の意図は、尖閣諸島に対する日本の主権を否定し、1971年の自らの領有権主張をあたかも古代の中国法で位置づけられているかのごとく提示した。
・南西諸島地域でほとんど防衛能力のない日本に対し、必要とあらば軍事的にも領有権主張を押し通すことが中国の意図だ!
・米国ヒラリー・クリントン国務長官は「南シナ海における平和と安定の維持、国際法の尊重、航行の自由、妨害なき正当な通商に国益を」有していると声明を出した。
・日米両国は南シナ海の共有海面における航行の自由の不可侵性を確保するのに必要ないかなる手段をも取らなければならない。
・日本は、南西諸島地域に陸海空の自衛隊部隊を配備することで、信頼し得る抑止力を構築しなければならない。 南西諸島地域においても米第7艦隊兵力の支援は当然ながら自衛に不可欠だ!
・外交は、法の支配とは無関係に結果を押し付けてきたがる者を、抑止できる信頼に足る防衛力が存在するときにのみ機能する。




〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
「航行の自由」中国の手から守れ
ジェームス・E・アワー(ヴァンダービルト大学日米研究協力センター所長)   2012.12.6 03:21 [正論]
 中国の温家宝首相や東南アジア諸国連合ASEAN)10カ国と日米韓など計18カ国の首脳が集った先月のASEAN関連サミットで、開催国であるカンボジアの指導者、フン・セン首相は露骨な中国の代弁者として、南シナ海問題は「国際化」されるべきではないというのがASEANの総意であると誤った声明を出した。
東シナ海でも支配を狙う≫ :
 ASEAN数カ国の国家元首が直ちに異議申し立てをしたこの声明の意味合いは、極めて明確に理解されるべきだ。   中国は、南シナ海の使用を思い通りに支配したいのであり、その支配に異を唱えるいかなる国も中国政府によって個別に処罰されるのである。
 同じように、東シナ海の場合でも、中国の意図は、尖閣諸島に対する日本の主権を否定し、1971年の自らの領有権主張をあたかも古代の中国法で位置づけられているかのごとく提示し、米国が中日「二国間」の問題に「干渉」する筋合いではないと言い、そのうえで、南西諸島地域でほとんど防衛能力のない日本に対し、必要とあらば軍事的にも領有権主張を押し通すことではないのか。
 尖閣で日本の主権的地位の信頼性を高めようという石原慎太郎東京都知事の計画を批判する多くの人々は日本に国の領土を守る意思があるのか、あるなら、そのための確かな措置を講じる意思があるのかを考える必要がある。
 尖閣諸島の所有者が代わりに中国側に尖閣を売却し、そして、中国がそれらを封鎖していたら、日本政府はどうしていただろう。
 フィリピンに近接し統治されているのに、中国が領有権を主張しているスカボロー礁への進入を、同国が最近、閉ざしたように。
≪日米はASEANと連携を≫ :
 11月のカンボジア指導者の声明は、2年前のASEAN地域フォーラム(ARF)で、米国は「南シナ海における平和と安定の維持、国際法の尊重、航行の自由、妨害なき正当な通商に国益を」有しているとした、ヒラリー・クリントン国務長官の声明とは明らかに矛盾する。
 平和的で合意ずく(中国政府の指図抜き)の南シナ海の利用権を妨げてはならないと主張することは、米日両国とASEAN諸国の責務である。

どうすることが必要か?
 何はさておいても、日米両国は世界の二大民主主義・経済国として、西太平洋最大かつ最強の海軍国として、南シナ海の共有海面における航行の自由の不可侵性を確保するのに必要ないかなる手段をも取らなければならない。
 日本の海上自衛隊と米海軍は、国連海洋法条約を完全順守した通航の自由を日米が強く求めない場合に中国がやりかねないような、他国の支配や排除をするのではなく、いかなる国も締め出さない。
 ASEAN加盟のどの国でもしかり、周辺や地域の航行の自由を保証する手伝いをしてくれることはありがたい。
 中国といえども、アフリカ沿岸沖で海賊防止に協力しているように、南シナ海を世界の通商に開かれたものにしておくことに参加するなら歓迎だ。
 次に、日本は、南西諸島地域に陸海空の自衛隊部隊を配備することで、信頼し得る抑止力を構築しなければならない。これらの部隊は、原子力空母、攻撃型潜水艦と岩国、沖縄、グアムを拠点とする海兵隊の空陸部隊から成る米第7艦隊兵力の支援が可能だ。
 日本の自衛隊は冷戦期には、日本本土や沖縄に効果的に展開されて米国ともうまく連携し合った、かなりの抑止能力を達成した。  しかし、今や、日本の北方と西方に対する旧ソ連時代の脅威は薄れ、一方で、尖閣諸島が無防備で攻撃を受けやすい状況にある。
≪力なき外交は機能しない≫ :
 朝鮮半島、台湾、そして、今や尖閣諸島と、危険な発火点が身近に存在し続けているにもかかわらず、日本の防衛費は1990年代以来、横ばい状態、あるいは下降状態をたどるに任されている。
 防衛費の増大は賢明だと思える。  もっとも、幸運なことに、南西諸島の防衛力を強化して、尖閣諸島に防衛の傘を差し伸べることは、日本の現有戦力の再配置によって、おおむね達成可能である。
 第三に、日米両政府は、海上境界、漁場、海底資源をめぐる紛争を平和的に、合意によって解決しようとするASEANの要求については、全加盟国(たぶん信念というよりもむしろ恐怖から行動しているカンボジアを有り得る例外として)を支持すべきだ。
 外交第一主義はどうか? 
 日本は、中国を挑発しないように気をつけ、尖閣問題を国際司法裁判所に持ち込むと申し出るべきではないか、といった立場だ。
 だが、平和的で成功した1996年の台湾総統選などに例証されるように、外交は、法の支配とは無関係に結果を押し付けてきたがる者を、抑止できる信頼に足る防衛力が存在するときにのみ機能する。
 仮に米国が(日本から)撤退して、中国が東シナ海南シナ海を国有化したとすれば、自由な海洋国家としての日本の地位は、深刻な試練に直面するだろう。